「避難所に行けば助かる」─そう信じていませんか?実は、自宅に留まり避難生活を送る「在宅避難」の方が、QOL(生活の質)と安全を両立できるケースもあります。
私、辛いものがあまり得意ではないんです。韓国に行った際、立ち寄った定食屋でキムチがついてきたんですね。私は食事を残すのが絶対に許せないタイプなので、頑張って食べました。あと一切れ、これを食べたらクリア−そう思って口に入れた矢先、気前の良い?店員さんが「ハイ!」と元気よくキムチを山盛り入れてこられました。おかわり無料の店だったんですね。涙目になっておかわり分も食べ切ったサトウですこんにちは。本場のは辛いよ!
「ここさえ凌げば安心」という思い込みが、次の絶望を招く。これは避難所生活も同様です。避難所は「命を守る場所」ではありますが、決して「安らげる場所」ではありません。この記事では、自宅に留まって避難する「在宅避難」があなたの命を守る正解になることがあることと、その判断基準を解説します。
- 「地震が来たらとにかく避難所へ」と思っている方
- マンション暮らしで「自宅に居ていいの?」と迷っている方
- 高齢の家族やペットと同居しており、避難の判断に悩んでいる方
「避難所に行けば助かる」に潜むリスク
避難と聞くと、避難所へ行くことを想像する方が多いと思います。避難所は確かに、自宅が危険な状態になったときの重要な命綱です。しかし、避難所がすべての人にとって「安全な場所」とは限りません。
過去の大規模災害では、避難所においても様々な問題が発生しています。
令和6年能登半島地震(2024年)でも、生活環境面から避難所の様々な課題が報告されています。避難所に逃れたにもかかわらず、健康を損なう状況が生まれました。
参考:内閣府「令和6年能登半島地震における避難所運営の状況」
避難の種類
避難の種類は大きく以下の4つに分けられます。
指定された避難所等へ行き避難生活を送る
自宅で避難生活を送る
自家用車等で避難生活を送る
少し離れた場所で避難生活を送る
「避難」という漢字は「難を避ける」と書きますね。つまり、被災したときに「難を避けられる方法」を自分で選択して行動することが避難です。「避難所へ行くこと」がゴールではありません。
参考:福知山市「避難の種類」
在宅避難を判断する3つの条件
では、自宅にとどまる在宅避難が好ましいのはどんなケースでしょうか?大きく3つの条件があります。
条件1:自宅が安全で、周辺にハザードリスクがない
「自宅が安全かどうか」は、在宅避難を判断するうえで最重要条件です。具体的には以下の3点を確認してください。
自治体が公開しているハザードマップで自宅の状況を確認することが基本中の基本です。「見たことがない」という方、今夜確認してください。それだけで在宅避難の判断精度が大きく上がります。
なお、水害や台風等の災害は、事前に被害の程度が想定できる「進行型災害」と分類されています。これらの災害では、事前に「避難情報」が自治体から発令されます。

- レベル4「避難指示」が発令された場合、危険な場所にいる全員が避難する必要があります。在宅避難の条件を満たしていても、避難指示が出ている場合は従うようにしましょう。
- レベル3「高齢者等避難」では、避難に時間を要する方(避難行動要支援者)は優先して避難の検討が必要です。
参考:内閣府「避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月)」
条件2:建物の耐震性が確保されている
1981年(昭和56年)以前に建てられた建物は「旧耐震基準」が適用されており、現行の耐震基準を満たしていない場合があります。築年数の古い木造住宅にお住まいの方は要注意です。
比較的安全。ただし実際の建物の状態は要確認。
専門家による耐震診断を検討してください。
マンション・集合住宅の場合も、建物全体が大きく損傷していなければ、在宅避難が大きな選択肢となり得ます。耐震基準に関する詳細はこちらの記事もご確認ください。
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条件3:最低限の生活物資がある
在宅避難で命をつなぐには、自宅に備蓄が必要です。政府は「最低3日分、できれば1週間分」の備蓄を推奨しています。最低でも水・食料・トイレ対策の3点がそろっていれば、在宅避難の実現可能性は上がります。ただし、ここで忘れてはならないのが、「建物が無事でも、ライフラインは止まる」という事実です。 電気・ガス・水道、そして特にマンションで致命的となる「排水制限(トイレが流せない)」が起きた際、その環境で1週間過ごせるだけの物資が揃っているか。 建物が残っていても、「生活インフラ」が死んでいれば、そこは避難所ではなくただの不便な空間です。 備蓄の有無が、在宅避難の「継続可否」を分ける境界線になります。
