京都光華大学 短期大学部 ライフデザイン学科 ニュース ウェディングブーケのおはなし② ブートニア

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ウェディングブーケのおはなし② ブートニア

こんにちは!ライフデザイン学科教員の菅尾です。
今日は、ウェディングブーケとブートニアについてご紹介したいと思います。

前回のブログでお伝えした通り、ウェディングブーケは、西洋のブライダルアイテムのうち最も重要なもののひとつです。結婚式の際に新婦が持つ花束が、ウェディングブーケでしたね!
このウェディングブーケと一緒に、多くの場合、ブートニアと呼ばれる小さな花束が用意されます。このブートニアは、新郎が身に付けるもので、左胸に飾るのが通例です。


今どきですが、ChatGPTに「ブートニアについて教えてくださいませんか?」と尋ねてみたら、以下のように答えてくれました。

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ブートニア(boutonnière)について、やさしくて分かりやすい説明をお届けしますね🌸
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🌿ブートニアとは?
ブートニアは、新郎のタキシードやスーツの襟元(左側)につける小さな花飾りのことです。
結婚式で、新婦が持つブーケ(花束)とおそろいの花が使われることが多く、ふたりの**「ペア」や「絆」**を象徴しています💑
💐由来と意味
この習慣の起源は、中世ヨーロッパにさかのぼります。男性が愛する女性にプロポーズするとき、その女性が花束を差し出し、もし気持ちに応えるなら、その花の中から一輪の花を取って、男性が自分の胸元にさすというロマンチックな習慣があったそうです✨
つまり、ブートニアは「あなたを愛しています、あなたの気持ちに応えます」という証なんです。

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なかなかわかりやすいですね!一般に言われていることを、とてもかわいくまとめてくれました。
ブートニアについての簡単な知識が得られたところで、歴史を踏まえてより詳しく見てみましょう。
日本では、この男性向けの小さな花束をブートニアと呼びますが、英語では、Boutonniere (ブートニア) のほか、Buttonhole (ボタンホール、「ボタンの穴」の意) とも呼ばれています。ボタンホールは、男性用のジャケットやコートの左襟にあるボタンを通すための穴のことですが、花束を「ボタンの穴」と呼ぶなんて、なんだか不思議な感じがしますね。


西洋では、古くから男性が花束を左胸に飾る文化がありました。この始まりは、一説によれば古代ギリシア・ローマまでさかのぼります。
古代ギリシアの時代、結婚式の男性列席者は、悪霊を追い払うために摘みたての花にハーブを混ぜた小さな花束を身につけて、左胸の心臓に近い部分にピンで留める風習があったそうです。加えて、ローマの時代になると、花は「新しい始まり、忠実、豊穣の象徴」として知られるようになり、結婚式で花束を持つことが一般的になったといわれています。
女性が持つブーケと、男性が胸に添えるブートニアという形式は、このころには整っていたのですね。


この小さな花束を左胸に付けるという文化は、中世には騎士たちのあいだで発展しました。彼らの多くが、愛と忠誠の証として、女性から贈られた花を胸に挿して戦いに臨んだといわれています。このとき、右手に剣を、左手に盾を持つ騎士が多かったことから、盾で守られる左胸に花を挿したということです。また、この花は、敵・味方を見分けるための目印としても使われていたようです。


16世紀から17世紀にかけて、この習慣は貴族のあいだで流行し、当時人気を博していた花言葉と結びついて愛情表現の手段となりました。この左胸に挿す花束が、ピンで留めるのではなく、ボタンホールに挿されるようになったのは、19世紀に入ってからです。
1840年、イギリス・ヴィクトリア女王の結婚式の日、ヴィクトリア女王はウェディングブーケの中から1輪の花をアルバート公に贈りました。公子はその愛に応えるために制服の左胸元に剣で穴をあけ、その花を挿したというロマンティックなストーリーがあります*。男性用コートやジャケットにあるボタンホールは、これを模してデザインされたということです。
これ以後、男性の左胸の花束は、ボタンホールに茎ごとそのまま挿すのがおしゃれな着こなしとされ、世界中に広がり、男性が胸元に挿す小さな花束はボタンホールやブートニアと呼ばれるようになっています。

 

ブートニアは現在、結婚式やパーティーなどフォーマルな場面で使われることが多いため、茎をリボンで巻き、ピンで留めるのが一般的です。また、胸ポケットにそのまま指すスタイルも人気です。


ちなみに「ブートニア」という英語は、フランス語の Boutonnière(ブートニエール、「ボタン穴の花」の意)がイギリスに取り入れられたものです。「ボタンの穴に花を挿す」という習慣や呼び名が、いかに西洋の文化と深く関係しているかがよくわかりますね。

今日は、歴史を交えながらブートニアについてご紹介しました。
今回取り上げたブートニアと同様に、前回お伝えした花言葉も、英国ヴィクトリア朝の時代に定着していったことがわかりましたね。ヴィクトリア女王の結婚式は、現代のウェディングアイテムの基礎を築いた出来事のひとつなのかもしれません。
このように歴史を紐解いてみると、知っているようで知らないことがたくさんあることに気づくでしょう。みなさんもぜひ、時代と共にものごとの形式や価値観がどのように変わってきたのか調べてみて、ご自分の興味関心を深めるきっかけにしてみてください。それでは、またお会いしましょう!

* 当時の絵画にその花が描かれていないことから、その信ぴょう性についての議論は別れるところです。それでもこの逸話は、現代のコートやジャケットに見られる「ボタンホール」の起源として語り継がれています。