災害が起きたとき、電話もSNSもつながらなかったら—「安否確認」の手段を、あなたはいくつ持っていますか?
私がまだ若いとき、某外国へ旅行に行った話です。海外で浮かれていたのか笑、経験が少なかったのか、特急列車でリュックを丸ごと(!)置き引きされてしまったんですね。スマホは手元にあったので最悪のケースは免れたのですが、その後が大変でしたね。「スマホのバッテリーが切れたら詰む」到着した田舎町を駆け回り、充電器一式をなんとか手に入れました。アジア系の客は非常に珍しかったようでめちゃくちゃ警戒されましたけど。やっぱり不審者疑惑が絶えないサトウですこんにちは。
「充電器は持っているから大丈夫」—その安心が、わずかな油断であっさり崩れました。災害時でも同じことが起きます。いつも使っている電話やSNSが使えなくなったとき、あなたには次の手がありますか?この記事では、安否確認の「第2の手」「第3の手」として知っておくべき「災害用伝言ダイヤル(171)」の知識と使い方を解説します。
- 「171」を聞いたことはあるけど使ったことがない方
- 家族や友達との安否確認方法を決めていない方
- 防災の「知識」を「行動」に変えたい方
災害時に命が助かった後、次は「避難」と「安否確認」
以前の記事で、災害が起こった際に、一番大事なのは「自分の命が助かること」だとお伝えしました。
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では、自分の命をつないだ後に人は何を行うのでしょうか?それは「避難」と「安否確認」です。交通工学の観点から阪神淡路大震災発災直後の行動を調査した加藤ら(1997)の研究では、「発災後2日間は避難と安否確認のトリップ(=行動)が多い」との調査結果が報告されています。
なお、優先度は避難の方です。特に東日本大震災のような大津波が襲ってくる災害の場合、「安否確認を行うことが迅速な避難を妨げる要因になっている」との指摘もあり(内閣府, 2011)、まずは安全な場所へ避難してから安否確認行動をとることを心がけましょう。「津波てんでんこ」という言葉もありますね。これはまた別の記事で紹介します。
一方、心情的には、被災後すぐに(地震の場合は揺れが収まった後すぐに)安否確認を行う傾向があります(中谷内, 2013)。自分の命と同じくらい、大切な人の命も大事ですからね。しかし、大学生では安否確認行動への備えが十分ではないとの調査例もあります(河野・宮前, 2019)。備えが十分でないと、発災後にとても焦ってしまうかもしれず、好ましいとは言えません。
では、安否確認の際に用いられる手段は何でしょうか?直接の声かけのほか、東日本大震災時には携帯電話による通話・メールなどが多く用いられているが、「確認する手段が停電や地震の影響で使えなかった」との調査結果が報告されています(内閣府, 2011)。
大規模な地震が起きたとき、電話回線は一斉につながろうとする人々が原因となり、「輻輳(ふくそう)」という状態になることが多いです。簡単に言うと、回線がパンクして電話がつながらなくなる状態です。
2026年現在ではスマホ全盛ですが、問題は同じですね。電話がつながらなかったら?SNSがダウンしたら?
そこでおすすめするのが、本日のテーマの「災害用伝言ダイヤル(171)」です。
災害用伝言ダイヤル(171)とは
災害用伝言ダイヤル(171)は、NTTが提供する音声による安否確認サービスです。「輻輳(ふくそう)」が起きた際にも被災地の方などの電話番号をキーとして、安否等の情報を音声情報として蓄積し、録音・再生できるボイスメールです。通常の回線とは別の専用回線を使っている点で、先に述べた「冗長性」の概念がここでも使われていますね。
仕組みはシンプルです。「伝言を録音する人」と「伝言を聞く人」に分かれます。被災した側が「生きています、〇〇にいます」と録音する。離れた家族がそれを聞く。電話が繋がらなくても、この仕組みは動きます。音声ガイダンスに従って操作するだけなので、スマートフォンが壊れていても、昔ながらのガラケーでも、公衆電話でも使えます。
※ 録音件数・保存期間等の仕様は状況に応じてNTTが設定します。
参考:NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)概要とご提供のしくみ」
災害用伝言ダイヤルの使い方

災害用伝言ダイヤル、使ったことある方はおそらく多くないと思います。サトウゼミの学生による京都市右京区葛野学区での調査でも、安否確認の手段として想定されている割合が非常に少ないことが明らかになりました(北村・佐藤, 2025)。この研究結果に共感した皆さん、この記事で使い方をマスターしましょう。
読むより先に、手順を頭に入れてください。実際の操作は音声ガイダンスが全部案内してくれます。あなたがやることは「数字を押すだけ」です。
「171」に電話する
ガイダンスが流れる→「1」を押す(録音)
自分の電話番号(固定電話の場合は市外局番から)を入力する→プッシュ回線の場合は「1」を押す
ガイダンス後、30秒以内でメッセージを録音する
例:「○○です。無事です。今は△△にいます。動けるようになったらまた連絡します」
録音終了
「171」に電話する
ガイダンスが流れる→「2」を押す(再生)
確認したい相手の電話番号(市外局番から)を入力する→プッシュ回線の場合は「1」を押す
録音されたメッセージが再生される
これだけです。操作は本当にシンプルです。でも、知っているのと「一度やったことがある」のでは、パニック状態での動けるスピードが全然違います。だから練習が必要なんです。
