2026.02.18 ぼうさいらぼ

「震度5.3」は合ってる?間違い?|ニュースで発表される震度が決まる仕組みをわかりやすく解説します

地震の震度の決め方や仕組みを正しく理解していますか?

SNSで「『1時間弱』の意味を間違えている若者がいる!」と話題でした。「弱」を「ちょっとプラス」だと思っている人が増えているとか。
言葉の使い方は時代とともに変わっていくこともありますよね。その投稿を見て、大学で「『いとをかし』は現代で言う『エモい』に近いんだよ」なんて話をしたことを思い出しました。平安時代にタイムスリップして使ってみたい衝動に駆られているサトウですこんにちは。いとエモし。

でも、言葉の定義のズレは地震の話になると変わっていくのも仕方ない、では済みません。
「1時間弱」が1時間に届かないのと同じで、震度6弱も「6には届かない強さ」なんです。
かつては気象庁の職員が「体感」で決めていたという震度の判定方法の歴史と、ニュースが報じない「計測震度(0.1単位の数値)」を5分でわかりやすく解説します。

この記事でわかること
こんな人におすすめ!
  • 「震度6弱って、震度5.9みたいな感じ?」と思ったことがある方
  • 地震速報が出るまでの仕組みが気になる方
  • 震度に関する記事を読んで「もっと知りたい」と思った方

ちょっと前まで震度は人間の「体感」で決めていた

現在の震度は機械(計測震度計)が自動で計算していますが、これが始まったのは1996年(平成8年)4月のことです。

参考:気象庁「震度について」

では1996年より前はどうしていたかというと、

気象庁の職員が、自分の体感と周囲の被害状況を見て、「これは震度◯だろう」と判断していた
震度を判定する職員

明治17年(1884年)に気象庁が地震の震度観測を始めて以来、実に112年間にわたって、人間の体感と目視で震度を決めていたんです。当時の問題点は大きく2つありました。

問題(1):観測できる場所が限られていた

体感で決めていた時代は、職員がいる気象台・測候所でしか震度を観測できませんでした。それ以外の地域では、後から現地調査を行い、建物の被害状況や住民への聞き取りをもとに推定していたのです。

問題(2):震度7の発表に数日かかった

1948年の福井地震(マグニチュード7.1)の発生を機に、翌1949年に新たに設けられた震度7。その判定は「家屋の倒壊率が30%以上」という基準を現地で調査してから決める決まりだったため、大きな地震が起きると現地調査が終わるまで発表できませんでした。

体感で震度を決めていた時代に震度7が適用された唯一の地震が1995年の阪神淡路大震災です。地震発生が1月17日でしたが、発災当初の発表だった震度6(当時の階級による)を訂正し震度7を適用することが発表されたのは地震から3日後の1月20日のことでした。

参考:内閣府「阪神・淡路大震災教訓情報資料集 震災後の主な動き(年表)」

救助が最も必要なタイミングで、どこが最も被害を受けているかわからない——阪神淡路大震災の発生を契機に、翌1996年の計測震度計へ移行が進みました。

1996年から「機械が計測する」仕組みになった

阪神淡路大震災の翌年、1996年4月に気象庁は体感による観測から計測震度計による自動観測に移行しました。同時に、震度5と震度6にそれぞれ「弱」「強」の区分が追加され、現在の10段階(震度0〜7)になりました。

参考:気象庁「震度について」

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震度表はこちらの記事でご確認ください

現在、全国には気象庁・地方公共団体・防災科学技術研究所(防災科研)が設置した約4,000か所以上の震度計があります。

参考:気象庁「震度観測点」

震度はどうやって決まるのか

機械で計測するといっても、地面の揺れをそのまま「震度5強」と表示しているわけではありません。震度計が記録した揺れのデータを一定の手順で計算し「計測震度」という数値を算出します。その計測震度を震度階級の表に当てはめることで「震度5強」などの階級が決まります。

参考:気象庁「計測震度の算出方法」

ここが大事!

計測震度は小数点第1位まである数値です。つまり「5.0」「5.1」「5.2」「5.3」……という細かい数値が実際に計算されています。ニュースでは「震度5強」という階級しか報じられませんので、計測震度という言葉自体、あまり馴染みがないですよね。次のセクションでその関係を整理します。

計測震度とニュースで発表される震度の関係

ここで冒頭の伏線を回収します。

「1時間弱」の話を覚えていますか?
一般的な意味は「1時間より少し短い時間」でしたね。

では「震度6弱」は、計測震度ではどのくらいだと思いますか?

「6弱と言っても震度6に違いはないから、計測震度は少なくとも6以上なのでは?」「1時間弱の例で出た『若い人』の考え方、こっちだと合ってる?」

と思った方が多いのではないでしょうか。(私も昔はそう思っていた)でも実は違うんです!

