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2023.12.19 専門分野コラム魚を情報デザインする(8) 「魚卵でお正月!」
こんにちは!
情報分野担当の辻野です。
12月の半ばを過ぎると、新年の足音が聞こえてくるようですね。みなさんは、お正月におせち料理を食べますか?
おせち料理によく使われる「かまぼこ」の原料には、スケトウダラをはじめとして様々な魚が使われています。他の料理には、どんな魚介類が使われているでしょうか?例えば、かまぼこメーカーの紀文の「全国の郷土のおせち料理」を見ると、様々な魚介類が使われていることが良く分かります。皆さんは、どんなおせち料理が好きですか?
私がこどもの頃に食べていたおせち料理には、数の子や鯛の子(煮もの)が入っていました。数の子はニシンの卵巣、鯛の子はタイの卵巣です。百貨店やホテルで売っているおせち料理には、イクラや高級品のキャビアが入っているものがあります。キャビアは、チョウザメという魚の卵です。
魚介類の卵をまとめて「魚卵」と呼びます。日本人は魚卵が好きなようで、様々な魚介類の卵を使った料理が数多くあります。今回は、使い方で分類しました。卵巣がメスの体の中に入っている状態で使う「子持ち」、卵巣をメスの体から取り出して使う「卵巣」、その卵巣に入っている卵をばらばらにしてから使う「卵」の3つです。
それぞれの「使い方」の具体例を見ていきましょう。
一つ目は「子持ち」です。卵巣が発達したメスを「子持ち」と呼び珍重されます。卵巣が発達したメスを、一匹丸ごとや、卵巣ごとぶつ切りにして調理します。「子持ちシシャモ」「子持ちアユ」「子持ちカレイ」など、多くの魚が「子持ち○○」と呼ばれて食べられています。滋賀県の「鮒ずし」は、子持ちのニゴロブナを乳酸発酵させて作ります。
二つ目の「卵巣」は、メスの体から卵巣を取り出して、そのまま使う形態です。真子とも呼び、いろいろな魚が使われています。例えば、「たらこ」はスケトウダラ、「鯛の子」はタイの卵巣(真子)です。メスのサケから取り出した卵巣が「筋子」です。他にも、ニジマス・カラフトマスの卵巣も使います。
「からすみ」は、ボラの卵巣を使って日本や台湾で作られています。その他にも、カツオ・シイラ・サワラ・ブリ・アジ・サバの卵巣でも「からすみ」を作るそうです。また、地中海の「ボッタルガ」は、ボラやクロマグロの卵巣が使われています。
三つ目の「卵」は、取り出した卵巣をバラバラの卵にしたものです。例えば、「筋子」の中に入っている卵をばらばらにしたのが「イクラ」です。サケなどが海で餌として食べる甲殻類には、アスタキサンチンが含まれています。このアスタキサンチンが体内に蓄積され、身や卵が赤くなります。一方、河川だけで育つアマゴやイワナは、甲殻類を食べないために、卵が赤くならず黄色になります。黄金いくらとも呼ばれています。
魚卵の中で一番の高級品はチョウザメの「卵」のキャビアです。まったく別のランプフィッシュという魚の「卵」がランプフィッシュキャビアとして売られており、チョウザメのキャビアと違って、お値段はとってもリーズナブルです。
寿司でも使われている「とびこ(とびっこ)」は、トビウオの卵です。
魚のメスが卵巣を持つのに対して、オスは精巣を持ちます。白子とも呼びます。寒くなると、タラやフグの白子が恋しくなります。他にも、サワラ、サケ、マス、タイ、アンコウなどを、焼いたり、茹でたり、鍋に入れたりと様々な食べ方で楽しめます。
魚以外の魚介類では、ウニは精巣と卵巣を区別せずに食べています。タコやイカの卵巣も食べます。カニやエビ・シャコも子持ちはありがたがられます。ナマコの卵巣は、数匹分を集めて乾燥させて、「クチコ」という酒の肴になります。珍しいものでは、熊本県の天草地方でヒトデの一種である「キヒトデ」の卵巣を食べるそうです。
魚の卵の食べ方の「卵」「卵巣」「子持ち」でベン図を作成すると次の図が出来上がります。魚の数は、以前書いたブログ「魚の卵の使い方」の18種から40種に増やし、精巣を食べる魚と魚以外の魚卵を追加しました。
皆さんは、どの「魚卵」が好きですか?
今までに書いたブログ
今までに私が書いた記事へのリンクを挙げておきます。
第1回:「タラの食べ方」
第2回:「魚の卵の使い方」
第3回:「お寿司のネタと生物学」
第4回:「サーモンってどんな魚?」
第5回:「お寿司の組立図」
第6回:「イクラの生物学」
第7回:「サーモンはメスの方が大切」
興味がある方はぜひご覧ください。
参考資料
書籍
- 講談社編,「旬の食材 春の魚」,講談社,2004年
- 講談社編,「旬の食材 夏の魚」,講談社,2004年
- 講談社編,「旬の食材 秋の魚」,講談社,2004年
- 講談社編,「旬の食材 冬の魚」,講談社,2004年
- 藤原昌高著,「からだにおいしい 魚の便利帳」,高橋書店,2010年
- 高橋書店編集部編,「からだにおいしい魚の便利帳 全国お魚マップ&万能レシピ」,高橋書店,2019年
ウェブサイト
- 農林水産省、「うちの郷土料理」、https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/index.html、(2023年12月13日閲覧)
- 農林水産省、「魚卵アクアリウム」、https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1901/spe2_01.html、(2023年12月12日閲覧)
- 農林水産省、「サケは赤身の魚ですか。」、https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1203/03.html、(2023年12月15日閲覧)
- 紀文、「全国の郷土のおせち料理」、https://www.kibun.co.jp/knowledge/shogatsu/database/2010local/index.html、(2023年12月11日閲覧)
- マルハニチロ、「海と魚がもっと好きになるウェブマガジン umito」、https://umito.maruha-nichiro.co.jp/、(2023年12月15日閲覧)
- マルハニチロ、「ウニは獲る必要がある水産物」、https://umito.maruha-nichiro.co.jp/article114/、(2023年12月11日閲覧)