京都光華女子大学 短期大学部 ライフデザイン学科 ニュース 魚を情報デザインする(8) 「魚卵でお正月!」

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魚を情報デザインする(8) 「魚卵でお正月!」

こんにちは!

情報分野担当の辻野です。

 

12月の半ばを過ぎると、新年の足音が聞こえてくるようですね。みなさんは、お正月におせち料理を食べますか?

 

おせち料理によく使われる「かまぼこ」の原料には、スケトウダラをはじめとして様々な魚が使われています。他の料理には、どんな魚介類が使われているでしょうか?例えば、かまぼこメーカーの紀文の「全国の郷土のおせち料理」を見ると、様々な魚介類が使われていることが良く分かります。皆さんは、どんなおせち料理が好きですか?

 

私がこどもの頃に食べていたおせち料理には、数の子や鯛の子(煮もの)が入っていました。数の子はニシンの卵巣、鯛の子はタイの卵巣です。百貨店やホテルで売っているおせち料理には、イクラや高級品のキャビアが入っているものがあります。キャビアは、チョウザメという魚のです。

 

魚介類のをまとめて「魚卵」と呼びます。日本人は魚卵が好きなようで、様々な魚介類のを使った料理が数多くあります。今回は、使い方で分類しました。卵巣がメスの体の中に入っている状態で使う「子持ち」、卵巣をメスの体から取り出して使う「卵巣」、その卵巣に入っているをばらばらにしてから使う「」の3つです。

 

それぞれの「使い方」の具体例を見ていきましょう。

 

一つ目は「子持ち」です。卵巣が発達したメスを「子持ち」と呼び珍重されます。卵巣が発達したメスを、一匹丸ごとや、卵巣ごとぶつ切りにして調理します。「子持ちシシャモ」「子持ちアユ」「子持ちカレイ」など、多くの魚が「子持ち○○」と呼ばれて食べられています。滋賀県の「鮒ずし」は、子持ちのニゴロブナを乳酸発酵させて作ります。

 

二つ目の「卵巣」は、メスの体から卵巣を取り出して、そのまま使う形態です。真子とも呼び、いろいろな魚が使われています。例えば、「たらこ」はスケトウダラ、「鯛の子」はタイの卵巣(真子)です。メスのサケから取り出した卵巣が「筋子」です。他にも、ニジマス・カラフトマスの卵巣も使います。

「からすみ」は、ボラの卵巣を使って日本や台湾で作られています。その他にも、カツオ・シイラ・サワラ・ブリ・アジ・サバの卵巣でも「からすみ」を作るそうです。また、地中海の「ボッタルガ」は、ボラやクロマグロの卵巣が使われています。

 

三つ目の「」は、取り出した卵巣をバラバラのにしたものです。例えば、「筋子」の中に入っているをばらばらにしたのが「イクラ」です。サケなどが海で餌として食べる甲殻類には、アスタキサンチンが含まれています。このアスタキサンチンが体内に蓄積され、身やが赤くなります。一方、河川だけで育つアマゴやイワナは、甲殻類を食べないために、が赤くならず黄色になります。黄金いくらとも呼ばれています。

魚卵の中で一番の高級品はチョウザメの「」のキャビアです。まったく別のランプフィッシュという魚の「」がランプフィッシュキャビアとして売られており、チョウザメのキャビアと違って、お値段はとってもリーズナブルです。

寿司でも使われている「とびこ(とびっこ)」は、トビウオのです。

 

魚のメスが卵巣を持つのに対して、オスは精巣を持ちます。白子とも呼びます。寒くなると、タラやフグの白子が恋しくなります。他にも、サワラ、サケ、マス、タイ、アンコウなどを、焼いたり、茹でたり、鍋に入れたりと様々な食べ方で楽しめます。

 

魚以外の魚介類では、ウニは精巣と卵巣を区別せずに食べています。タコやイカの卵巣も食べます。カニやエビ・シャコも子持ちはありがたがられます。ナマコの卵巣は、数匹分を集めて乾燥させて、「クチコ」という酒の肴になります。珍しいものでは、熊本県の天草地方でヒトデの一種である「キヒトデ」の卵巣を食べるそうです。

 

魚の卵の食べ方の「」「卵巣」「子持ち」でベン図を作成すると次の図が出来上がります。魚の数は、以前書いたブログ「魚の卵の使い方」の18種から40種に増やし、精巣を食べる魚と魚以外の魚卵を追加しました。

皆さんは、どの「魚卵」が好きですか?

 

今までに書いたブログ

今までに私が書いた記事へのリンクを挙げておきます。

 

1回:「タラの食べ方」

2回:「魚の卵の使い方」

3回:「お寿司のネタと生物学」

4回:「サーモンってどんな魚?」

5回:「お寿司の組立図」

6回:「イクラの生物学」

7回:「サーモンはメスの方が大切」

 

興味がある方はぜひご覧ください。

 

参考資料

書籍

  • 講談社編,「旬の食材 春の魚」,講談社,2004
  • 講談社編,「旬の食材 夏の魚」,講談社,2004
  • 講談社編,「旬の食材 秋の魚」,講談社,2004
  • 講談社編,「旬の食材 冬の魚」,講談社,2004
  • 藤原昌高著,「からだにおいしい 魚の便利帳」,高橋書店,2010
  • 高橋書店編集部編,「からだにおいしい魚の便利帳 全国お魚マップ&万能レシピ」,高橋書店,2019

 

ウェブサイト

 

画像(魚,料理)