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2026.05.06 専門分野コラム異性装は昔のハロウィン!?ユネスコ指定の「近江湖南のサンヤレ踊り」の着付けに行ってきました!
こんにちは!ファッション分野担当の仲村恭子です。
今日は、ユネスコ無形文化財に指定されている「近江湖南のサンヤレ踊り」の着付けのお手伝いに行ってきました!
毎年5月5日に古代豪族・小槻山君の一族ゆかりの小槻大社で行われる「小杖祭り」。
2022年11月30日には、この祭礼を含む草津の7地域につたわる祭りが「近江湖南のサンヤレ踊り」として、ユネスコ無形文化遺産に登録されています。
そもそもサンヤレ踊りとは?と思われた方も多いでしょう。
サンヤレ踊りは、独特の囃子詞はやしことばを伴う風流踊(注)の一種です。美しく装った子どもたちや青年たちが、太鼓などの楽器で単純なリズムを奏しながら簡単な所作で踊ります。
扇子やうちわなどを持った子どもたちが、これを取り囲んで「サンヤレ サンヤレ」と囃し歌います。
災いを祓うとともに五穀豊穣などの願いをこめて、市内各地の神社祭礼で踊られてきました。室町時代に都で流行した疫病払いの風流囃子物をいまに伝えるものです。
「サンヤレ」という言葉の語源は分かっていませんが、「幸あれ」という意味だとも言われています。
さて、今日の本題「小杖祭り」です。
1382年にはすでに奉納されていたと伝えられ、ユネスコに登録前の1988年には、すでに滋賀県の無形民俗文化財にも選択されていました。
この「小杖祭り」は小槻大社の周辺6集落が持ち回りで祭礼を行うことになっています。
その年の当番は「渡し番」と呼ばれ、干支の12年を一巡する形で以下のように、各地域ごとに決められています。
川辺(申・卯)坊袋(未・丑)目川(辰・戌)岡・宮ヶ尻(亥・巳・寅)山寺(子、酉、午)
今年は午年なので、山寺町の方々が渡し番となります。
この祭礼行事の一つに「花笠踊り」というものがあります。これは、子役として2歳から14歳までの子ども十数人が、花笠と美しい着物をまとい、笛、太鼓、鐘の囃子と音頭、傘鉾ほこ持ちの唄により、五穀豊穣の願いを込めて独特の踊りを奉納します。祭りのハイライトとも言える部分です。

現在では、子役は女児も参加することができますが、元々は全ての役は男性のみと決まっていました。
役の大人や神輿の担ぎ手は現在も伝統を継続して男性のみが担っています。
地域ごとに、衣装や唄も少しずつ異なり、それぞれの地域で、この祭礼を後世へ伝えていくための努力や工夫が行われてきました。
なお、小杖祭りでは、「サンヤレ」ではなく榊をもった子どもたちの「ヒョイヒョイ!」が囃子になっています。 

主役のお二人の衣装は、なんと女性用の着物です。
帯の色相も2通りの補色の組み合わせでかなり目をひく配色となっています。
これら風流踊りでは、男性は女装するという風習が全国各地で見受けられます。
なぜ女装なのか?気になりませんか?
地域によっては、その土地に祀られている神様が女性だから、神様に嫉妬されないようにとの説もありますが、その昔、異性装というのは、最も身近な「仮装」でしたので祭を盛り上げるための演出の一つとも捉えられます。
春日大社の記録でも異類異形として、すでにお祭りでの異性装は親しまれてきたのです。

完成した大役のお二人。華やかです。
まるで現代の人々が様々なコスプレや仮装をして興じるハロウィンのような非日常を楽しむという意味合いも大きかったのでしょう。
そもそも風流踊自体が、共通の型を持った踊りではなく、平安末期に広がった、「華やかでにぎやか」「人目をひく」さまを表す「風流(ふりゅう)」の精神を体現した踊りのことを指すので、このように華美な衣装をまとい、にぎやかな囃子に合わせて歌い踊るなど、風流の精神に則る民俗芸能であり、人々にとっては、最も身近な女装の機会でもあるのです。
かつて織田信長や豊臣秀吉も興じた風流踊りや異性装という仮装。
なかなか着物自体を着なくなった昨今。もしお祭りの機会があれば、和装での異性装楽しんでみてはいかがでしょうか。
(注)風流踊とは、中世以来、趣向を凝らした衣装や持物を使った仮装集団や踊衆が、小歌や太鼓、 笛等の囃子に合わせて群舞した信仰芸態をもつ民俗芸能を指す。
