京都光華女子大学 短期大学部 ライフデザイン学科 ニュース 9月11日 重く深い思いに沈むアメリカ 〜同時多発テロから20年〜

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9月11日 重く深い思いに沈むアメリカ 〜同時多発テロから20年〜

みなさん お元気ですか? グローバル分野担当の脇田哲志です。

これを読んでくださる若い世代にとっては、もう生まれる前の出来事かもしれません。20世紀が「戦争の世紀」とすれば、21世紀は「平和の世紀」。人々がそう願いながら迎えた21世紀最初の年2001年の9月11日。アメリカで、4機の旅客機がテロリストたちにハイジャックされ、うち2機がニューヨークの世界貿易センターの110階建ての2つのビル(通称ツインタワー)に次々と突っ込みました。さらにもう1機は首都ワシントン近郊の国防総省ビルに激突。もう1機は墜落しました。ツインタワーは、まもなく相次いで崩れ落ち、このビルで働いていた日本人24人や救助に駆けつけた消防士や警察官を含め、この「同時多発テロ」で、あわせて2977人もの人が犠牲となりました。
写真は、ツインタワー南棟に2機目が突っ込んだ瞬間です。

 

あれから20年。
ニューヨークの現場跡地では、今年も追悼式典が行われ、遺族らが次々と亡くなった人全員の名前を読み上げ、思い出を語りました。

  

                    

ことしは、バイデン大統領夫妻、それにオバマ元大統領らも参列しましたが、トランプ前大統領の姿はありませんでした。

NHKのアメリカ総局長だった私も、2008年の追悼式典を現地から中継で伝えました。



当時、アメリカは「テロとの戦い」と称して、同時多発テロを起こした国際テロ組織が隠れていたアフガニスタンや、中東のイラクにたくさんの兵隊を派遣して戦争を続けていました。特にアフガニスタンでの戦争は、アメリカ史上最も長い20年にも及ぶ戦いとなりましたが、先月いっぱいで、アメリカ軍はアフガニスタンから撤退。やっつけたはずの武装勢力「タリバン」が再びアフガニスタンを支配しようとしていて、ようやく根付き始めていた女性の自由や人権が、タリバンによって再び踏みにじられはじめています。
「テロとの戦い」で亡くなったアフガニスタンとイラクの人々は、実に23万から25万人と言われています。そして戦死したアメリカ軍の兵士は、同時多発テロの犠牲者をはるかに超える7000人近くに達しました。先月、撤退するアメリカ軍の飛行機が、一緒に連れていって欲しいと追いすがるアフガニスタンの人たちを振り切って飛び立つ映像に、多くのアメリカの人たちは、「この20年間の戦争は、いったいなんだったのか・・・」という思いに沈みました。


                              

そして迎えた同時多発テロ20年の節目の日、911日。テロの犠牲者、そしてテロとの戦いの中で亡くなった多くの人々、反イスラム感情など社会に残した深い傷・・・。世論調査で、アメリカがテロ事件以前より安全になったと答えた人は半数以下の49%。アメリカの人たちは「テロとの戦いは、意味があったのだろうか?」「なぜ、遠い国で、アメリカ兵が戦わないといけないのか?」と、深い思いのなかで、この20年を振り返っています。

 

それは、これまでの「世界の警察官役を担うアメリカ」を中心とした「世界のあり方」にも変化を及ぼしてくることでしょう。アメリカ政府が危険視する国際テロ組織は、20年前が29だったのが、いまは72。テロを生む土壌となる貧困や国際的な格差、さらに、新型コロナウイルスのパンデミックや地球温暖化など、世界中みんなで取り組まなければいけない課題は軍事力では解決できません。
では、どうしたらいいのでしょうか?
そんなグローバル社会の課題を考え、取り組むことが、若い世代の人たちの役割です。
ライフデザイン学科に「グローバル分野」があるのは、そのためなのです。



(写真説明)9⽉11⽇の夜、ニューヨークの夜空に、今年も、ツインタワーをイメージした2本の追悼の「光の塔」が描かれました。