
京都光華大学キャリア形成学部キャリア形成学科の3年生が企画した残糸Tシャツを、山口県下関市の複合施設「ねをはす HOTEL BOOK & CAFE」で販売しています。
学生たちは、繊維産地で生まれる残糸を新しい価値へ変えることを目指し、2026年4月からデザイン、サイズ、素材、製造、価格、販売方法について検討してきました。
今回、学生たちが教室で考えてきた商品を、実際の店舗でお客さまに手に取っていただける段階まで届けることができました。
学生が企画した残糸Tシャツ
このプロジェクトに取り組んでいるのは、社会学部社会共創学科の平松隆円准教授が担当するファッションゼミの3年生です。
平松准教授の専門は、化粧心理学、化粧文化論、ブランド戦略論、新事業創出です。社会共創学科では、文化やファッション、商品、サービスに新しい価値を与え、それを社会へ届けるための教育に取り組んでいます。キャリア形成学科で担当するゼミでも、学生たちはファッションをたんなる流行や外見の問題として捉えるのではなく、地域産業、環境問題、消費者心理、商品企画、マーケティングなどの視点から学んでいます。
2026年度前期は、その実践的なテーマとして、残糸を活用したTシャツの商品開発に取り組みました。
残糸を「余った糸」から「選ばれる商品」へ
残糸とは、生地や衣服を製造する過程で使い切れずに残った糸のことです。品質に問題がなくても、色、素材、太さ、数量などの条件が合わず、次の製品に使用しにくい場合があります。保管や管理にも費用がかかるため、活用先が見つからないまま残されたり、廃棄されたりすることもあります。
学生たちは、残糸を単なる「余りもの」として処理するのではなく、新しい魅力を持つ商品へ生まれ変わらせることができないかと考えました。目指したのは、「環境に配慮しているから着る」だけではなく、「デザインがよく、着心地もよいから着たい」と思ってもらえるTシャツです。
流行だけを追わず、性別にかかわらず着用しやすく、日常の中で長く愛用できる一着を目指しました。

デザイナーや縫製工場と協働して商品化
Tシャツの商品開発には、山口県下関市を拠点に活動するファッションデザイナーの浜井弘治さんにご協力いただきました。浜井さんは「第61回装苑賞」を受賞後、株式会社三宅デザイン事務所で服飾デザイナーとして経験を積み、現在は「うるとらはまいデザイン事務所」を主宰しています。
学生たちは、浜井さんから残糸や繊維産業について学び、デザイン、パターン、シルエット、素材の生かし方について専門的な助言を受けました。
一口にTシャツといっても、首まわり、肩幅、身幅、袖丈、着丈など、決めなければならない項目は数多くあります。学生たちはサンプルを実際に着用し、着心地や動きやすさ、見た目のバランスを確認しながら、細かな修正を重ねました。完成したTシャツはコットン100%の日本製です。山口県内の縫製工場で50着を製造し、グリーン、グレー、パープル、ネイビーの4色を展開しています。首元、袖口、裾に施した白いラインや、肩のラインをやや落としたリラックス感のあるシルエットなど、学生たちのアイデアが具体的な商品として形になりました。

