私たちは日常的にじゃんけんを行います。何かの順番を決める時やグループワークでのリーダー決めなど、話し合いだけでは物事が決まらない時に、私たちはじゃんけんをしてその勝敗に決断を委ねます。このように日常的に用いているじゃんけんですが、私たちはいつから(何歳から)じゃんけんができるようになるのでしょうか?

私たちがいくつかの実験を行って確かめたところ、じゃんけんができるようになるのは3歳後半であることがわかりました(大谷ほか, 2019)。ちなみに、2歳半くらいで既にじゃんけんの手を形作ることはできますが、特にチョキの手を作るのは少し難しく、「じゃんけん、ぽん!」の合図に合わせてタイミングよく手を出すことはまだできません。
さて、「じゃんけんができるのは3歳後半くらい」という答えに対して、どう思われたでしょうか?“意外と早いな”と思われた方もおられるかもしれません。実はその感覚はある意味で正しくて、子どもたちがじゃんけんの“勝ち負け”をわかるようになるのは、それよりもう少し先の、4歳から5歳にかけての時期になります。つまり、子どもたちはまだ勝ち負けのルールがよくわかっていないうちからじゃんけんをしているのです。
保育園などで子どもたちの様子を観察していると、鬼ごっこの鬼を決めるためにじゃんけんをしている年長さんたちを見て、全然関係ないし、タイミングも合っていないけれど、自分もグーの手を出して混ざろうとする2歳児さんを見かけることがあります。何とも微笑ましく、その表情には“じゃんけん、知ってるよ!”という自信と喜びが満ちています。
「子どもたちはルールをきちんと理解する前から、じゃんけんをしている」という事実は、私たちにとって大切な教訓を含んでいます。私たちは何か新しいことを学ぶときに、それを「いずれ使うもの」と考え、その準備として学習を進めます。例えば、いつか外国に行った時に使うため、あるいは今度の試験で使うために、英語を一生懸命勉強したりするわけです。使う前に準備をする、という学び方ももちろん大切です。しかしながら、もう一方の「やりながら身につけていく」という方法も、私たちは小さい頃からたくさん繰り返してきているのです。何か新しいことにチャレンジする時、ふと不安がよぎったり、一歩踏み出すことへの躊躇を感じたりするかもしれません。そんな時、私たちは子ども時代から「まずやってみる」ことでさまざまな力を身に着けてきたのだという事実を、思い出して頂けたらと思います。
【文献】
大谷多加志・清水里美・郷間英世・大久保純一郎・清水寛之 (2019). 幼児におけるじゃんけんの勝敗判断に関する発達段階の評価. 発達心理学研究, 30(3), 142-152.
京都光華大学 健康科学部 心理学科
教授 大谷 多加志
