京都光華大学 短期大学部 ライフデザイン学科 ニュース これは何でしょう?年末年始にかかせないもの

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これは何でしょう?年末年始にかかせないもの

ライフデザイン学科教員の久世奈欧です。

ライフデザイン学科教員の久世です。さて、突然ですが、これは何でしょうか。

図①


図②


図➂


図④

①は着物のデザイン画のように見え、格子柄の上に「大」「小」と書かれた〇が並んでおり、横には「寛文雛型写」「大小のまる(丸)にかうし(格子)」「壬戌春」と書かれています。
②はウサギが小鯛と大根を天秤棒で担いでおり、振り売りとよばれた行商人のようです。ウサギの後襟には「癸」とあり、腰から下げた帳面には「てん明さん」と書かれています。その上には「大」「小」を組み合わせて「こだいこだいだいこだいこだいこだいこ(小鯛小鯛大根大根大根大根)」と、歌のようなものが書かれています。
③は日の出と舟の絵です。舟の帆には「大」と書かれています。一見、そのほかに文字はないようですが、よく見ると舟の絵が、「正」「三」「七」「八」「十一」「十二」という文字で構成されていることがわかります。
④は武士の絵が描かれています。よく見ると、この武士の絵も、「正」「三」「五」「閏」「九」「十一」という文字で構成されています。上には「御大八二極げん十七四ろい六者(御台場に極厳重な鎧武者)」という歌のようなものが。署名は「きの画(きのえ)」とあり「寅」という文字をあしらった判も描かれています。

 いずれの絵にも「大」「小」の文字があり、「正」や漢数字も多く出ています。また、「壬戌」や「癸」やウサギ(卯)、「きのえ(甲)」「寅」などの文字もありました。さあ、これらを考え合わせると、これらの絵がどのようなものだったか見当がついてきたでしょうか?
 ヒントは、今も年末年始に買い求める人が多いものです。


 ①~④の絵は、全て「絵暦」と呼ばれるものです。つまり、昔のカレンダーです。どうカレンダーになっているのかといいますと、「壬戌」「癸卯」「甲寅」というのは、年を表しています。十干(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)十二支(子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥)を組み合わせて表現する方法です。①は文久2年(1862)壬戌、②は天明3年(1783)癸卯、④は安政元年(1855)甲寅の年を表しています。③には表記はありませんが、慶応2年(1866)のものだそうです。
 明治5年(1872)まで、日本では太陰太陽暦が使われていました。この暦では、月が地球をまわる周期に基づき、30日と29日の月を作っていました。30日の月を大の月、29日の月を小の月といいます。ところが、何月が大の月で何月が小の月かは、毎年変わるのです。そこで「今年の〇月は30日までかな?29日までかな?」と確認するために、このような「絵暦」が作られたのです。
なお漢数字は月を表しており、「正」は正月=1月のこと、「極」は極月=12月のことを指します。また「閏(うるう)」とは閏月のことです。太陰太陽暦では、暦のずれを調節するため、2~3年に一度13か月の年を作り、増えた月を「閏月」とよびました。

①では右列上から順に、1月大の月、2月小の月…と読んでいき、左列の黄緑色の〇2つは8月と閏8月を表しています。
②は上の歌が、1月から12月までの月の大小を順に書いたものになっており、1月が小、2月が大…と読みます。
 ③は舟の帆に「大」とあるので、舟を構成する漢数字は大の月を表しており、この年の大の月が1・3・7・8・11・12であることがわかります。
 ④では上の歌に「大」とあるので、歌を構成する2・4・6・7・8・10・12は大の月を表していることがわかります。一方、武者の絵を構成する1・3・5・閏(7)・9・11は小の月です。

 このように、その年の月の大小や閏月の有無などがわかるようになっているのです。①③④は国立国会図書館デジタルコレクション「絵暦貼込帳」、②は同「天明絵暦」に収められているものです。同資料にはほかにも様々に趣向を凝らした絵暦が収録されていますので、ぜひ見て楽しんでみてください。