2026.03.22 ぼうさいらぼ

「避難勧告」は廃止されたのを知っていますか?:新しい5段階の警戒レベルを正しく理解する

少し前までニュースで流れていた「避難勧告」、最近聞かないなと思った方はいませんか?そうなんです、現在では避難勧告は廃止されているんです。

わたし、仕事をいろいろとやっているので、職業柄?ウェブサイトのドメイン(○○.comみたいなの)を管理することが多いんですね。新しくウェブサイトを立ち上げることもあれば、サービスが終了するサイトもある訳で。ドメインを廃止する場合は契約更新をしない設定にするんですが、そのときわりと早めの段階からドメイン管理会社から「契約更新のお知らせ」メールが来るんです。放置していると次第に口調が厳しくなっていって、「注意!」だったり「警告!」の文字が入ってきて。この間はハガキまで来ていました(笑)。でもクライアントの意向なのでどうしようもないサトウですこんにちは。管理会社の中の人、気持ちはわかるよ……。

管理会社からたくさんの連絡が来るのは、「大事なメールだと思わなかった」と見過ごしたことによってドメインを失ってしまうトラブルが非常に多いからでしょうね。一瞬の「見過ごし」が致命的な損失につながってしまいます。災害時の避難情報も同じです。「まだ勧告だから大丈夫」という勝手な解釈が、かつて多くの命を奪ってきました。この記事では、2021年に刷新された「避難情報」の新しい仕組みをわかりやすく整理します。

この記事でわかること
こんな人におすすめ!
  • 「避難勧告」「避難指示(緊急)」という言葉を今でも使っている方
  • 警戒レベルの意味をざっくりしか知らない方
  • 水害・台風に備えたい方

なぜ「避難勧告」は廃止されたのか

2021年5月、災害対策基本法の改正により「避難勧告」が廃止され、「避難指示」に一本化されました。

廃止の最大の理由は、住民の「行動の遅れ」です。

「避難勧告」と「避難指示(緊急)」は、もともと危険度が異なる2段階の情報でした。しかし、「避難勧告」が出ても「まだ避難指示(緊急)ではないから大丈夫」と判断して動かない住民も多くいました。2段階あるぶんだけ、最初の方を「猶予の信号」として受け取ってしまったのです。これも正常性バイアスの一種ですね。そこで「勧告」を廃止し、「避難指示」に一本化することで「出たら全員動く」という明確なメッセージに変えました。

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新しい「警戒レベル」5段階の全体像

現在の避難情報は「警戒レベル1〜5」の5段階で構成されています。レベルが上がるほど危険度が高くなります。

警戒レベル 1 発令主体:気象庁
今後、気象状況が悪化する可能性がある
ハザードマップを確認するなど、災害への心構えを高める
→「何か来るかもしれない」準備フェーズ
警戒レベル 2 発令主体:気象庁
大雨・洪水・高潮注意報が発表された
避難に備え、ハザードマップ・避難場所・避難経路を再確認する
→「そろそろ意識を向ける」フェーズ
警戒レベル 3 高齢者等避難 発令主体:市区町村
災害発生のリスクが高まっている
高齢者・障害者・乳幼児・妊婦など避難に時間がかかる方は避難する。それ以外の方も避難の準備を整え、自主的な避難を検討する
→「逃げ始める」フェーズ
警戒レベル 4 避難指示 発令主体:市区町村
災害のおそれが高い
危険な場所から「全員」立ち去る。避難所に行くことだけが避難ではありません。この段階で「危険な場所に留まる」という選択肢をなくしてください
→「全員動く」フェーズ
警戒レベル 5 緊急安全確保 発令主体:市区町村
すでに災害が発生・切迫している
命の危険が迫っている。避難所への移動が危険な場合は、その場でできる限り安全を確保する(上の階へ移動、近くの頑丈な建物へ)
→「逃げること自体が危険になる」フェーズ。レベル5まで待ってはいけません
重要な注意点
レベル5「緊急安全確保」は「発令されたら安全に避難できる」タイミングではありません。すでに災害が起きている段階です。必ずレベル4「避難指示」の段階で行動してください。レベル5になってから動こうとするのは非常に危険です。

「警戒レベル3で動く」人が命を守る

先述の通り、レベル4「避難指示」が最重要の行動トリガーです。しかし、できればレベル3「高齢者等避難」の段階で動き出すことが理想です。

理由は3つあります。

まだ余裕があるうちに移動できる(渋滞・混雑が起きる前)
暗くなる前に移動を完了できる可能性が高い
体力・判断力が余っている状態で避難できる
「レベル3は自分には関係ない(高齢者じゃないから)」と思っている方、そうではありません。「高齢者等避難」という名称ですが、それ以外の方も自主的な避難を検討する段階として設定されています(内閣府, 2021)。

「避難情報」を日常的に受け取るための準備

警戒レベルを知っていても、情報が届かなければ意味がありません。以下の3つを今すぐ確認してください。

1
スマホの緊急速報メール設定をオンにする

警戒レベル3以上の避難情報は、対象地域のスマートフォンに緊急速報メールで配信されます。設定がオフになっていると届きません。

  • iPhone:設定 → 通知 → 緊急速報をオン
  • Android:設定 → 安全性と緊急情報 → 緊急速報メールをオン
2
自治体の防災情報に登録する

多くの自治体では、LINEや専用アプリ・メール登録で避難情報を配信しています。「お住まいの自治体名+防災情報メール」で検索して登録しておきましょう。

参考(京都市の例):京都市防災ポータルサイト

3
ハザードマップで「自分の家の警戒エリア」を把握する

警戒レベルへの対応は「自分の家がハザードリスクのあるエリアかどうか」によって変わります。事前にハザードマップで自宅の状況を確認しておきましょう。

→ ハザードマップポータルサイト(国土交通省)

まとめ

今回のポイント
  • 「避難勧告」は2021年に廃止。今は「避難指示」に一本化されている
  • 警戒レベルは1〜5の5段階。レベル4「避難指示」で全員が行動する
  • レベル5「緊急安全確保」まで待ってはいけない。レベル4で動く
  • できれば「レベル3」の段階で動き始めるのが理想
  • 緊急速報の設定・自治体防災情報の登録を今日確認する

防災の知識は「最新版」を使うことが大切です。古い情報のまま「避難勧告が出たからまだ大丈夫」と判断しないために、今日この記事を読んだことを誰かに話してみてください。それだけで、あなたの周りの防災レベルが少し上がります。

「ちょっと防災」、今日から始めてみてください。

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Author

サトウ先生|博士(工学) / 防災士
京都光華女子大学 社会学部 社会共創学科
「専門知識を、わかりやすく身近に。」これまで数々の自然災害を目の当たりにしてきた実体験をもとに、防災に関する大学での講義や地域での講演を行っている。南国出身のため雪にはとっても不慣れで、京都での最大の災難は大雪のときに滑ったことだと思っている。摩擦係数の計算は得意だが、雪道の滑りやすさは計算外だった。だが、その失敗さえも防災の教訓に変えてしまうのが私のスタイルだ。実に面白い。
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このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
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参考・出典
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