京都光華女子大学 健康科学部 心理学科 ニュース 変わったこと、変わらないこと

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教員コラム

変わったこと、変わらないこと

1年生の必修授業のひとつに「心理学基礎演習」があります。少人数のクラスに分かれ、大学での学び方について学んだり、重要な情報をお伝えするホームルームのような役割も果たしている授業です。現在、この授業で、自分のこれまでを振り返り未来を展望する「自分史」の作成に取り組んでいます。

私自身が大学生の頃を振り返ってみると、学問に関しては、やはり卒論がいちばん大きなものです。でも、もうひとつの卒論と言えるくらい努力したものがあり、それは「ファン心理」の調査でした。ある授業で質問紙調査による研究を行うことになったとき、自分の興味関心のあることに取り組める機会が得られることがとても嬉しく、張り切って取り組みました。ただし、調査というのは調査協力者に貴重な時間を割いて回答してもらうものですし、回答していただくことで協力者に多少の影響を与えるものでもあります。単純に好奇心のみで実施するわけにはいきません。研究倫理、依頼のマナー、そして何より研究には意義が必要です。学問的意義や社会的意義など、当時なりに一生懸命考えました。

その後の詳細は省きますが、驚いたことに2本のレポートが完成しました。ひとつは、ファン心理とネガティブ気分の改善の関連についてのもの、もうひとつは、質問紙調査法の方法論に関するものでした。至らぬ点は多くありましたが、学生ならではのエネルギーはすごいものです。日頃考えたことや気づいたことを、科学としての心理学の土俵に載せて吟味し、一般的な法則を導き出したい。人間の本当を知りたい。実際には一度の横断調査で因果関係に言及することなどできませんし、そのことはわかっていました。しかし、置かれた状況の中、いろいろな検討方法を考えたり、小さな疑問をそのままにせずに愚直に取り組むなど、情熱だけは高かったのだと思います。

現在でも研究に対するそういった気持ちを失ったわけではありませんが、その後は、より応用的な観点や実際に役立つということも重視するようになりました。

また、学生の頃、そういった経験をさせていただけたのは、調査協力者、ご指導いただいた先生方、授業のティーチング・アシスタントをしてくださっていた大学院生の方など、多くの方のご支援のお蔭です。

そのお返しとなるのは、学生のみなさんに「心理学を学んでよかった」と思ってもらえるように努力することだと思っています。心理学の様々な魅力を発見してもらえるように、また、レポートの作成等を通じて能力を磨いていただけるように、精進したいと思います。

神庭 直子(2016年10月31日)