下関とのつながりから実店舗での販売が実現
今回、残糸Tシャツを取り扱っていただく「ねをはす HOTEL BOOK & CAFE」は、山口県下関市にある複合施設です。
約2万冊の書籍を扱う書店とカフェ、地元食材を楽しめるレストラン、客室ごとに選書された本を備えるホテルが一体となっています。施設名の「ねをはす」には、地域に根を張り、人々が集まり、文化を育てる場所でありたいという思いが込められています。
今回のTシャツを製造した縫製工場が山口県内にあることに加え、デザインやパターン制作に協力いただいた浜井さんが下関市を拠点に活動していることから、ご縁がつながり、「ねをはす」での販売が実現しました。
京都の大学で学生が考えたアイデアが、下関のデザイナー、縫製工場、販売店舗との協働を通して一つの商品になることは、地域を越えた社会共創の実践でもあります。
商品をつくるだけでは終わらない
残糸Tシャツプロジェクトの目的は、廃棄される可能性のある素材を再利用することだけではありません。
商品をつくるためには、原材料の購入費、縫製費、輸送費、包装費、販売手数料など、さまざまな費用が発生します。その費用を回収しながら、購入する人が納得できる販売価格を設定しなければ、事業として継続することはできません。また、環境に配慮した商品であっても、お客さまに「着たい」と思っていただけなければ、長く使われる商品にはなりません。
学生たちは、次のような問いについて考えてきました。
誰に着てもらいたいのか、残糸を使うことにどのような価値があるのか、デザインや着心地の魅力をどのように伝えるのか、生産に必要な費用をどのように販売価格へ反映するのか、売れ残りを生まないためには何着製造するのが適切なのか・・・・・・。社会課題を解決するアイデアを、実際に購入してもらえる商品へ変える過程には、デザインだけでなく、経営、会計、マーケティング、広報、流通などの知識が必要です。
京都光華大学には、「起業チャレンジプログラム」があり、起業の手法を学ぶだけでなく、課題発見力や課題解決力、主体性、実行力など、これからの社会で求められる力を実践的に身につけることができます。平松准教授は過去に京都大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーの研究員として、京大発ベンチャーのスタートアップ支援にかかわったこともあり、アントレプレーナーシップをゼミ活動にも取り入れ、残糸TシャツプロジェクトをただTシャツを作るだけではなく、実際に販売することで消費者に届け、利益を生みだすというところまで取り組んでいます。
実店舗で学ぶ「お客さまに選ばれる」ということ
オンライン販売では、写真や文章を通して商品の魅力を伝えます。一方、実店舗では、お客さまが実際に商品を手に取り、生地の質感、色、縫製、サイズ感を確かめることができます。
どの色が手に取られるのか、どのような人が商品に興味を持つのか、価格やデザインはどのように受け止められるのか、どのような説明があれば、残糸やプロジェクトの背景が伝わるのか・・・・・・。
「ねをはす」という実店舗で商品を販売していただくことは、学生たちにとって、企画した商品が社会でどのように評価されるのかを学ぶ貴重な機会です。商品を完成させることがゴールではありません。実際のお客さまに知ってもらい、手に取ってもらい、購入してもらうまでが商品開発です。

クラウドファンディングにも挑戦中
学生たちは現在、残糸の購入費やTシャツの制作・縫製費、発送費などに充てる資金を募るため、クラウドファンディングサイトREADYFORでも支援を呼びかけています。
プロジェクトタイトルは、「繊維産地に眠る残糸を、着続けられるTシャツに生まれ変わらせたい!」です。募集期間は、2026年9月21日(月)23時までです。
クラウドファンディングでは、残糸Tシャツを受け取れるコースのほか、学生たちの活動を応援するコースも用意しています。この挑戦を通して学生たちは、商品の魅力だけでなく、なぜこの活動が必要なのか、どのような社会課題を解決したいのかを、支援者へ分かりやすく伝える方法も学んでいます。
社会とつながり、アイデアを形にする学び
社会学部社会共創学科では、社会学を基盤として、経営、心理、文化、データサイエンス、情報、デザインなどを分野横断的に学びます。文化共創コースでは、ファッション、化粧、芸術、伝統文化、エンターテインメントなど、文化に関わる人々と協働しながら、新しい価値を創造し、社会へ届ける力を養います。
今回の残糸Tシャツプロジェクトも、素材の課題を調べ、専門家と協働し、商品を企画し、工場で製造し、価格を考え、店舗やクラウドファンディングを通して販売する実践的な学びです。
ファッションやデザインが好き、環境問題や地域産業に関心がある、自分のアイデアを商品にしてみたい、企業や地域の人と一緒に、新しい価値を生み出したい・・・・・・。
そうした興味や関心を、社会で役立つ力へ変えていくことができます。

下関を訪れる際は、ぜひ「ねをはす」へ
夏休みや帰省、旅行などで下関を訪れる方は、ぜひ「ねをはす HOTEL BOOK & CAFE」にお立ち寄りください。学生たちが試行錯誤しながら企画した残糸Tシャツを、実際に手に取ってご覧いただけます。
一着のTシャツの背景には、残糸という素材との出会い、学生たちのアイデア、デザイナーの専門性、縫製工場の技術、販売店舗の協力があります。残糸から生まれた一着を通して、学生たちの学びと、サステナブルファッションの可能性を感じていただければ幸いです。
なお、商品の色や在庫状況、販売期間は変更になる場合があります。来店前に「ねをはす」の公式情報をご確認ください。
【販売場所】
ねをはす HOTEL BOOK & CAFE
山口県下関市秋根西町2丁目7-2
JR新下関駅から徒歩約6分
書店・カフェ営業時間:10時~20時
※営業時間や販売状況は変更になる場合があります。
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