地震の震度の決め方や仕組みを正しく理解していますか?
SNSで「『1時間弱』の意味を間違えている若者がいる!」と話題でした。「弱」を「ちょっとプラス」だと思っている人が増えているとか。
言葉の使い方は時代とともに変わっていくこともありますよね。その投稿を見て、大学で「『いとをかし』は現代で言う『エモい』に近いんだよ」なんて話をしたことを思い出しました。平安時代にタイムスリップして使ってみたい衝動に駆られているサトウですこんにちは。いとエモし。
でも、言葉の定義のズレは地震の話になると変わっていくのも仕方ない、では済みません。
「1時間弱」が1時間に届かないのと同じで、震度6弱も「6には届かない強さ」なんです。
かつては気象庁の職員が「体感」で決めていたという震度の判定方法の歴史と、ニュースが報じない「計測震度(0.1単位の数値)」を5分でわかりやすく解説します。
- 「震度6弱って、震度5.9みたいな感じ?」と思ったことがある方
- 地震速報が出るまでの仕組みが気になる方
- 震度に関する記事を読んで「もっと知りたい」と思った方
ちょっと前まで震度は人間の「体感」で決めていた
現在の震度は機械(計測震度計)が自動で計算していますが、これが始まったのは1996年(平成8年)4月のことです。
参考:気象庁「震度について」)
では1996年より前はどうしていたかというと、
明治17年(1884年)に気象庁が地震の震度観測を始めて以来、実に112年間にわたって、人間の体感と目視で震度を決めていたんです。当時の問題点は大きく2つありました。
体感で決めていた時代は、職員がいる気象台・測候所でしか震度を観測できませんでした。それ以外の地域では、後から現地調査を行い、建物の被害状況や住民への聞き取りをもとに推定していたのです。
1948年の福井地震(マグニチュード7.1)の発生を機に、翌1949年に新たに設けられた震度7。その判定は「家屋の倒壊率が30%以上」という基準を現地で調査してから決める決まりだったため、大きな地震が起きると現地調査が終わるまで発表できませんでした。
体感で震度を決めていた時代に震度7が適用された唯一の地震が1995年の阪神淡路大震災です。地震発生が1月17日でしたが、発災当初の発表だった震度6(当時の階級による)を訂正し震度7を適用することが発表されたのは地震から3日後の1月20日のことでした。
参考:内閣府「阪神・淡路大震災教訓情報資料集 震災後の主な動き(年表)」)
1996年から「機械が計測する」仕組みになった
阪神淡路大震災の翌年、1996年4月に気象庁は体感による観測から計測震度計による自動観測に移行しました。同時に、震度5と震度6にそれぞれ「弱」「強」の区分が追加され、現在の10段階(震度0〜7)になりました。
参考:気象庁「震度について」)
|
あわせて読みたい
「震度10」は存在しないが「10段階目の震度」は存在する!? ー「震度」を正しく理解してあなたの命を守る方法をわかりやすく解説します 震度表はこちらの記事でご確認ください
|
現在、全国には気象庁・地方公共団体・防災科学技術研究所(防災科研)が設置した約4,000か所以上の震度計があります。
参考:気象庁「震度観測点」)
震度はどうやって決まるのか
機械で計測するといっても、地面の揺れをそのまま「震度5強」と表示しているわけではありません。震度計が記録した揺れのデータを一定の手順で計算し「計測震度」という数値を算出します。その計測震度を震度階級の表に当てはめることで「震度5強」などの階級が決まります。
計測震度は小数点第1位まである数値です。つまり「5.0」「5.1」「5.2」「5.3」……という細かい数値が実際に計算されています。ニュースでは「震度5強」という階級しか報じられませんので、計測震度という言葉自体、あまり馴染みがないですよね。次のセクションでその関係を整理します。
計測震度とニュースで発表される震度の関係
ここで冒頭の伏線を回収します。
「1時間弱」の話を覚えていますか?
一般的な意味は「1時間より少し短い時間」でしたね。
では「震度6弱」は、計測震度ではどのくらいだと思いますか?
「6弱と言っても震度6に違いはないから、計測震度は少なくとも6以上なのでは?」「1時間弱の例で出た『若い人』の考え方、こっちだと合ってる?」
と思った方が多いのではないでしょうか。(私も昔はそう思っていた)でも実は違うんです!
