
大学の授業というと、どのような場面を思い浮かべますか。
大きな教室で多くの学生が講義を受ける授業や、専門書を読んで内容を発表する授業をイメージする人も多いかもしれません。もちろん、それも大学の学びの一つです。しかし、大学ならではの学びとして大きな特徴となるのが、少人数で行われるゼミナール、通称ゼミです。ゼミは、学生が自分の興味や関心に合わせて専門分野を深く学び、先生や仲間と話し合いながら、自分自身で問いを見つけ、調べ、考え、形にしていく授業です。
京都光華大学社会学部社会共創学科は、2026年4月に開設された新しい学科です。現在在籍しているのは1年生であるため、専門的なゼミはまだはじまっていません。そこで、高校までの授業とは異なる大学の少人数教育や、専門分野を深く学ぶゼミの様子をイメージしてもらうため、今回も、社会共創学科の平松隆円准教授がキャリア形成学部キャリア形成学科で担当している3年生ゼミを紹介します。
サステナブルファッションをテーマにしたゼミ
平松ゼミでは、サステナビリティ、フェアトレード、オーガニック、ローカルメイド、ソーシャルプロジェクトなどの視点から、人や社会にとっての「美」とは何かを考えています。
「美しい」と感じる商品は、見た目がよいだけで成り立つものではありません。誰が、どのような環境で、どのような素材を使ってつくっているのか。購入した人が長く大切に使えるのか。社会や環境にどのような影響を与えるのか。そうした背景まで含めて考えることが、これからの商品開発では重要になります。
2026年度の平松ゼミでは、残糸を使ったTシャツの商品開発に取り組んでいます。残糸とは、生地や衣服をつくる過程で使い切れずに残った糸のことです。品質に問題がない糸であっても、色、太さ、素材、量などの条件によって次の製品に使いにくく、活用されないまま保管されたり、廃棄されたりする場合があります。学生たちは、この残糸を新たな資源として捉え、長く着られるTシャツとして生まれ変わらせることに挑戦しています。
デザイナーから学んだヒントを、具体的な形へ
これまでの授業では、山口県下関市を拠点に活動するファッションデザイナーの浜井弘治さんから、残糸や和紙といった素材を生かした服づくりについて学びました。
浜井さんは、ファッション産業で生じる素材の課題を、デザインの力によって新しい価値へ変える活動に取り組んでいます。学生たちは、浜井さんの話を通して、服をつくることがたんなるデザインではなく、素材、生産、流通、販売、そして社会課題と深く結びついていることを学びました。
今回のゼミでは、これまでに学んだことをもとに、平松ゼミに所属する8名の学生が、具体的なTシャツのデザインやサイズについて意見を出し合いました。

Tシャツのデザインを考える
まず学生たちは、近年のTシャツの流行や、さまざまなブランドのデザインを調べながら、自分たちならどのようなTシャツを着てみたいかを話し合いました。
一口にTシャツといっても、決めなければならないことは数多くあります。首回りをクルーネックにするのか、少しゆとりのある形にするのか。袖の長さは短めにするのか、やや長めにするのか。ポケットをつけるのか、つけないのか。つける場合は、どの位置に、どの大きさで配置するのか。シンプルに見えるTシャツほど、細かな違いによって印象が大きく変わります。学生たちは、デザインの楽しさだけでなく、服をつくる難しさも実感しながら検討を進めました。
今回のプロジェクトで大切にしているのは、流行に左右されすぎず、長く着続けられるデザインです。サステナブルな商品であるためには、環境に配慮した素材を使うだけでは十分ではありません。購入した人が何度も着たいと思い、数年後も手に取りたくなるデザインであることが大切です。
フリーサイズにする難しさ
デザインと同じくらい、学生たちが悩んだのがサイズです。
店頭で販売されているTシャツは、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズを基本に、それよりも小さいサイズや大きいサイズを展開している場合が多くあります。また、一見すると誰でも着られそうに見えるTシャツでも、肩幅、身幅、袖丈、着丈などは、男性向けと女性向けで微妙に異なることがあります。
今回のTシャツは、性別を問わず着用しやすいフリーサイズで展開する予定です。しかし、フリーサイズにすることは、決して簡単ではありません。できるだけ多くの人が着やすいサイズにしようとすると、体格の小さい人には大きすぎる可能性があります。一方で、すっきり見えるシルエットを重視すると、体格の大きい人には着にくくなる可能性があります。
オーバーサイズ気味にするのか、ジャストフィットに近づけるのかによって、着心地や印象も大きく変わります。学生たちは、実際に着る人の姿を想像しながら、サイズ設計について考えました。

着る人のことを考える商品開発
ゼミでは、次のような問いをもとに話し合いが進みました。
「できるだけ多くの人に着てもらうには、どのようなサイズがよいのか」「長く愛用してもらえるシルエットとは、どのようなものか」「性別や年齢にかかわらず着やすいデザインにするには、何を大切にすればよいのか」「残糸ならではの素材感や色合いを、どのように魅力として伝えられるのか」
商品開発では、自分たちが作りたいものを考えるだけでは不十分です。誰が着るのか、どのような場面で着るのか、どのような価格なら購入しやすいのか、どのような言葉や写真で伝えれば魅力が届くのかを考える必要があります。学生たちは、デザイン、サイズ、着心地、販売方法を結びつけながら、残糸Tシャツの商品化に向けて少しずつ形を整えています。
社会課題を、自分たちの学びにつなげる
残糸を使ったTシャツづくりは、たんなる服づくりではありません。
繊維産地で生じる残糸の課題を知り、素材を新しい価値へ変え、消費者に選ばれる商品として届けるための学びです。そこには、環境問題、地域産業、デザイン、マーケティング、販売、広報など、さまざまな分野が関わっています。社会共創学科では、社会学を基盤に、経営、心理、文化、データサイエンス、情報、デザインなどを分野横断的に学びます。身近な疑問や関心を出発点に、企業や地域の人々と協力しながら、社会課題を解決するためのアイデアを形にしていきます。
「ファッションが好き」「デザインやものづくりに興味がある」「SDGsや環境問題について学びたい」「自分たちのアイデアを商品にしてみたい」そうした関心は、大学での学びにつながります。好きなことや身近な疑問を、社会をより良くする力へ変えていくことが、社会共創学科の学びの魅力です。
完成に向けてプロジェクトは続きます
学生たちは今後も、浜井氏の協力を得ながら、残糸の魅力を生かしたデザインを検討し、試作、製造、販売へとプロジェクトを進めていきます。
自分たちで考えたアイデアが、どのようなTシャツとして完成するのか。社会課題の解決と、長く愛される商品づくりをどのように両立させていくのか。今後の活動にもぜひご注目ください。
プロジェクトの様子は、Instagram(nokoriito)でも発信しています。
