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教員コラム

アメリカ便り① 「アシカを撮る人々」

 ここはサンフランシスコのフィッシャーマンズワーフです。

 海に浮かべた板の上に寝ているのは・・・そう、アシカです。
そのアシカの写真を撮っている人々がたくさんいます。アシカはそれを全く気にせず、昼寝をしたりじゃれあったりと、優雅にくつろいでいます。

 サンフランシスコはカリフォルニア州の有名な都市ですが、州都ではありません。州都はサクラメントというところです。
サクラメントにある「理学療法センター」(理学療法士が個人で開業されています)を見学させていただく機会を得ましたので、少しご紹介したいと思います。

 そこは大きなところではありませんが、様々な設備がそろっていて(小さな温水プールもありました。治療に使います)、理学療法士とインターンが患者さんの訓練を行っていました。理学療法とは基本的動作(座って、立って、歩いてなど)を中心に、身体の動きを改善させる訓練です。重症で寝たきりの患者さんはおられないようでしたが。

 日本で理学療法を受けるといえば、ほとんどが病院のリハビリテーション科というところで、入院しながら(または外来で)お医者さんの指示があって受けるものです。リハビリテーション科には、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がいて、それぞれから必要な訓練を受けることができます。ちなみに本学には、言語聴覚士を養成する言語聴覚専攻があります。

 アメリカでは医療費が高額で、医療保険も会社が販売しているものを使いますので、みんな早く退院して、外来で訓練を受けるのだそうです。医師の処方箋があって、保険会社がお金を払ってくれるとは限らないので、自己負担で訓練する人もいます。
 日本は公的医療保険ですので、どの人も一律に、同じ病気であれば、原則同じ治療を同じ負担(1割~3割負担)で受けることができます。

 そこで1人の女性患者さんにお会いしました。5年前に脳梗塞という病気をされて、歩くことはできますが、右手足にまひが残っています。病気になったときは嚥下障害も出て、言語聴覚士の訓練を受けたとおっしゃっていました。
 
 今ではお話も出来て、食べることもできるそうです。その方の訓練がとてもハードで、日本で言えば、リハビリテーション科で行う訓練というより、スポーツジムで行う筋力トレーニングに近いものでした。彼女は、週1回はセンターに来て理学療法士の元で訓練をしていますが、週2回は自宅で訓練しているのだそうです。
 同じような病気をした人たちに、自分の良くなった姿を見せたいと、回復した力が落ちないように、ずっと訓練をされています。保険会社からのお金は出ず、自費で来ていると言われていました。

 もちろん車椅子で来られている患者さんもありますが、自分で車を運転してくるか、家族に送ってもらわなければ、センターに通ってくることはできません。入院していて訓練を受けるのではないので、時間も、家族の援助もたくさん必要です。

 日本では、患者さんはあまり頑張る気がないけれど、医療関係者や家族からの叱咤激励で「訓練させられている」患者さんも見受けますが、アメリカでは、頑張る気持ちと回復する可能性がないと、訓練そのものを受けにくい状況があるようでした。訓練の目的も様々です。

 国が変われば考え方も制度も違うので、患者さんの意識も違うのだなあと、改めて思いました。訓練を受けるには、患者さんの自発的な頑張りが前提となることが当たり前とされているようでした。そして、どこでも個人の責任を強く感じました。

 私たちはどうでしょうか?自分の将来だから、自分の責任で、しっかり考えて決めていくという自覚を持って生活しているでしょうか?

優雅なアシカと写真を撮る人