京都光華女子大学 健康科学部 心理学科 ニュース 意識の裏側を流れる物語について①

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教員コラム

意識の裏側を流れる物語について①

1. 「もの想い」は物語思考
私たち人間は起きているときはもちろん寝ているときも、「もの想い」している。「もの想い」は、なにやらはっきりしないことをぼんやりと想っていることをいう。意識を働かせて本を読んでいる、先生の講義を聴いている、などの活動中、意識は「思考」をフルに働かせているので、「もの想い」は消えているのだけれど、集中が途切れていたり、休憩中だったり、居眠りしているときには「もの想い」が始まっていることが多い。
「もの想い」は、眠っているときには夢として現れる。目が覚めているときに現れる「もの想い」を「白日夢」あるいは「白昼夢」と呼ぶ。
「もの想い」は一種の思考である。イメージを物語のように展開させて思考する考える方法で、これを「物語思考」という。

2.  神話・祝祭・歴史
物語思考は原始的な思考である。原始時代から伝わっている神話は、主としてその国の成り立ち、どうやって神様が私たちの国を作ったのかを語る国産みの物語である。
国産みの神話をミュージカル仕立てで演じる祭りは、国民全員で鑑賞することによって、新しく国を作り直す経験をすることになる。年に一回の国産みの祝祭は、だから新鮮なリフレッシュの時空なのである。今もその伝統の上で私たちが経験する正月は、国産みの気分を残している。正月のあいさつが「おめでとう」というのは、国の誕生日を祝う意味からなのである。元旦の朝、いつもの朝ではない、神聖な朝の気分は古代からの遺伝子が私たちの中にある証拠といえよう。
人類の古代からの思考方法は今も続いていている。世界史レベルの歴史も物語として、エピソードのつながり、流れとしてとらえると理解しやすい。また、個人の歴史を写真、録画で残しておくことには意義がある。結婚式披露宴での新郎新婦のアルバムが上映されることが多いが、二人の個人史が出会いによって家族の物語が始まるイメージを物語思考しながら祝うことができるのである。

3.  学生の夢分析グループ
今まで多くの学生の夢を聴かせてもらった。
前に勤めた大学では、夜に見た夢を持ち寄って話し合う夢分析のゼミを8年間ほど続けていた。私のゼミは発達臨床コースの学部生と教育臨床専攻の大学院生が合同で毎週90分×2コマを総勢約10人でお互いの夢を発表、鑑賞しあうのである。もちろん、カウンセラーとしての私がファシリテーター(世話人)として聴くので学生たちは安心して夢を語り合っていた。
夢を語り合うことは、本音を語り合うことである。私たちは覚醒時にうそをつくことがあっても、夢でうそはつけない。夢は「本音」なのである。ただし、「私はうそばかりついているなあ」との悩みを思考している夢ならば、うそばかりついてしまう夢をみるかもしれないのだけれど。
したがって、学生・院生たちはお互いの本音の物語を共感しながら聴き続けているので、当然、仲がよかった。

夢分析のゼミでの経験から私が学んだことがいくつかある。以下に紹介したい。

【②に続きます】

藪添 隆一(2017年7月12日)