計測震度と、ニュースで発表される震度階級の対応はこのようになっています。
| 計測震度 0.5未満 | 震度0 |
| 計測震度 0.5以上 1.5未満 | 震度1 |
| 計測震度 1.5以上 2.5未満 | 震度2 |
| 計測震度 2.5以上 3.5未満 | 震度3 |
| 計測震度 3.5以上 4.5未満 | 震度4 |
| 計測震度 4.5以上 5.0未満 | 震度5弱 |
| 計測震度 5.0以上 5.5未満 | 震度5強 |
| 計測震度 5.5以上 6.0未満 | 震度6弱 |
| 計測震度 6.0以上 6.5未満 | 震度6強 |
| 計測震度 6.5以上 | 震度7 |
この表によると、震度6弱のときの計測震度は「5.5以上6.0未満」になっていますね。つまり計測震度は6を少し下回る値——まさに「1時間弱」と同じ考え方が当てはまります。
「震度6弱って、震度5.9みたいな感じ?」と思っていた方、5.9が計測震度のことを言っているのであれば合っています。自信を持ってください。
つまり「震度5.3」は実在する計測震度であり、タイトルの答えは「合ってる」ですね。ただしニュースでは「震度5強」として発表されます。

画像出典:内閣府(2025).「南海トラフ巨大地震の被害想定項目及び手法の概要」
また、全壊率曲線のグラフの横軸は計測震度を使って描かれています。「震度5強(グラフの横軸が5.0〜5.5の区間)」という説明で「?」となった方、この表を見るとスッキリするはずです。
|
あわせて読みたい
「震度10」は存在しないが「10段階目の震度」は存在する!? ー「震度」を正しく理解してあなたの命を守る方法をわかりやすく解説します 建物倒壊対策・ハザードマップの確認方法はこちら
|
おまけ:これまでに観測された計測震度の最大値
震度7の地震はこれまでに7回記録されています。では計測震度が最も大きかったのはどの地震でしょうか?
正解は……
| 平成28年熊本地震 2016年4月16日発生 |
最大計測震度:6.7 観測点:熊本県上益城郡益城町宮園 |
出典:福岡管区気象台・佐賀地方気象台(2016).「『平成28年(2016年)熊本地震』について」
マグニチュードで評価すると日本最大はやはり東日本大震災ですが、熊本地震で最大計測震度が観測されたのは局地的な地盤の影響などが大きいとされています。
まとめ
- 震度を機械で観測し始めてからまだ約30年しか経っていない
- 震度計から得られたデータによって計算される「計測震度」は小数点第1位まである
- 「(計測)震度5.3」は実在する。ニュースでは「震度5強」として発表される
- 「震度6弱」の計測震度は5.5以上6.0未満:「1時間弱」と同じ考え方
改めて考えると、震度を体感で決めていた時代の方はすごいですね。適当なサトウには務まらない仕事です。「適当なサトウ」、思いがけず韻が踏めたことでうまく締められそうです。本当にありがとうございました。
震度に詳しくなったら行動も見直そう
知識と同じくらい大事なのは行動ですよ!
建物の倒壊対策やハザードマップを確認したい方はこちら
|
あわせて読みたい
「震度10」は存在しないが「10段階目の震度」は存在する!? ー「震度」を正しく理解してあなたの命を守る方法をわかりやすく解説します 建物倒壊対策・ハザードマップの確認方法はこちら
|
あなたの家にある家具の地震対策を行いたい方はこちら
|
あわせて読みたい
震度5強で、あなたの部屋にある「アレ」が凶器になる。ー 賃貸でも今日からできる、コスパ最強の地震対策 家具の転倒防止・固定方法はこちら
|
思い立ったが吉日。
今日から「ちょっと防災」始めてみてください。
この記事は著者の研究・教育成果をもとに作成したものです。大学の公式な見解や推奨を意味するものではありません。防災には現場の状況に応じた判断が必要です。記事に含まれる情報の活用は、読者ご自身の責任において行っていただきますようお願い申し上げます。なお、記事に含みうる誤りに関する一切の責任は筆者に帰属します。