計測震度と、ニュースで発表される震度階級の対応はこのようになっています。

計測震度 0.5未満 震度0
計測震度 0.5以上 1.5未満 震度1
計測震度 1.5以上 2.5未満 震度2
計測震度 2.5以上 3.5未満 震度3
計測震度 3.5以上 4.5未満 震度4
計測震度 4.5以上 5.0未満 震度5弱
計測震度 5.0以上 5.5未満 震度5強
計測震度 5.5以上 6.0未満 震度6弱
計測震度 6.0以上 6.5未満 震度6強
計測震度 6.5以上 震度7

参考:気象庁「計測震度の算出方法」

この表によると、震度6弱のときの計測震度は「5.5以上6.0未満」になっていますね。つまり計測震度は6を少し下回る値——まさに「1時間弱」と同じ考え方が当てはまります。

上の表を素直に読むと、仮に震度6が存在した場合は計測震度5.5以上6.5未満なので、震度6弱と震度6強は「四捨五入して6となる範囲を2つに分割した」と解釈する方が正確でしょうね。でもここでは震度6弱は「6+ちょっとではない」ということをわかりやすく伝えることを重視しています。

「震度6弱って、震度5.9みたいな感じ?」と思っていた方、5.9が計測震度のことを言っているのであれば合っています。自信を持ってください。

そして「震度5.3」はどうでしょう。表を見ると、計測震度5.0以上5.5未満は「震度5強」ですね。
つまり「震度5.3」は実在する計測震度であり、タイトルの答えは「合ってる」ですね。ただしニュースでは「震度5強」として発表されます。

画像出典:内閣府(2025).「南海トラフ巨大地震の被害想定項目及び手法の概要」

また、全壊率曲線のグラフの横軸は計測震度を使って描かれています。「震度5強(グラフの横軸が5.0〜5.5の区間)」という説明で「?」となった方、この表を見るとスッキリするはずです。

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おまけ:これまでに観測された計測震度の最大値

震度7の地震はこれまでに7回記録されています。では計測震度が最も大きかったのはどの地震でしょうか?

正解は……

最大計測震度を記録した地震
平成28年熊本地震
2016年4月16日発生
最大計測震度:6.7
観測点:熊本県上益城郡益城町宮園

出典:福岡管区気象台・佐賀地方気象台(2016).「『平成28年(2016年)熊本地震』について」

マグニチュードで評価すると日本最大はやはり東日本大震災ですが、熊本地震で最大計測震度が観測されたのは局地的な地盤の影響などが大きいとされています。

ちなみに、もし「震度7強」あるいは「震度8」という階級を作るとしたら計測震度7.0以上が対応するはずですが、震度計による観測の歴史ではそのような地震はまだ観測されていないこと、震度7でも最大級の災害対策が取られることなどが、震度7より上の階級が設けられない理由でもあります。

まとめ

今回のポイント
  • 震度を機械で観測し始めてからまだ約30年しか経っていない
  • 震度計から得られたデータによって計算される「計測震度」は小数点第1位まである
  • 「(計測)震度5.3」は実在する。ニュースでは「震度5強」として発表される
  • 「震度6弱」の計測震度は5.5以上6.0未満:「1時間弱」と同じ考え方

改めて考えると、震度を体感で決めていた時代の方はすごいですね。適当なサトウには務まらない仕事です。「適当なサトウ」、思いがけず韻が踏めたことでうまく締められそうです。本当にありがとうございました。

震度に詳しくなったら行動も見直そう

知識と同じくらい大事なのは行動ですよ!

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思い立ったが吉日。
今日から「ちょっと防災」始めてみてください。

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Author

サトウ先生|博士(工学) / 防災士
「専門知識を、わかりやすく身近に。」これまで数々の自然災害を目の当たりにしてきた実体験をもとに、防災に関する大学での講義や地域での講演を行う。南国出身のため雪にはとっても不慣れで、京都での最大の災難は大雪のときに滑ったことだと思っている。摩擦係数の計算は得意だが、雪道の滑りやすさは計算外だった。だが、その失敗さえも防災の教訓に変えてしまうのが私のスタイルだ。実に面白い。
免責事項

この記事は著者の研究・教育成果をもとに作成したものです。大学の公式な見解や推奨を意味するものではありません。防災には現場の状況に応じた判断が必要です。記事に含まれる情報の活用は、読者ご自身の責任において行っていただきますようお願い申し上げます。なお、記事に含みうる誤りに関する一切の責任は筆者に帰属します。

参考・出典

気象庁「震度について」
気象庁「計測震度の算出方法」
気象庁「気象庁震度階級関連解説表」
気象庁「震度観測点」
内閣府「阪神・淡路大震災教訓情報資料集 震災後の主な動き(年表)」
内閣府(2025).「南海トラフ巨大地震の被害想定項目及び手法の概要」
福岡管区気象台・佐賀地方気象台(2016).「『平成28年(2016年)熊本地震』について」

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