2026.03.17 ぼうさいらぼ

緊急地震速報が鳴ったら何秒で何をするか:「考えてから動く」では遅い理由

皆さんは「緊急地震速報」の音をスマホで聞いたことはありますか?聞いたとき、どのような行動を取っているでしょうか?

わたし、最近疑問に思うことがあるんです。はるか昔、ガラケーと呼ばれていた時代の話。若者はこぞって「着メロ」にこだわり、自分でポチポチ入力したり、3和音だ、いやいや私は4和音だと次第にメロディがリッチになり、そして着うたが出現して…でもスマホを持っている現代の若者、着信音はだいたいみんな一緒じゃないですか?あれだけ流行った着メロ(着うた)文化はどこへ?常に時代についていけないサトウですこんにちは。初期設定最高!

音というのは、聞き慣れると「音として認識されなくなる」 んです。電車のアナウンス、職場の電話、冷蔵庫の警告音。毎日聞いていると、やがて「聞こえているけど処理していない」状態になる。これを心理学では「馴化(じゅんか)」と言います。これ自体は脳の合理的な省エネ機能なのですが、困ったことに、絶対に聞き流してはいけない音にも同じことが起きます。その代表が、緊急地震速報の音です。

この記事でわかること
こんな人におすすめ!
  • 緊急地震速報が鳴るたびに「で、何すればいいの?」となる方
  • 速報が鳴っても結局何もできないまま揺れ始めた経験がある方
  • 「知っているけど体が動かない」を解消したい方

緊急地震速報の仕組みと「猶予時間」の現実

まず、緊急地震速報が「なぜ揺れる前に届くのか」を理解しておきましょう。

地震が発生すると、震源から2種類の揺れが広がります。

P波(初期微動)

速度:秒速約6〜7km。伝わるのが速いが、揺れは小さい。気象庁の地震計がまずこれを検知する。

S波(主要動)

速度:秒速約3〜4km。P波より遅いが、実際の大きな揺れの原因はこちら。

緊急地震速報が鳴る仕組み。P波とS波の伝わり方を図にしたもの。出典:気象庁「緊急地震速報のしくみ」

(画像出典:気象庁「緊急地震速報の仕組み」)

気象庁は、全国に設置された地震計がP波を検知した瞬間に揺れの大きさ・到達時刻を計算し、S波(本震)が届く前にアラートを発信します。これが緊急地震速報の仕組みです(気象庁)。P波とS波の速度差を利用した「お知らせ」なので、震源から遠いほど猶予時間は長くなります。逆に震源に近いほど猶予時間は短く、場合によってはほぼゼロです。

内陸で起こる直下型地震では「速報より先に揺れが来る」可能性も
2016年の熊本地震(最大震度7)や、2024年の能登半島地震でも、震源に近い地域では緊急地震速報が届く前にすでに強い揺れが始まった地域がありました。南海トラフ地震は震源が海底なので比較的猶予がある可能性がありますが、直下型地震は油断できません。

猶予時間別:何秒で何をするか

猶予時間によって取れる行動は異なります。「考えてから動く」ではなく「鳴った瞬間に体が動く」ために、以下を頭に入れておいてください。

猶予 〜5秒:頭を守ることだけ考える

クッション・バッグ・腕で頭を覆い、その場でうずくまる。移動しようとするより、命を守ることが最優先です。

猶予 5〜10秒:頭を守る+火を消す

コンロの火を消す。ガスの元栓まで行く余裕はほぼないので、手の届く範囲の火だけ消す。その後すぐ頭を守る体勢へ。

猶予 10〜30秒:安全な場所に移動する

窓・ガラス・本棚・タンスから離れる。テーブルの下・廊下・壁際など落下物の少ない場所へ移動する。出口(ドア)を開けておくと脱出しやすくなります。

猶予 30秒以上:避難の準備をする

靴を履く(ガラスで足を切らないため)。防災ポーチ・防災リュックを手元に置く。エレベーターを使っている場合は最寄りの階で降りる。

「火を消す」は本当に必要?
現代のガスコンロは震度5程度で自動消火する機能がついているものが多いです。ただし自動消火機能のないコンロや電気コンロの場合は手動で消す必要があります。まず自分のコンロの仕様を確認しておくと安心です。なお、大きな揺れが収まった後に電気の復旧によるガス漏れ引火(通電火災)が起きるケースがあるため、外出時はブレーカーを切っておくことも重要です。

場所別・状況別の行動マニュアル

速報が鳴る場所はいつも自室とは限りません。授業中・通学中・バイト先——場所によって取るべき行動は変わります。

自室・建物の中にいるとき
やること
頭を守る(クッション・バッグ・腕)→ テーブルの下・壁際へ → コンロの火を消す(手が届けば)→ 出口のドアを開けておく
やってはいけないこと
あわてて外へ飛び出す(落下物・倒壊物に当たる危険)、揺れている最中にエレベーターを使う

