京都光華女子大学 短期大学部 ライフデザイン学科 ニュース 魚を情報デザインする(2) 「魚の卵の使い方」

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魚を情報デザインする(2) 「魚の卵の使い方」

こんにちは!
情報分野担当の辻野です。

今年度の私の教員ブログは、「魚の情報デザイン」について書いています。
1回は、「タラの食べ方」でした。

前回の記事を書いているときに辛子明太子が気になったので、第2回のテーマは「魚の卵」です。
今回も、フリー素材のイラスト以外は、全てPowerPointを使って作成しました。

 

●「魚」と「卵」と「卵巣」と

みなさんは、「魚卵」という言葉を聞いたことがありますか?

魚卵」とは、魚介類の卵のことです。「魚卵アクアリウム(水産庁)https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1901/spe2_01.html」には、魚介類9種の卵と親を紹介しています。一般的に、「魚卵」には魚以外の魚介類の卵が含まれます。このため、このブログでは「魚」に限定する意味で「魚の卵」と書きます。

スーパーでは、辛子明太子やイクラ(図1)をよく目にしますよね。

図1 辛子明太子とイクラ

 

辛子明太子は、スケトウダラの体から卵巣を取り出して使っています。一方イクラは、サケの卵巣である筋子から卵を取り出して、バラバラにして使っています。この他に、「子持ちあゆ」や「子持ちししゃも」のように、卵巣を取り出さずに食べることもあります。

ところで、卵巣って何でしょう?

卵巣は、メスの体内にある生殖器官で、真子(まこ)とも言います。

産卵期になると卵巣の中に卵(卵子)をできます。そしてメスが卵を産むと、その卵にオスが精子をかけて受精し、時間がたてば魚の赤ちゃんが生まれます。

魚の体内に卵巣があり、卵巣の中に卵があるという関係です。この関係を模式図にしたのが、図2です。

2 魚の体・卵巣・卵

 

今回も次の3段階にわけて、情報デザインを作る過程を説明します。

  ステップ1 情報を収集する
  ステップ2 情報を整理する
  ステップ3 情報を表現する

●ステップ1 情報を収集する

(1)魚の卵」の情報収集

まず、食用「魚の卵」の種類と使い方の情報を収集しました。
今回は試作のため、情報の量を絞るために、魚の種類と使い方は次のウェブを参考にしました。

 ●食用の魚卵(財団法人水産物市場改善協会 おさかな普及センター資料館)http://www.osakana-center.com/q&a/037/shokuyou.htm


(2)
イラストの収集

図で使うイラストは、前回同様、魚や料理の絵が多い「いらすとや(https://www.irasutoya.com/」のイラストを使いました。

 

●ステップ2 情報を整理する

次に、集めた情報を整理しました。

集めた情報によって、整理方法が決まる場合があります。例えば、名簿なら「あいうえお順」、料理のレシピなら「作業順」です。情報の性質に逆らって整理すると、伝わりにくくなります。情報は単に並べるのではなく、情報の内容を理解して、そのデータに向いた整理方法を選ぶ必要があります。

今回は卵の「使い方」を、表1のように「卵」「卵巣」「子持ち」の3種類に分けて扱います。

1 卵の使い方

 

この「使い方」の関係を模式図にしたのが図3です。

3 使い方の関係

 

まず、収集した情報を魚ごとに「使い方」をまとめて表2を作りました。

2 魚別卵の使い方

 

2から魚によって使い方が異なることが分かります。一番上のチョウザメは卵として使い、2番目のニシンは卵・卵巣・子持ちのどの形でも使います。そこで、魚の種類と「使い方」の関係をまとめると、表3のように7パターンあることが分かりました。

3 使い方のパターン

 

そこで、「使い方」の関係について考えました。

 

3のパターンは、図4のように集合として表現できます。図中の①から⑦までの丸数字は、表3のパターンを表します。

4 使い方のパターン(ベン図)

 

さらに、同じ数字を「図3 使い方の関係」に書き込んだものが図5です。例えば、パターン④の使い方は「子持ち」と「卵巣」なのでそれぞれに④と書き、さらに点線で囲いました。パターン⑤は「子持ち」と「卵」なのでそれぞれに⑤と書き、点線で囲いました。

5 使い方の関係とパターン

 

5をもとに「魚の卵の使い方」の図を作成すると、パターン⑤は「子持ち」と「卵」の2つの部分に分かれてしまいます。そこで、図6のように「卵」の円を下に動かして、「卵巣」の円に接する部分を作ると、情報を無理なく表現できました。

6 使い方の関係とパターン(修正版)

 

●ステップ3 情報を表現する

6を反時計回りに90度回転して、魚をイメージしやすい形に変形し、そこに収集・整理した情報を配置して、図7を作成しました。

7 魚の卵の使い方

 

作成のポイントを挙げます。

 ● 全体の色は、卵・卵巣のイラストの色に合うように、オレンジを選んだ
 ● 配色は、オレンジの「明るさ」の値を変えて設定した(図8
 ● 「使い方」が複数ある魚は線で囲った
 ● イラストがない魚は、輪郭線のみの模式図で代用した

8 色の設計

 

さて、皆さんはどの卵が気になりますか?

オープンキャンパスでは、様々な学生作品を展示しています。ぜひ会場で直接ご覧ください!

次回もお楽しみに!

 

●参考資料

書籍

講談社編,「旬の食材 春の魚」,講談社,2004年
講談社編,「旬の食材 夏の魚」,講談社,2004年
講談社編,「旬の食材 秋の魚」,講談社,2004年
講談社編,「旬の食材 冬の魚」,講談社,2004年
藤原昌高著,「からだにおいしい 魚の便利帳」,高橋書店,2010年
高橋書店編集部編,「からだにおいしい魚の便利帳 全国お魚マップ&万能レシピ」,高橋書店,2019