録音するときは「誰が」「どこにいて」「状態はどうか」「次にどう動くか」の4点を意識して話すとベストです。30秒は意外と短い。今のうちにセリフを考えておきましょう。
SNS・災害用伝言板との使い分け
「LINEで連絡すればいいんじゃないの?」という声をよく聞きます。正直に言います。LINEは災害時でも「繋がることが多い」です。私の経験上もそうで、防災グッズ最低限リストの記事でもLINEを安否確認手段に組み込むことを紹介しました。
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ただし、「多い」と「必ず繋がる」は別の話です。状況によって使い分けるのが正解です。
| 手段 | 特徴 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| LINE | データ通信を使う・繋がりやすい | 通信環境がある程度残っているとき |
| 災害用伝言ダイヤル(171) | 音声・電話回線を使う・公衆電話でも使える | スマホが壊れた・通信が完全に途絶したとき |
| 災害用伝言板(Web171) | ネット経由・文字で残せる | データ通信は生きているが電話が繋がらないとき |
最初のセクションで、冗長性(redundancy)の話をしましたよね?「LINEが使えるならLINE、ダメなら171」—これは一例ですが、○○の順番で試す、と家族で決めておきましょう。
練習しないと意味がない
ここが一番伝えたいことです。
171の操作を「知っている」人は増えています。でも「実際に使ったことがある」人はほとんどいません。
だから練習が必要なんです。「やったことがある」という記憶が、いざというときの手を動かします。
NTTは毎月1日と15日、正月三が日、防災週間(8/30〜9/5)、防災とボランティア週間(1/15〜1/21)に体験利用日を設けています。この日は実際に171に電話して、録音・再生を試すことができます。
参考:NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)体験利用のご案内」
家族や友達と一緒にやってみよう:練習シナリオ
「一人でやっても練習にならないのでは?」——そんなことはありません。でも家族や友達でやると、より実践的です。明日の練習シナリオはこれです。
声をかける
家族のLINEグループや友達に「明日171の練習をしよう」と送る
録音する(3/1)
各自が171に電話して「相手への伝言」を録音する
再生して聞く
相手が互いの伝言を再生して聞く
報告し合う
LINEで「聞けたよ!」と報告し合う
まとめ:「安心」を確保するために171を使おう
この記事を読んで頂いた方はタイトルにある「SNSがあるから(171は)要らない」というのは間違いというのが分かって頂けたと思います。安心=冗長性を確保するために171を使えることは非常に大事です。覚えることは3つだけです。
「171」—この数字を今日、スマートフォンのメモに保存してください。「171(いない)」と覚えるのも良いです。そして、体験利用日に実際に電話してみてください。音声ガイダンスが全部案内してくれます。難しいことは何もありません。「やったことがある」という記憶が、いつかあなたと家族を助けます。
【ちょっと防災】今日できる小さな一歩
今夜、家族のLINEに「こんどの体験利用日に171の練習しよう」と一言送ってください。それだけです。
「ちょっと防災」、今日から始めてみてください。
このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
実際の災害時は現場の状況に応じた柔軟な判断が求められます。記事に含まれる情報の活用は読者の皆様の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。また、記事の内容は大学の公式な見解や推奨を意味するものではありません。なお、記事に含みうる誤りに関する一切の責任は筆者に帰属します。
- NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)」
- NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)概要とご提供のしくみ」
- NTT東日本「災害用伝言板(web171)」
- NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)体験利用のご案内」
- 内閣府中央防災会議(2011).「平成23年東日本大震災における避難行動等に関する面接調査(住民)分析結果」
- 加藤浩徳, 味沢慎吾, 家田仁(1997).「阪神・淡路大震災における地震発生後1週間の被災者・支援者の交通行動に関する調査分析」. 第2回阪神・淡路大震災に関する学術講演会論文集, pp.499-504.
- 中谷内一也(2013).「大地震直後の安否確認行動(1)」. 日本心理学会大会発表論文集, 77, p.99.
- 河野萌, 宮前淳子(2019).「大学生の地震防災行動の実態とその規定要因に関する研究」. 香川大学教育学部研究報告, 第Ⅰ部 151, pp.35-46.
- 北村有友実, 佐藤嘉洋(2025).「大規模災害発生直後の防災意識の実態―京都市葛野学区を事例として―」. 土木計画学研究発表会講演集, Vol.71. P02-6.
