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教員ブログ

NASAゲームにまつわる話

みなさんこんにちは。ライフデザイン学科教員の相場です。

さて、以前の教員ブログ「水平思考クイズにはまっています」で2020年度の科目「ライフ創彩」について紹介しました。

ライフ創彩はユニークな科目でシラバスを学生に公募し、応募があったシラバスから優秀なものを採用するという仕組みの授業です。2020年度はグループワークをテーマにしたシラバスが採択されました。(2021年度は前年度とは全く異なり、「馬と学ぶこころ」というテーマが採択されています。驚きですね。でもそれが「ライフらしさ」です)

2020年度のライフ創彩で取り上げたグループワークに「NASAゲーム」というものがあります。NASAゲームというのはおおよそ次のようなものです。「あなたたちの乗った宇宙船が月面上で故障を起こし、目的地とは300km離れた場所に不時着しました。あなたたちにはマッチ、宇宙食、ピストル等15のアイテムが残されています。さて、目的地に向かう旅に携帯すべきアイテムの優先順位をつけましょう」この優先順位をディスカッションして決めていくというグループワークです。このグループワークが盛り上がる要素の1つに、実際にNASAの職員に聞いた「正解」があるということです。したがってグループごとの正解率を競うこともできます。

ライフ創彩では、このNASAゲームに、学生は45名のグループ(2つ)を作って取り組み、教員は1人で取り組みました。さて、結果はどうなったでしょうか?なんと、学生のどちらのグループも教員単独を上回る正解率を出しました。そこで、最後の締めくくりとして「グループワークにはこのように実質的なメリットもある」ということを確認して終了しました。

ところで、この結果は偶然でしょうか?実はこの結果は次の問題と関連しています。「確率95%で正解を出す超エリートがいます。一方、確率60%で正解を出す一般市民が多数いて多数決で答えを出します。さて、超エリートと一般市民の多数決ではどちらの正解率が高くなるでしょうか?」みなさんはどう思いますか?「正解率60%の一般市民がいくら集まったところで烏合の衆という言葉もあるように正解率95%の超エリートには勝てないだろう」と思ったりしませんか?実はその反対です。多数決に参加する一般市民の数がある一定数を超えると、超エリートの正解率より高くなるのです!「銀河の片隅で科学夜話」(全卓樹著、朝日出版社)という本ではこれを「三人寄れば文殊の知恵」の原理と呼んでわかりやすく、かつ興味深く解説しています(他にもGoogleのページランクや「トロッコ問題」など興味深い話題がたくさん取り上げられています)。

というわけで、NASAゲームから始めて、グループワークのメリットと「三人寄れば文殊の知恵」の原理の関連性の話でした・・・

「・・・あれっ、NASAゲームのグループワークの場合、多数決で答えを出すのではなく、ディスカッションして全員のコンセンサスを得たうえで答えを出しているぞ!ということは「三人寄れば文殊の知恵」の原理を直接当てはめるのは無理があり、少し修正が必要だぞ。さて、どう考えようか・・・」

ところで、以前のブログで次の水平思考クイズの問題を出していました。「女は男が大好きだった。ある朝、男が倒れていたのを目撃した女は救急車を呼ぶことはなく、男は死んでしまった。なぜ?」・・・答えは、ずっと別の機会にと言い続けてきました。・・・すみません!今度もまた次の機会にさせてください!