靴は手の届く場所に置いておきましょう。ガラスで足を切るのを防ぎます。

教室・図書館・オフィスにいるとき
やること
机の下に潜る(机の脚をしっかり持つ)→ 窓・本棚から距離をとる → 揺れが収まったら職員の指示に従う
やってはいけないこと
荷物をまとめようとする、窓の近くに留まる
屋外・街中を歩いているとき
やること
建物・塀・電柱・看板から離れる → 広い場所へ移動 → バッグ・腕で頭を守りながらしゃがむ
やってはいけないこと
建物の壁際に密着する(外壁タイルが落ちてくる)

ブロック塀や自動販売機の近くも危険です。倒れてくることがあります。

電車・バスに乗っているとき
やること
つり革・手すりをしっかり握る → 姿勢を低くして頭を守る → 揺れが収まるまで車内に留まる
やってはいけないこと
走行中に無理に降りようとする、ドアを自分で開けようとする

電車は緊急停止します。急ブレーキに備えて体勢を低くしておきましょう。

車を運転しているとき
やること
ハザードランプを点灯 → 急ブレーキを踏まず徐々に減速 → 道路の左側に停車 → エンジンを切りキーをつけたまま(または鍵穴に残したまま)車内で待機
やってはいけないこと
急ブレーキ(後続車との追突事故リスク)、橋の上や高架下・トンネル出口での停車
エレベーターに乗っているとき
やること
全ての階のボタンを押す → 最初に止まった階で降りる → 壁に背中をつけて姿勢を低くする
やってはいけないこと
エレベーターのドアを無理にこじ開ける

閉じ込められた場合は「開」ボタンや非常用ボタンを長押しし、インターホンで救助を求めましょう。

「体が動く」状態を作るための事前準備

行動マニュアルを読んでも「いざとなると頭が真っ白になる」という方は多いです。それは知識が行動に結びついていないから。以下の3つの事前準備が「体が動く」状態を作ります。

準備1:今いる部屋のリスクを把握する

今いる場所で「速報が鳴ったら最初に何をするか」を考えてみましょう。落ちてくるものはないか、頭を守れる場所はどこか、出口はどこか。これを普段からやっておくことで、いざというとき体が自然に動きます。

準備2:家具の固定・室内の安全化

家具が倒れてこない部屋を作ることが、猶予時間の長短に関わらず命を守る最強の対策です。

あわせて読みたい
震度5強で、家具が凶器になる−高校生・大学生も今日からできる、コスパ最強の地震対策
家具の地震対策に関する詳細はこちら
準備3:スマホの緊急速報設定を確認する

緊急地震速報はスマホのシステム設定でオン・オフが切り替えられます。「通知音がうるさい」などの理由でオフにしている方はいませんか?命に関わる設定なので、今すぐ確認してください。

設定確認方法(機種によって異なる場合があります)
iPhone:設定 → 通知 → 緊急速報をオン
Android:設定 → 安全性と緊急情報 → 緊急速報メールをオン
「正しい知識」より「繰り返した行動パターン」が命を救う
防災研究でも繰り返し示されていることですが、災害時の行動は「その場で考えること」ではなく「事前に身につけた行動パターン」に支配されます(矢守, 2011)。つまり、このページを読んだだけでは不十分で、頭の中でシミュレーションすることが必要です。「今、速報が鳴ったら何をするか」を今この瞬間、一度だけ思い浮かべてみてください。それだけで、何もしないよりはるかに効果があります。

まとめ:「考えてから動く」ではなく「動きながら考える」

緊急地震速報が鳴ってから「さて何をしようか」と考え始めると、数秒のうちに揺れが来ます。「考えてから動く」のではなく「鳴ったら即動く」ための準備が、今日の記事の本質です。

今回のポイントまとめ
  • 速報の猶予時間は震源距離によって「ほぼゼロ〜数十秒」まで幅がある
  • 猶予5秒以内:頭を守ることだけ。それ以外は考えない
  • 場所ごとの行動(屋内・屋外・電車・車)を事前にシミュレーションする
  • 家具の固定・スマホの速報設定確認は「今すぐできる」最重要準備

「ちょっと防災」、今日から始めてみてください。

サトウ先生アイコン

Author

サトウ先生|博士(工学) / 防災士
京都光華女子大学 社会学部 社会共創学科
「専門知識を、わかりやすく身近に。」これまで数々の自然災害を目の当たりにしてきた実体験をもとに、防災に関する大学での講義や地域での講演を行っている。南国出身のため雪にはとっても不慣れで、京都での最大の災難は大雪のときに滑ったことだと思っている。摩擦係数の計算は得意だが、雪道の滑りやすさは計算外だった。だが、その失敗さえも防災の教訓に変えてしまうのが私のスタイルだ。実に面白い。
本ブログの趣旨と免責事項

このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
実際の災害時は現場の状況に応じた柔軟な判断が求められます。記事に含まれる情報の活用は読者の皆様の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。また、記事の内容は大学の公式な見解や推奨を意味するものではありません。なお、記事に含みうる誤りに関する一切の責任は筆者に帰属します。

参考・出典
一覧に戻る