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2025.06.24 授業活動妖怪や鬼と異国の人々 ~妖怪の記述を参考に現代社会について授業で考えました
ライフデザイン学科教員の久世です。
今年も私が担当するサブカルチャー論では、見えないもの…特に「妖怪」や「鬼」などを人間がどのように表現してきたかを考えています。アニメやゲームなども題材としながら、毎年アップデートしながら授業をしています。
現時点で、今年の学生からの反響が大きかったトピックスは、酒呑童子と、地図・地誌でした。
酒呑童子は、絵巻や謡曲、読本などで語られてきた鬼です。京都市の西、亀岡市との境界にある「首塚大明神」には、この酒呑童子の首が埋められていると言われています。源頼光らに酔わされ不意を突かれて退治される際、酒呑童子が「鬼神に横道なきものを」と言ったという記述があるものを紹介したところ、酒呑童子の正体やこの説話の背景に何があるのかを自分なりに考えてくれた学生さんが多かったのが印象的でした。
もう一つは、異国の情報が書かれた地図や地誌に見える、「異人」の表現についてです。日本でも中国でもヨーロッパでも、自分たちの住む場所から遠く離れた国の人を想像するとき、不思議な姿で描かれることがあります。胴に顔がついている人、獣とのキメラのような人、手足が多い人、巨人や小人の国…。実在の国と空想の国が混在して書かれた江戸時代の地誌には、北アメリカには「尸頭国」という国があり、夜になると人々の首が抜け出て飛び交うという記述があるものもあります。挿絵にはまるでろくろ首のような人々が描かれており、その国では「足を伸ばして寝る」ではなく、「首を伸ばしてゆっくり寝てください」と言うのだと書かれています(『画本異国一覧』巻之四)。
琉球大学 琉球・沖縄関係貴重資料デジタルアーカイブより『画本異國一覧』
https://shimuchi.lib.u-ryukyu.ac.jp/collection/other/ot01904/7
これらは人間の想像力の豊かさを示す反面、排他意識や差別意識とも関わってくるという話もしました。これについて学生から感想が多く寄せられました。排他意識と戦争や、異文化理解、他者を知ることの重要性など、この話をきっかけとして、色々な観点で考察してくれました。
一見浮世離れした「妖怪」ですが、詳しく見てゆくと、現代社会にも通じる問題を含んでいます。この授業をきっかけに様々な思索を重ねてくれる学生たちを、心強く感じている今日この頃です。