ニュース

ロコモとわたしたち

ロコモって知っていますか?

スポーツ科学や児童発達の領域で、最近よく耳にする言葉、ロコモ。

私はヨガを学ぶ中で知りましたが、ヨガの世界ではロコモの解消に向けたレッスンが数々考案されています。

ロコモ、正式名称はロコモティブシンドローム(loco-motive syndrome)

「運動器の機能障害により、移動するための能力が低下した身体状況」とされています。

ふだん、わたしたちは当たり前のように身体を動かしていますが、そこには筋肉、骨、関節、神経など、身体活動に不可欠な身体器官がうまく連携して機能してくれています。

具体的には、

関節疾患(変形性関節症、骨粗鬆症、脊柱管狭窄症、関節リウマチ)

脊椎・末梢神経の疾患(筋肉や関節に、しびれ・痛み、筋力低下が起こる)

無自覚ロコモ(上述の症状に気づかずに、身体困難が進行する状況)

ケガにより特定の身体機能が低下することはありますが、ロコモは、加齢や運動不足などで運動に関わる身体機能が低下し、歩いたり走ったり、しゃがんだり立ち上がったりなど、日常動作に困難が生じることを指します。

日本人の平均寿命がどんどん伸びていると聞くことがありますが、日常を健康に過ごすことの大切さは、ロコモ課題からも考えさせられます。

子どもロコモ

少し前から、学齢期の子どもにロコモ症状が出るケースが増えています。

例えば、ちょっとした衝撃で骨折したり、うまく走れなかったり、片足立ちなどバランス感覚を必要とする動きが極端にできなかったり。

現代の子どもの生活習慣の乱れや運動不足が原因と考えられていますが、コロナ禍の影響でステイホームが日常となり、今後のロコモ課題の急増が心配されています。

一般的に、子どものうちは関節や筋肉が柔らかくて発達しやすいので、バランス能力や柔軟性にそん色ないことが多いですが、膝が曲がらずしゃがむことができない、腕をまっすぐ上げられない、いつも肩こりがあるなど、壮年期の男性に起こりがちな症状を抱える子どもが多くなっています。

 

子どもロコモと心の発達

ロコモは子どもの自尊心の発達に大きく影響します。

子どもは,取り立ててスポーツができなくても,運動するのが好きでなくても,のびのびと体を動かしたり,着実にできる動きが増えていったりすることで,自信を獲得していきます。

また,身体的アフォーダンスの発達にも影響します。子どもは,身体発達の過程で,自分の身体機能としてできることや難しいことを感覚的に学びます。例えば,目の前に溝があったら「これくらいなら飛び越えられる。」,または「これはジャンプしても届かないな。」など,身体能力が現実に対処できるかを適切に判断できる感覚を身につけます。しかし,ロコモにより小さな頃から身体機能に支障が生じる体験を重ねると,本来できる動きにも億劫になったり,怖気やすくなったりして,自分のできる動き,本来発揮できる身体機能を把握できないままとなります。そうすると,運動不足や運動嫌いなどの副次的な影響も生じ,健康レベルが全体に低下することにもつながってきます。


ロコモへの対応

シンプルに,適度な運動をすることがロコモを防ぐことにつながります。活発に走り回ったり,長い時間歩いたり,毎日筋トレをしたりと,特別なエネルギーを注ぐ必要はありません。手足や首・肩回り,背中や腰など,身体をまんべんなく動かせれば良いのです。つまり,通学で日常的に歩いたり,階段を上ったり,体育で準備運動や整理体操に取り組んだりする程度で良いのです。

さらに効果的な取組みとしては,体操,クラシックバレエ,ダンス,ヨガなど,身体の各部位に意識して動かす時間を確保することです。自分の身体がどんな風に動くか,こんな動きは得意だけれどこの動きは苦手,こんな風に動くとケガをするから危ないなど,実際に身体を動かす体験を通じて,身体機能の知識や自分の身体への意識を高めましょう。


出典:ファーストシップヨガアカデミー

ロコモと私たち

今回は主に子どもロコモに焦点を当てましたが,従来は,加齢による身体機能の低下を要因とすることが多く,高齢者中心の成人を対象とする課題でした。

ここ数年,ステイホームが推奨される社会状況で,テレワークが大幅に普及したり,バーチャル空間での社会活動が著しく発展したりする反面,身体運動の機会が確実に減っています。運動機能に関するトラブルは,全ての年代,つまり生涯発達を通じた課題になりつつあると感じます。

ロコモはそんな現代人の活動形態の一つの特徴として,避けて通れない話題になっていくのかもしれません。
日常的に身体を動かす心掛けはもちろん大切ですが,無理はせずに,習慣的に続けられることを見つけるのがポイントです。急に、「毎日30分ランニングする!」とか,「週末はキャンプや川遊びに必ず行く!」とか、自分にピッタリはまって楽しめれば良いですが,ふだんの生活の負担増にならない範囲で,心地よさや楽しさを感じられるレベルのことから取り組んでいきましょう。
また,自分の身体に意識を向けて,心地よく,健康な状態を維持できるように,身体の声に耳を向ける習慣をつけることもおすすめです。

身体の声に耳を傾けるには,やはり瞑想がおすすめです。
瞑想については,また別の機会にお伝えします。

2022年3月14日 谷本拓郎