京都光華女子大学 短期大学部 ライフデザイン学科 ニュース ベトナム人学生Mさんの質問 「日本では、どうして会社をやめる女性がいるの?」 〜「女性が働く、ということ」を考える授業から〜

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ベトナム人学生Mさんの質問 「日本では、どうして会社をやめる女性がいるの?」 〜「女性が働く、ということ」を考える授業から〜

みなさん、お元気ですか?

ライフデザイン学科1年生必修科目「社会を知る」担当の脇田哲志です。

いまこの授業では、「女性が働く、ということ」を、学生のみなさんとともに考えています。

先日の授業で学んだのが、下のグラフ。女性が何歳のころにどれくらいの人が働いているか、を示していますが、その形から「M字カーブ」と呼ばれてきました。この40年ほどで、その形は大きく変化してきましたが、出産・育児の時期に、女性の就業率が下がる傾向が依然として見られています(図1)。



そして、子育てが一段落した女性が再就職しようとしたとき、その大部分が「正社員」にはなれずに、正社員と比べて賃金の低いパートやアルバイトなどの「非正規労働」となっていることがわかります(図2)。



そのため、働く女性のなかで「非正規労働」の比率は、男性に比べてかなり高く、その結果、男女の賃金格差は、なかなか縮まらない・・・という、女性に厳しい現状を学びました(図3)。「男女雇用機会均等法」ができて35年経った日本の現実です。



そこで、ベトナムからの留学生Mさんから、授業のあと、質問が寄せられました。

「ベトナムでは、出産や育児があっても退職せず、産休の後、もとの仕事に戻ります。なぜ日本の女性は、結婚後に退職したり、妊娠・出産で仕事をやめたりするのか、私、本当に理解できません。どうしてやめてしまうのですか?」

Mさんからは、ベトナムの男女別の就業率のグラフも送ってくれました。それが下のグラフです(図5)。日本(図4)と比べると、違いははっきりしていますね。

 


そこで、私からMさんに質問をしてみたところ、次のような説明をもらいました。



ベトナムでは女性が男性と同じように、ずっと働き続けるのはどうしてですか?

ベトナムでは、一人の収入で家族を支えるのは困難なので、夫婦は共働きです。結婚しても働き続けるべきです。ベトナムには、子供達が結婚しても、両親と同居が多いという伝統があります(特に家計が豊かでない場合)。そのため、出産後、祖父母から子供のお世話の援助を得ることができます。

多くの場合、カップルは子供を産む計画を立てています。女性は出産後、約5か月の休暇を経て、会社に戻って働き続けます。カップルは、出産前に、子供の世話をする方法を決めます。普通、家庭の経済が安定したら、子供を持つことを決めます。祖父母の助けが得られない場合は、子供を保育園に預けたり、ベビーシッターを雇ったりなどします。仕事を辞めて、仕事に戻らない女性の割合はかなり低いです。

保育所・幼稚園が整っている日本では、なぜ親は子供を保育園などに預けて働き続けないのでしょうか。

女性が働き続けられるように、ベトナムでは保育所などが整っているのでしょうか?

保育所などは、整っています。でもほとんどが私立です。なので、ベトナムの若い夫婦の多くは、両親の手伝いを求めます。あるいはベビーシッターを雇います。


このMさんからの説明を、さっそく次の授業で、学生のみなさんに紹介しました。

すると、日本人の学生たちから、さまざまな反応がありました。

その一部を紹介しましょう。

「日本では、子育ては母親の仕事という考えの人が多く、女性が仕事に復帰しづらい。そのため女性が仕事に戻っても非正規の仕事となり、男女の賃金格差。悲しい」「産休したいというと上司にいやな顔をされるかも。働きやすい環境を作って欲しい」「出産後に、もとの仕事に復帰するには、待機児童の問題をなくすなど、制度の整備が必要だ」「正社員になるために、就活がんばる」

まさに、現代の働く日本女性が直面する「社会の課題」が、次々と浮かび上がってきました。

わたしからは、そのような「女性が働きやすい社会」を作るのも、社会の一員であるみなさんが、どんな社会が望ましいかをしっかり考え、行動することから始まる、と話しました。

この授業のあと、ある学生からは、
「Mさんがベトナム女性の労働の状況を詳しく説明してくれたのを見て、もっといろんな国のことが知りたくなりました」というコメントが寄せられました。

留学生のクラスメイトがいることで、みんなの視野がどんどん広がっていくようです。