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2025.01.10 教員ブログブロックチェーンの応用例思いついたと思ったら・・・?
ライフデザイン学科教員の相場です。
私は他の二人の教員と一緒に「情報社会の未来を知る」という授業を行っています。授業の内容は、「情報社会を特徴づけるAIや5GやIoTなどのさまざまなキーワードを取り上げ解説する。さらにディスカッションを通して知識を深め、各自が今後の情報社会の中でいかに行動すべきか的確で論理的な判断ができるように実践的学習を行う。そのため、授業ではアクティブラーニングを積極的に活用していく」というものです。
私が担当しているキーワードの1つに「ブロックチェーン・仮想通貨」があります。AIほどは知られていないと思いますが、特にブロックチェーンは様々な応用の可能性を秘めた重要なキーワードです。今回はこれについて少しご紹介します。
ブロックチェーンは、「ネットワークの中で、中央の管理者を必要としなくても、改ざんできないようにデータを保存する仕組み」です。その具体的仕組みは、発想を水平に飛ばした素晴らしいアイデアに基づいているのですが、説明するのに少々骨が折れます。ですが、「中央の管理者を必要としなくても、改ざんできないようにデータを保存する仕組み」の意味するところ自体はわかりやすいと言っていいでしょう。一方、ブロックチェーンとペアになっている仮想通貨(ブロックチェーンの最初の応用例が仮想通貨でした)が話をややこしくしています。ブロックチェーンには(何でも保存できるので)、ある「お金」を使ったすべてのやり取りのデータを、改ざんされることなく保存することができます。すると、これは「すべてのやり取りのデータ」を信用できるということを意味します。すると、さらによくよく考えると、そこで使われる「お金」も信用して使うことができるわけです。新しい「通貨」の誕生です。これを「仮想通貨」(あるいは暗号資産)と言います。
ここが少しわかりにくいところかもしれません。私たちにとって、お金と言えば、財布の中に入っている千円札だったり、100円硬貨だったりで、別に世の中のお金のやり取りなんか知らなくても信用して使っています。ところがインターネットの中で、中央の管理者がいない状態で、ある「お金」を信用できるかどうかは難しい問題です。ブロックチェーン以前にはこれをどうすればいいかわからなかったのです。ブロックチェーンを利用することにより、世界中のすべての「お金」のやり取りのデータを信用できることとなり、その結果「お金」を信用できるようになるのです。かなりの発想の転換が必要ですね。
ブロックチェーンの応用としては、仮想通貨より著作権の証明のほうがわかりやすいでしょう。例えば本の場合、日付と作者と本の内容をブロックチェーンに保存すればいいのです。すると、間違いなく、その日付のときにその本があったことを証明できます(さらに、これだと本の内容は知られてしまいそうですが、本の内容は知られずに、著作権だけを証明することもできます)。
授業では、さらにブロックチェーンの応用として、スマートコントラクト(さまざまな契約をプログラムの形でブロックチェーンに保存したもの)、NFT(代替不可能トークン)、DAO(分散型自立組織)も取り上げています。
どれも初めて聞いたときはピンとこないですね。NFTといえば、最初のツイッターのNFTがオークションにおいて3億円で落札されたという話題が有名ですが、ちょっとピンとこないかもしれません。しかし、例えば千葉工業大学では学位証明書を、NFTを使って発行しています。いつの間にか私たちの身近なところまで迫っている感じです。
DAOについても、この授業が始まった数年前は、DAOとは「経営者のような中央組織を置かなくてもブロックチェーン上のスマートコントラクトに従って運営するという新たな組織のあり方」ですよ、とその理念だけを紹介していました。しかし、最近、DAOの応用例を探すといろいろ見つかるようになりました。その中で、授業で取り上げたものがバルセロナ市の例です。バルセロナ市では、それまでのテクノロジー主導の都市づくりから市民主導の都市づくりに方針を転換しました。その転換の核の一つが、市民が参加する仕組み作りです。バルセロナ市では市民が参加する仕組みとして、オンライン参加型プラットフォーム「デシディム」を作りあげました。このデシディムにはDAOが利用されているのです。デシディムもそれほど遠い話ではなく、今では日本の加古川市でも使われてします。
「情報社会の未来を知る」の授業で私が担当している別の項目に「Society 5.0」があります。これは、今はまだ実現していない未来社会の話ですが、Society 5.0の先取りの取組としてスマートシティやスーパーシティがあります。バルセロナ市の例は、ちょうど、スマートシティ/スーパーシティの対案としてぴったりな例でもありました(バルセロナ市はスローガン的に「スマートシティからスマートなシティへ」と言われています)。
というわけで、ブロックチェーンの応用には多様な例があります。そこで、私も1つ応用例を考えて学生に自慢してやろうと(笑)思いました。そして思いつきました!ブロックチェーン上にお墓を創るというものです。これだと先祖代々の情報が改ざんされることもないし、お寺がなくなってもブロックチェーン上のお墓は残ることが可能です。また、お墓用の土地が不足しているという問題も一挙解決です。これはいいアイデアだと思いました。そこで、同じアイデアはないことを念のためネットで検索したところ・・・すでにこのアイデアは実現されていました(ここでそのホームページを紹介することはしませんが)。なかなか新しいアイデアを思いつくのは難しいですね(笑)。