2026.02.25 ぼうさいらぼ

災害時のトイレ、我慢は3時間が限界かも!? 備蓄を最優先すべき4つの理由

災害時、「トイレ」は水や食料と同じ最優先で備えるべき備蓄の必需品です。でも、そう言われてもピンとこない方が多いのではないでしょうか。

私、大学への通勤はバスを利用しています。バス停から近いところに住んでいるので、ギリギリまで家でコーヒーをがぶ飲みして家を出るんですね。そうすると、たまーにバスの中でトイレに行きたくなります。途中で降りてもコンビニなどはないので、必死に耐えて大学前でバスを降りたらガンダするサトウですこんにちは。小刻みに揺れてたら絶対に話しかけてはいけません。

通勤ではバスを降りたらトイレに行けるので笑い話で済みますが、災害時のトイレはそうはいきません。皆さんがトイレに行きたくなるまでの時間は?仮設トイレが来るのはいつ?データを見ていくと、冗談では済まない話なのが見えてきますよ。この記事では災害時のトイレに関する基礎知識を解説します。

この記事でわかること
こんな人におすすめ!
  • 水や食料は備えているけどトイレは考えていなかった方
  • 「避難所のトイレを使えばいい」と思っている方
  • 防災グッズを低予算で揃えたい方

【トイレの知識1】災害時にトイレを水で流すのは「NG」

「水が出るならトイレを流せばいいじゃないか」

直感的にそう思いますよね。私も最初はそう思ってました。でもこれ、やってはいけない行動のひとつです。
大規模な地震が起きると、建物の外にある下水管が破損することがあります。この状態でトイレに水を流すと、汚水が逆流して床や周辺に噴き出します。集合住宅の場合、マンション全体・団地全体に被害が及ぶ可能性もあります。
参考:国土交通省 水管理・国土保全局 下水道部(2017).「災害時のトイレ、どうする?」

「トイレが流せる状態かどうか」は、ぱっと見ではわかりません。

断水が解消されて水が出るようになっても、下水管の状態が確認されるまでは流してはいけません。備蓄の水で強制的に流すのもNGですよ!

確認方法:マンションや集合住宅であれば管理組合・管理会社の指示を待ってください。戸建ての場合は市区町村の下水道の使用可否情報を確認すると良いでしょう。

【トイレの知識2】仮設トイレは「すぐ来ない」データが示す現実

「避難所に行けば仮設トイレがある」「3日以内には持ってきてくれるだろう」と思っていませんか?
残念ながら、それは楽観的すぎる見通しです。

2011年に発生した東日本大震災の被災地における仮設トイレの設置状況を調査した研究では、避難所への仮設トイレの配置が完了するまでに発災後7日以上かかったケースが半数近く報告されています。

 東日本大震災_仮設トイレが来るまでの日数

出典:岡山朋子, 加藤篤(2015).「災害時における自治体の仮設トイレの調達等に関する調査研究」. 廃棄物資源循環学会研究発表会講演集, A11-4, pp.143-144. から筆者作成

「発災後の最初の数日間」は、仮設トイレがない状態でどうにかしなければいけません。

その間、トイレの備えがない人はどうなるでしょうか?

【トイレの知識3】発災後、人は意外と早くトイレに行きたくなる

もしあなたが地震で被災し、トイレが使えない状況に陥ったとして、何時間くらいトイレを我慢できそうでしょうか?半日くらいはいけそう?いやいやもっと……そう考えている方、実は多くの方はその感覚よりずっと短い時間なんです。

まず、あなたが今日何回トイレに行ったか?を想像してみてください。平均的な成人は1日に4〜8回トイレを使うと言われています。つまり、起きている時間を16時間程度としたら、概ね2〜4時間おきにはトイレに行ってるんですね。

これはよく引用されているデータなのですが、熊本地震の際に被災者が「最初にトイレに行きたい」と感じるまでの時間を調査したものがあります。

平成28年熊本地震-発災後トイレに行きたくなるまでの時間_円グラフ

出典:岡山朋子(協力:特定非営利活動法人日本トイレ研究所)(2018).「平成28年熊本地震『避難生活におけるトイレに関するアンケート』」から筆者作成

この調査によると、約4割の方が「3時間以内」、約7割の方が「6時間以内」にトイレに行きたくなった、とされています。半日どころか、もっと短い時間でしたね。

ここだけ覚えよう:被災後3〜6時間以内には「トイレ問題」が始まる
災害に遭ってしまったら、可能な限り早く「トイレ」の確保を行うことが重要です。通常のトイレは使えないことが多いので、非常用トイレをあらかじめ備蓄しておく必要があります。

災害時のトイレは3種類ある

ここで、非常用トイレには何があるのか、あらためて整理しておきましょう。

(1) 携帯トイレ・簡易トイレ(個人備蓄の主力)

個人で備蓄できる、最もコスパが高い選択肢です。

    • 携帯トイレ:袋状になっており、中に高分子吸収材が入っている。便座に被せて用を足し、尿を固めて密封できる。1回あたり数十円〜200円程度。
      携帯トイレ_イラスト
    • 簡易トイレ:便座付きの組み立て式。携帯トイレと組み合わせて使うこともある。段ボール製のものは100円ショップでも手に入る。
      防災グッズ_トイレ

プライバシーを確保するために、簡易テント(目隠し用)とセットで備えておくとより安心です。また、簡易トイレ・携帯トイレは防災リュックにも入れるようにしておきましょう。

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その防災リュックの重さ、本当に背負って走れますか?−重さの目安を「正しく使う」ための断捨離ガイド

