
みなさんは、「お祭り」と聞いて何を思い浮かべますか。
京都のお祭りといえば、やはり祇園祭を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。祇園祭の山鉾巡行は7月に行われますが、京都のまちなかでは6月中旬ごろから少しずつ準備が始まり、まち全体がお祭りに向けた雰囲気に包まれていきます。
大学でのお祭りといえば、大学祭です。京都光華大学でも、2026年11月7日(土)・8日(日)に予定されている大学祭に向けて、少しずつ準備が始まっています。社会学部社会共創学科でも、1年生が大学祭での模擬店企画に取り組み始めました。
大学祭の模擬店は、社会共創を学ぶ第一歩
社会共創学科では、企業、地域社会、行政、NPOなどの社会共創パートナーと連携し、学生がチームで社会課題の解決や新しい価値の創造に取り組みます。授業で知識を学ぶだけではなく、地域や社会の現場とつながりながら、実際に企画を考え、仲間と協力し、形にしていくことを大切にしています。
では、大学祭の模擬店は、なぜ社会共創の学びにつながるのでしょうか。
化粧心理学、ブランド戦略論、新事業創出を専門とし、企業コンサルティングの経験もある平松隆円准教授は、ビジネスを「誰かの困りごとや求めていることを解決する手段」と説明します。
模擬店も同じです。ただ自分たちが売りたいものをだすのではなく、来場者が何を求めているのかを考え、どのような商品やサービスで喜んでもらえるのかを考える必要があります。
「自分たちがやりたい模擬店を考えるだけでなく、来場者が求めている商品やサービスは何か、その模擬店を通してどのような価値や体験を提供できるのかを考えることが、社会共創の最初の一歩です」と平松准教授は話します。
1年生全員が学ぶ「社会共創基礎演習」
今回の授業は、社会共創学科の1年生全員が受講する「社会共創基礎演習」で行われました。社会共創基礎演習は、大学での学び方を身につけるだけでなく、チームで課題を発見し、調査し、アイデアをだし、発表するための基礎を学ぶ授業です。
今回は、大学祭で模擬店を出店するための条件やルールが説明されたあと、学生たちはチームに分かれ、企画づくりに取り組みました。まず行ったのは、過去の京都光華大学の大学祭や、他大学の大学祭でどのような模擬店が行われていたのかを調べるリサーチです。どのような商品が多いのか。飲食系が多いのか、体験型の企画があるのか。価格帯はどのくらいか。来場者にとって、どのような模擬店が立ち寄りやすいのか。
学生たちは、思いつきだけで企画を決めるのではなく、実際の事例を調べながら、大学祭に来る人たちのニーズを考えました。
「売りたいもの」ではなく「求められるもの」を考える
模擬店企画で大切なのは、「自分たちが何を売りたいか」だけで考えないことです。
来場者は、高校生、保護者、地域の方、在学生、卒業生、教職員など、さまざまです。年齢も、来場目的も、大学祭で過ごす時間も異なります。そのため、同じ模擬店でも、誰に向けて企画するのかによって、商品、価格、見せ方、接客の方法は変わります。
学生たちは、来場者を具体的に想像しながら、「誰に、何を、どのように届けるのか」を話し合いました。たとえば、オープンキャンパスのように大学の雰囲気を知りたい高校生に向けるのか。子ども連れの地域の方に楽しんでもらうのか。友人同士で写真を撮りたくなる企画にするのか。短い時間で気軽に立ち寄れる模擬店にするのか。
こうした問いを重ねることで、学生たちは、商品やサービスを考えることが、相手を理解することから始まると学びました。

アイデアを形にするための方法も学びました
授業では、アイデアをさらに深めるための考え方として、平松准教授から「TRIZ(トリーズ)の40の発明原理」「ピュー・コンセプト・エバリュエーション」「ペルソナ設定」について説明がありました。
TRIZとは、発明や技術開発の事例から問題解決のパターンを整理した発想法です。既存のアイデアを少し変えたり、組み合わせたり、反対の方向から考えたりすることで、新しい解決策を見つける手がかりになります。ピュー・コンセプト・エバリュエーションは、複数のアイデアを評価項目に沿って比較し、どの案を進めるべきかを考える方法です。楽しさ、実現しやすさ、費用、準備のしやすさ、来場者への魅力など、いくつかの視点からアイデアを比べることで、感覚だけに頼らず判断できます。ペルソナ設定は、商品やサービスを届けたい相手を具体的な人物像として考える方法です。「高校3年生で、大学選びのために保護者と大学祭に来た人」「地域に住む小学生とその家族」など、来場者を具体的に想像することで、どのような商品や体験が喜ばれるのかを考えやすくなります。
学生たちは、これらの方法を使いながら、なんとなく面白そうな企画ではなく、根拠をもって実施できる模擬店のアイデアを考えていきました。
チームで考えるから、アイデアが広がる
授業では、チームごとに意見を出し合いながら、企画の方向性を検討しました。一人で考えていると、どうしても自分の好きなものや知っていることに発想が偏りがちです。しかし、チームで話し合うことで、自分では思いつかなかった視点に気づくことができます。
「その商品は本当に売れるのか」「準備にどれくらい時間がかかるのか」「予算内で実現できるのか」「来場者はどんな体験を楽しみにしているのか」「他の模擬店と似ている場合、どのような違いを出せるのか」
学生たちは、仲間の意見を聞きながら、企画を少しずつ具体的にしていきました。大学祭の模擬店づくりは、販売を体験するだけではありません。調査力、企画力、コミュニケーション力、チームで協働する力、予算を考える力、相手に価値を届ける力を学ぶ機会でもあります。
社会共創学科で身につく実践力
社会共創学科では、社会学を基盤に、経営、心理、文化、データサイエンス、情報、デザインなどを分野横断的に学びます。
社会の課題は、一つの分野だけでは解決できないことが多くあります。地域のにぎわいづくり、観光、福祉、子育て、環境、商品開発、イベント企画、デジタル技術の活用など、さまざまな視点を組み合わせることが必要です。今回の大学祭模擬店プロジェクトも、社会共創学科の学びにつながっています。
来場者を理解すること。地域や大学の特徴を生かすこと。チームで意見をだしあうこと。限られた予算や時間の中で実現可能な企画を考えること。商品やサービスを通して、相手に楽しい体験や新しい価値を届けること。これらは、将来、企業、地域、行政、NPOなどで活躍するためにも必要な力です。

11月の大学祭に向けて、準備は続きます
京都光華大学の大学祭は、2026年11月7日(土)・8日(日)に開催予定です。
およそ5か月の準備期間を通して、学生たちは今回出したアイデアをさらに具体化していきます。企画内容を見直し、必要な材料や予算を考え、役割を分担し、来場者に喜んでもらえる模擬店を目指して準備を進めます。また、模擬店の実施にあたっては、地域のみなさまや社会共創パートナーである企業・団体のみなさまにご協力をお願いする場面もあります。
学生たちが、大学での学びを生かしながら、地域や社会とつながり、新しい価値を生みだしていく姿を、ぜひ応援していただけますと幸いです。社会共創学科の1年生が考える模擬店が、どのような企画として形になっていくのか。今後の活動にもぜひご注目ください。
