
ete・Jouete・and cloudを展開する株式会社ミルクへの新規事業提案に学生が挑戦。ジュエリー市場やブランド戦略を学び、店舗調査を経て12月に企業へプレゼンテーションします。
京都光華大学では、実社会につながる授業にも取り組んでいます。社会学部社会共創学科の平松隆円准教授が担当する、キャリア形成学部キャリア形成学科2年生のゼミでは、2026年度後期のプロジェクトとして、関西に実在するファッション関連企業を研究し、新しい商品やサービス、事業を提案する「新規事業提案」に挑戦しています。
2026年10月27日には、提案先企業の一つである株式会社ミルクから担当者をお招きし、同社の事業やジュエリー業界の現状、それぞれのブランドが大切にしている価値などについてお話しいただきました。
ete・Jouete・and cloudを手がける株式会社ミルク
株式会社ミルクは大阪市に本社を置き、オリジナルジュエリーブランド「ete(エテ)」「Jouete(ジュエッテ)」「and cloud(アンドクラウド)」を企画・製造・販売しています。
「ete」は、シンプルな美しさの中に遊び心を取り入れ、ジュエリーを自由に楽しむことを提案するブランド。「Jouete」は、ファッションに敏感な人に向けて、個性を引き立てるジュエリーを発信しています。そして「and cloud」も含め、それぞれ異なるコンセプトや顧客との接点を持ちながら、ジュエリーを通して自分らしさを楽しむ価値を届けています。学生にとっても、百貨店やショッピングモールなどで目にする機会のある身近なブランドです。
しかし今回の授業では、「かわいい」「欲しい」「知っている」という消費者としての視点から一歩離れ、企業がどのようにブランドをつくり、顧客へ価値を届け、事業を成長させているのかを考えました。
市場が拡大していても、すべてが好調とは限らない
新規事業を考えるためには、まず企業を取り巻く市場を知る必要があります。
矢野経済研究所によると、2025年の国内宝飾品(ジュエリー)小売市場規模は、前年比3.8%増の1兆1,741億円となりました。数字だけを見ると、ジュエリー市場は拡大しているように見えます。しかし、その背景を詳しく見ると、市場拡大の主な要因は、金やプラチナなどの地金価格上昇に伴う商品の値上げです。販売単価が上昇した一方で、客数は伸び悩んでいます。また、World Gold Councilによると、2025年の日本における金製ジュエリー需要は、重量ベースでは前年比11%減少しました。一方で、金価格の上昇を受け、金額ベースでは29%増加しています。
つまり、「売上金額が増えている」ことと、「より多くの商品が売れている」ことは同じではありません。学生たちは、数字を表面的に見るだけではなく、その背景まで読み解く必要があることを学びます。
原材料価格の上昇から、新しいビジネスを考える
ジュエリー業界では、金やプラチナなどの原材料価格の上昇が商品価格にも影響します。価格が上昇すれば、消費者にとってジュエリーを購入するハードルが高くなる可能性があります。
では、そのような環境の中でブランドは何ができるのでしょうか。商品の魅力をさらに高める、顧客との関係を深める、修理やメンテナンスなど購入後のサービスを充実させる、店舗だからこそできる体験をつくる、ジュエリーそのものだけでなくブランドの世界観に触れられる新しいサービスを考える。既存の強みを生かしながらこれまでとは異なる顧客や市場へ価値を届ける。
今回の新規事業提案では、こうした可能性も含めて学生自身が考えていきます。
「モノを売る」だけではないブランドの価値
ジュエリーの価値は、使用されている金属や宝石の価格だけで決まるものではありません。
デザイン、職人や生産現場の技術、ブランドの歴史や世界観、店舗での接客、購入したときの思い出、大切な人から贈られたというストーリー、修理しながら長く使えること。こうしたさまざまな要素が組み合わさることで、一つの商品に意味や価値が生まれます。株式会社ミルクも、企業理念として「お客様の思い出に残るモノづくり」や「ジュエリーを通して笑顔を増やす」ことなどを掲げています。
学生たちが新規事業を考える際にも、「何を新しく売るか」だけでは十分ではありません。その企業やブランドだからこそ提供できる体験や価値とは何かを考える必要があります。
3つのブランドは、何が違うのか
今回の授業では、株式会社ミルクの事業戦略に加え、「ete」「Jouete」「and cloud」という3つのブランドについても詳しく説明していただきました。
同じ会社が展開するジュエリーブランドでも、ブランドごとにコンセプト、デザイン、価格、顧客とのコミュニケーション方法などが異なります。
学生たちは、どのような人に選ばれているブランドなのか、ほかのブランドとの違いは何か、顧客は商品以外のどのような価値に魅力を感じているのか、既存ブランドのイメージを壊さず新しい事業を加えるにはどうすればよいか、といった視点から、ブランドについて考えました。
新規事業は、たんに今までにないアイデアを出せばよいわけではありません。企業がこれまで築いてきたブランドの強みを理解したうえで、「その企業だからこそできること」を考えることが重要です。
「自分が欲しい」ではなく「顧客は何を求めているか」
学生が新規事業を考えるとき、最初はどうしても、自分だったらこんな商品が欲しい、こんなサービスがあったら面白いという発想になりがちです。もちろん、そこからアイデアが始まることもあります。
しかし、ビジネスとして成立させるには、誰が利用するのか、その人にはどのような困りごとやニーズがあるのか、すでに似たサービスは存在していないか、企業にとって実現可能なのか、継続的に収益を生み出せるのか、ブランドのイメージと合っているのか、といった点まで考えなければなりません。
今回、企業担当者から直接話を聞くことで、学生たちはインターネットだけでは得られない企業の考え方やブランドへの思いを知ることができました。
次は「店舗」へ。自分たちの目でブランドを調査
今回の授業を受けて、プロジェクトは次の段階へ進みます。学生たちは実際に株式会社ミルクが展開する店舗などへ足を運び、フィールドワークを行う予定です。
店舗はどこにあるのか、どのような場所に出店しているのか、商品はどのように並べられているのか。店内の色・照明・音楽・什器はブランドの世界観とどう結びついているのか、スタッフはどのような接客をしているのか、どのような顧客が訪れているのか、ウェブサイトやSNSと実店舗ではブランドの見せ方に違いがあるのかなど、自分たちの目で観察することで、企業資料だけでは分からないことが見えてきます。
12月には株式会社ミルクへ新規事業をプレゼンテーション
学生たちは、今回の特別授業と今後の店舗調査などをもとに、株式会社ミルクに提案する新規事業を考えていきます。そして12月の最後の授業では、自分たちの提案をプレゼンテーションする予定です。
課題を見つける、情報を集める、市場を分析する、顧客を考える、アイデアをつくる、実現可能性を検討する、そして相手に伝わるように提案する。学生たちは、一連のプロセスを実際の企業を対象に経験します。
学生たちはどんな新規事業を提案するのか
株式会社ミルクのブランドやジュエリー市場について学んだ学生たちは、これから企業研究とフィールドワークをさらに進めます。そして、自分たちなりに発見した課題や可能性を、新しいビジネスの提案へとつなげていきます。
ete、Jouete、and cloudというブランドの強みを生かしながら、学生たちはどのような「次の価値」を考えるのでしょうか。