防災リュックの詳細はこちら
(2) マンホールトイレ

自治体が整備している、マンホールに直結する簡易トイレです。下水道が使える状態であれば、専用のマンホールの蓋を開けて専用の便座を設置するだけで使えます。避難所となる学校などに設置されているケースが多いです。

参考:国土交通省 水管理・国土保全局 下水道部(2021).「マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン-2021版-」

(3) 仮設トイレ

工事現場でもよく見る、ボックスタイプのトイレです。知識2で述べたとおり実際には設置まで時間がかかることが多いですが、このトイレが設置されたら、とりあえず一安心できます。

仮設トイレ_イラスト
最終手段:穴掘りトイレ

上記がすべて使えない場合、地面に穴を掘って用を足す方法が使われることがあります。穴を掘る労力・衛生管理の困難さ・プライバシーの皆無・においの深刻さ・長期化した際の感染症リスクなど、これは本当の意味での最終手段です。携帯トイレを備蓄しておけば、この状況には陥らずに済みます。

なお、使用後に「肥料になるから」と土で埋めるのは絶対にやめてください。土壌汚染のリスクが深刻です。使用後は汲み取りや汚染対策が必要となります。

【トイレの知識4】トイレは「尊厳」の問題である—スフィア基準が示すこと

「人道憲章と人道対応に関する最低基準」というものがあります。「スフィア基準」と呼ばれる、災害・紛争時の被災者支援における最低基準です。この基準の中で、トイレは食料・水などと並んで「人間の尊厳を守るための重要な要素」として位置づけられています。具体的には「20人に1基以上のトイレを確保すること」「男女別のトイレを設置すること」などが定められています。

なぜトイレが「尊厳」と結びついているのか。それは、トイレを我慢させられること・人目にさらされることが、人の精神を著しく傷つけるからです。特に女性・高齢者・子どもへの影響は深刻で、「トイレが怖くて水を飲まない」という行動が脱水や健康悪化を招きます。東日本大震災の避難所でも、主に女性の方が夜間のトイレを怖がり、水分を意図的に減らすケースが見受けられました。

スフィア基準の詳細については、あらためて別の記事で詳しく紹介します。今日は「トイレ=生存と尊厳の問題」ということだけ学んで頂ければと思います。
参考:スフィアハンドブック2018

まとめ:非常用トイレ備蓄が「最優先」の4つの理由

改めて整理します。

理由1 通常のトイレは水で流すと逆流する恐れがある
理由2 仮設トイレは数日来ない:「何とかしてくれる」は幻想
理由3 人間は意外と早くトイレに行きたくなる
理由4 トイレは生存と尊厳の問題

この4つを知れば、「非常用トイレは水・食料と同じ優先度で備えるべきもの」だとわかります。

防災グッズ最優先リストを確認したい方は

トイレと同じように、水や食料も最優先防災グッズです。その他も含めて防災グッズを一から備えたいかたは以下の記事をご覧ください。

あわせて読みたい

水・食料と合わせて買うべき『第3の必需品』とは?一人暮らし向けの防災グッズ最低限リストを厳選

「何を備蓄すればいいかわからない」という方はこちら

【ちょっと防災】今日できる小さな一歩

備蓄の目安はシンプルです。

1日5回 × 7日分 = 35回分

参考:経済産業省「トイレ備蓄 忘れていませんか」

携帯トイレは1回あたり数十円〜200円。35回分でも多くて5,000〜7,000円程度です。100円ショップ、ホームセンターで手軽に購入できます。

また、自分の家だけでなく「地域の防災倉庫」への備蓄も有効です。自治会や町内会の防災担当者、自主防災組織の方などに相談してみてください。地域全体でトイレを備えておくことで、一人では用意が難しい方もカバーできます。

まず今日は「携帯トイレ」で検索してみてください。どんな製品があるか100円ショップへ見に行くだけでも良いです。

「ちょっと防災」、今日から始めてみてください。

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Author

サトウ先生|博士(工学) / 防災士
京都光華女子大学 社会学部 社会共創学科
「専門知識を、わかりやすく身近に。」これまで数々の自然災害を目の当たりにしてきた実体験をもとに、防災に関する大学での講義や地域での講演を行っている。南国出身のため雪にはとっても不慣れで、京都での最大の災難は大雪のときに滑ったことだと思っている。摩擦係数の計算は得意だが、雪道の滑りやすさは計算外だった。だが、その失敗さえも防災の教訓に変えてしまうのが私のスタイルだ。実に面白い。
本ブログの趣旨と免責事項

このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
実際の災害時は現場の状況に応じた柔軟な判断が求められます。記事に含まれる情報の活用は読者の皆様の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。また、記事の内容は大学の公式な見解や推奨を意味するものではありません。なお、記事に含みうる誤りに関する一切の責任は筆者に帰属します。

参考・出典

内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」
経済産業省「トイレ備蓄 忘れていませんか」
国土交通省 水管理・国土保全局 下水道部(2017).「災害時のトイレ、どうする?」
国土交通省 水管理・国土保全局 下水道部(2021).「マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン-2021版-」
・岡山朋子, 加藤篤(2015).「災害時における自治体の仮設トイレの調達等に関する調査研究」. 廃棄物資源循環学会研究発表会講演集, A11-4, pp.143-144.
岡山朋子(協力:特定非営利活動法人日本トイレ研究所)(2018).「平成28年熊本地震『避難生活におけるトイレに関するアンケート』」
支援の質とアカウンタビリティ向上ネットワーク(JQAN).「スフィアハンドブック2018」

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