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2022.07.04 専門分野コラム魚を情報デザインする(2) 「魚の卵の使い方」
こんにちは!
情報分野担当の辻野です。
今年度の私の教員ブログは、「魚の情報デザイン」について書いています。
第1回は、「タラの食べ方」でした。
前回の記事を書いているときに辛子明太子が気になったので、第2回のテーマは「魚の卵」です。
今回も、フリー素材のイラスト以外は、全てPowerPointを使って作成しました。
●「魚」と「卵」と「卵巣」と
みなさんは、「魚卵」という言葉を聞いたことがありますか?
「魚卵」とは、魚介類の卵のことです。「魚卵アクアリウム(水産庁)https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1901/spe2_01.html」には、魚介類9種の卵と親を紹介しています。一般的に、「魚卵」には魚以外の魚介類の卵が含まれます。このため、このブログでは「魚」に限定する意味で「魚の卵」と書きます。
スーパーでは、辛子明太子やイクラ(図1)をよく目にしますよね。
図1 辛子明太子とイクラ
辛子明太子は、スケトウダラの体から卵巣を取り出して使っています。一方イクラは、サケの卵巣である筋子から卵を取り出して、バラバラにして使っています。この他に、「子持ちあゆ」や「子持ちししゃも」のように、卵巣を取り出さずに食べることもあります。
ところで、卵巣って何でしょう?
卵巣は、メスの体内にある生殖器官で、真子(まこ)とも言います。
産卵期になると卵巣の中に卵(卵子)をできます。そしてメスが卵を産むと、その卵にオスが精子をかけて受精し、時間がたてば魚の赤ちゃんが生まれます。
魚の体内に卵巣があり、卵巣の中に卵があるという関係です。この関係を模式図にしたのが、図2です。
図2 魚の体・卵巣・卵
今回も次の3段階にわけて、情報デザインを作る過程を説明します。
ステップ1 情報を収集する
ステップ2 情報を整理する
ステップ3 情報を表現する
●ステップ1 情報を収集する
(1)「魚の卵」の情報収集
まず、食用「魚の卵」の種類と使い方の情報を収集しました。
今回は試作のため、情報の量を絞るために、魚の種類と使い方は次のウェブを参考にしました。
(2) イラストの収集
図で使うイラストは、前回同様、魚や料理の絵が多い「いらすとや(https://www.irasutoya.com/)」のイラストを使いました。
●ステップ2 情報を整理する
次に、集めた情報を整理しました。
集めた情報によって、整理方法が決まる場合があります。例えば、名簿なら「あいうえお順」、料理のレシピなら「作業順」です。情報の性質に逆らって整理すると、伝わりにくくなります。情報は単に並べるのではなく、情報の内容を理解して、そのデータに向いた整理方法を選ぶ必要があります。
今回は卵の「使い方」を、表1のように「卵」「卵巣」「子持ち」の3種類に分けて扱います。
表1 卵の使い方
この「使い方」の関係を模式図にしたのが図3です。
図3 使い方の関係
まず、収集した情報を魚ごとに「使い方」をまとめて表2を作りました。
表2 魚別卵の使い方
表2から魚によって使い方が異なることが分かります。一番上のチョウザメは卵として使い、2番目のニシンは卵・卵巣・子持ちのどの形でも使います。そこで、魚の種類と「使い方」の関係をまとめると、表3のように7パターンあることが分かりました。
表3 使い方のパターン
そこで、「使い方」の関係について考えました。
表3のパターンは、図4のように集合として表現できます。図中の①から⑦までの丸数字は、表3のパターンを表します。
図4 使い方のパターン(ベン図)
さらに、同じ数字を「図3 使い方の関係」に書き込んだものが図5です。例えば、パターン④の使い方は「子持ち」と「卵巣」なのでそれぞれに④と書き、さらに点線で囲いました。パターン⑤は「子持ち」と「卵」なのでそれぞれに⑤と書き、点線で囲いました。
図5 使い方の関係とパターン
図5をもとに「魚の卵の使い方」の図を作成すると、パターン⑤は「子持ち」と「卵」の2つの部分に分かれてしまいます。そこで、図6のように「卵」の円を下に動かして、「卵巣」の円に接する部分を作ると、情報を無理なく表現できました。
図6 使い方の関係とパターン(修正版)
●ステップ3 情報を表現する
図6を反時計回りに90度回転して、魚をイメージしやすい形に変形し、そこに収集・整理した情報を配置して、図7を作成しました。
図7 魚の卵の使い方
作成のポイントを挙げます。
● 全体の色は、卵・卵巣のイラストの色に合うように、オレンジを選んだ● 配色は、オレンジの「明るさ」の値を変えて設定した(図8)
● 「使い方」が複数ある魚は線で囲った
● イラストがない魚は、輪郭線のみの模式図で代用した
図8 色の設計
さて、皆さんはどの卵が気になりますか?
オープンキャンパスでは、様々な学生作品を展示しています。ぜひ会場で直接ご覧ください!
次回もお楽しみに!
●参考資料
書籍
講談社編,「旬の食材 春の魚」,講談社,2004年講談社編,「旬の食材 夏の魚」,講談社,2004年
講談社編,「旬の食材 秋の魚」,講談社,2004年
講談社編,「旬の食材 冬の魚」,講談社,2004年
藤原昌高著,「からだにおいしい 魚の便利帳」,高橋書店,2010年
高橋書店編集部編,「からだにおいしい魚の便利帳 全国お魚マップ&万能レシピ」,高橋書店,2019年