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教員コラム

ネコと癒し

空前のネコブームだと言われます。
私たちはネコにどんな癒しを求めるのでしょうか。
気持ち良さそうに寝ているネコの姿をみて、私たちは何を感じるのでしょうか。
おりたいようにいられる自分、ありのままでいられる自分、そんなものをネコの姿に投映しているのでしょうか。
実はネコの癒しにはもっと奥深いものがあります。

ル=グウィンの描いたファンタジ―『ゲド戦記』の6巻「アースシ―の風」の発端に、次のようなエピソードが語られます。かつての大魔法使い、大賢人の主人公・ゲドを訪ねてきた一人の男がいました。あまりに恐ろしい夢を見るために、寝ることができないと助けを求めて、遠い地からゲドを尋ねてきたのです。その恐ろしい夢とは石垣の向こうから死者が自分を引っ張ろうとすること、でもどうしても石垣の方に行ってしまうというのです。ゲドは石垣のそばに近づかないようにするのは、魔法の力ではなく生きている人間の手ではないかと考えて、ゲドはそばで自分の手を置いて彼の眠りを守りました。さらにゲドは石垣のこちら側に引きとめておくのに必要なのは、身体と身体が触れ合う温かさなのではないか、動物でもいいのではないかと、彼に子ネコをあてがいました。そして、その男は子ネコのお蔭で恐ろしい夢を見ないで一晩中眠れるようになったのです。

かつて、私がこの物語を読んだとき、ネコとは凄い力を持っているなと感動しました。ネコの柔らかい毛並に触れると私はとても穏やかになりやさしい気持ちになります。私にとって癒されたと思う瞬間です。

千野美和子(2017年6月8日)