京都は、なぜ「チョコレートの都」になったのでしょうか。
京都光華大学社会学部社会共創学科の平松隆円准教授が担当する、キャリア形成学部キャリア形成学科の3年生ゼミに、京都市出身の日本航空株式会社(JAL)の客室乗務員をゲストに迎えました。
今回の授業のテーマは、「京都」「世界のチョコレート」。一見すると別々に見えるテーマですが、地域の文化を世界との比較から考え、そこで得た気づきを自分たちの将来にもつなげる、大学ならではの学びとなりました。
「京都はなぜチョコレートの都になったのか」を調査
平松ゼミでは、2026年度後期のプロジェクトとして、「京都はなぜチョコレートの都になったのか」をテーマに調査を進めています。
京都と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは、寺社、祇園祭、西陣織、京料理、和菓子、宇治茶などかもしれません。1,200年以上の歴史を持つ京都には、確かに「和」の文化が数多く残されています。しかし、京都の食文化はそれだけではありません。
京都発祥のチョコレートブランド「dari K」をはじめ、京都の工房でカカオ豆からチョコレートまでを一貫して製造する「COCO KYOTO」、ニューヨーク発のショコラティエ「MarieBelle」の京都店など、京都には個性的なチョコレート専門店やブランドがあります。
伝統文化のまちとして知られる京都で、なぜチョコレートという西洋由来の食文化が受け入れられ、独自の発展を遂げてきたのでしょうか。学生たちは、「京都は本当にチョコレートの都と呼べるのか」という問いそのものから検証を始めています。
身近な食べ物から「京都」という地域を読み解く
大学で地域について研究するというと、人口、産業、観光客数などの統計データを思い浮かべるかもしれません。
もちろん、それらも重要です。しかし、その土地で何が食べられているのか、どのような店が生まれているのか、どのブランドが支持されているのかを見ることからも、地域の特徴を知ることができます。
チョコレートを調べていくと、食文化だけでなく、観光、地域ブランド、消費者行動、マーケティング、海外文化の受容、店舗デザイン、SNS、サステナビリティなど、さまざまなテーマにつながります。身近な「チョコレート」から社会を読み解いていくことも、社会学の研究です。
JAL客室乗務員から世界のチョコレート事情を学ぶ
学生たちが本格的な調査に取り組む前に、今回は日本航空の協力のもと、客室乗務員から世界のチョコレート文化についてお話しいただきました。
客室乗務員は、仕事を通じて日本国内だけでなく、さまざまな国や地域の文化に触れる機会があります。今回のゲストも、国内外で出会ったチョコレートショップや商品、地域によるチョコレート文化の違いなどについて紹介してくださいました。
学生にとっては、自分たちがインターネットで検索するだけでは知ることのできない、実際に現地を訪れた人だからこその視点に触れる機会となりました。
海外では、チョコレートはどのように売られているのか。どのようなお店が人気なのか。地域によって、商品の見せ方や楽しみ方はどう違うのかなど、世界の事例を知ることで、学生たちは逆に「京都らしいチョコレートとは何か」を考えるヒントを得ることができました。
世界と比べるから、京都の特徴が見えてくる
地域を理解するためには、その地域だけを見るのではなく、ほかの地域と比較することも重要です。
京都だけを見ていると「当たり前」に感じることも、東京、大阪、パリ、ニューヨーク、アジアの都市などと比較すると、その特徴が見えてきます。これは社会学でよく用いられる考え方でもあります。
「京都にあるチョコレート専門店には、どのような特徴があるのか」「京都らしい素材は、チョコレートにどのように取り入れられているのか」「観光都市であることは、チョコレート文化と関係しているのか」「伝統文化と新しい食文化は、どのように共存しているのか」など、学生たちは今後、こうした問いを持ちながら京都のチョコレート文化を調査していきます。

客室乗務員という仕事についても質問
今回の授業では、チョコレートだけでなく、学生たちの関心は「働くこと」にも広がりました。
3年生にとって、後期は就職活動が本格化していく時期です。インターンシップや企業研究を経験し、自分はどのような仕事に向いているのか、どのような企業で働きたいのかを考え始めています。
そこで学生たちは、客室乗務員という仕事を選んだ理由、学生時代にどのようなことを経験したのか、働くうえで大切にしていることなどについて質問しました。また、就職活動の先輩として、面接に臨む際の心構えや、自分自身の経験を相手へ伝えるために意識したことなどについても話を聞きました。
企業の採用基準や選考の「正解」を教えてもらうのではなく、実際に社会で働く人の経験に触れ、自分自身のキャリアを考える時間となりました。
客室乗務員は「サービスをする人」だけではない
客室乗務員というと、機内で食事や飲み物を提供する仕事を思い浮かべる人も多いかもしれません。
しかし、客室乗務員の重要な役割の一つは、航空機内の安全を守ることです。さらに、年齢、国籍、文化、言語、旅行目的などが異なる多様な利用者と接し、その状況に応じてコミュニケーションをとる必要があります。
相手の立場を考えること。限られた情報から状況を判断すること。仲間と協力すること。予期しない出来事に対応すること。こうした力は、航空業界だけに必要なものではありません。多様な人々と協力しながら社会の課題を解決する「社会共創」にも通じる力です。
社会共創学科につながる「文化×ビジネス×地域」の学び
平松准教授が所属する社会学部社会共創学科では、社会学を基盤として、経営、心理、文化、データサイエンス、ITなどを分野横断的に学びます。
なかでも文化共創コースでは、ファッション、化粧、マンガ、アニメ、音楽、食文化など、身近な文化を社会との関係から読み解き、その価値を新しい商品、サービス、観光、地域活性化などへつなげることを考えます。
京都のチョコレートを研究することも、文化を調べる、地域の特徴を発見する、消費者の行動を考える、ブランドの魅力を分析する、新しい価値を提案するという社会共創の学びにつながります。
教室の外にいる人から学ぶ
平松准教授は、これまでの教育活動でも日本航空と連携し、客室乗務員をはじめとするJALスタッフと学生が協働する活動や、学生の商品企画などに取り組んできました。こうした経験を生かし、京都光華大学でも、企業や社会で実際に働く人々との対話を授業へ取り入れています。
大学の先生から専門的な知識を学ぶ。本や論文から研究成果を学ぶ。そして、社会の現場で働く人から、実際の経験を学ぶ。
それぞれを組み合わせることで、教室で学んだ知識と現実の社会がつながっていきます。