ただし、必要最低限の生活物資が揃っていなくても、最寄りの避難所で支援を受けられることもあります。備蓄についての詳細はこちらの記事をご参照ください。
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「要配慮者」「ペット」がいる場合は特に在宅避難への備えを
前のセクションの3つの条件を満たしていることを前提として、ご家族の中に高齢者・障害者・乳幼児・妊婦の方がいる場合、避難行動に時間がかかることに加え、通常の避難所では生活面の困難も考えられます。こうした場合、自宅避難の方が好ましいケースもあります。ただし医療・福祉面での支援が必要な方には「福祉避難所」への避難を検討してください。福祉避難所については、また別の記事でまとめたいと思います。
参考(京都市の場合):京都市「福祉避難所について」
また、ペットがいるご家庭の場合、避難所でペットと一緒に過ごせるかは避難所の受け入れ体制によって異なります。要配慮者の場合と同様に、在宅避難を有力な選択肢として考えられるように日頃から備えておきましょう。
在宅避難にもデメリットはある
ここまで在宅避難のメリットを中心にお伝えしてきましたが、在宅避難にも不利な点があります。もっとも大きいのは「支援が受けにくい」点です。在宅避難はプライバシーが守られる反面、避難者の状況が周囲に伝わりにくくなります。普段から地域とのつながりをつくっておき、在宅避難していることを周囲に伝えておくことが重要です。
加えて、復旧・復興に関する情報が得られにくいことも挙げられます。こうした情報は避難所に届けられることも多いため、在宅避難をしていても(無理のない範囲で)最寄りの避難所へ出向いて情報収集を行うようにしましょう。自治体のウェブサイトで情報収集すること、災害が起きる前から自治体のSNS登録を行っておくなど「情報難民」とならないような対策を行うことも大切です。
在宅避難に備えるために今日できること
在宅避難を現実的な選択肢にするためには、「今日からの準備」が必要です。以下の3ステップを参考にしてください。
国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」や自治体のウェブサイトで、自宅周辺の浸水・土砂・津波リスクを確認しましょう。5分でできます。
築年数と耐震基準を確認しましょう。不安があれば、自治体の耐震診断制度を利用してください。
- 水:1人1日3Lが目安。3日分なら9L、1週間分なら21L。
- 食料:加熱不要か最小限の調理で食べられるもの。
- 携帯トイレ:断水時の必需品。1日5回を目安に備える。
- 常備薬・衛生用品:医薬品は避難所では入手困難。
- ローリングストックを実践:期限切れを防ぎながら備蓄を維持できる。
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まとめ:「正解の避難」は一つではない
- 「避難所=安全」は思い込み。過密・感染症・関連死のリスクがある。
- 自宅の建物が安全で、ハザードリスクがなく、備蓄があるなら「在宅避難」が有力な選択肢。
- 「建物が危険」「ハザードリスクあり」「避難指示が出ている」のどれかに該当したら迷わず避難所へ。
- 在宅避難にも備えが必要。普段からの実践が不可欠。
「正解の避難」は一つではありません。大切なのは、事前に自分の状況を把握し、判断基準を持っておくことです。
今日やることはひとつだけです。ハザードマップで自宅の場所を確認してみてください。それが「自分はどこに逃げるべきか、逃げなくていいか」の最初の判断材料になります。
「ちょっと防災」、今日から始めてみてください。
このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
実際の災害時は現場の状況に応じた柔軟な判断が求められます。記事に含まれる情報の活用は読者の皆様の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。また、記事の内容は大学の公式な見解や推奨を意味するものではありません。なお、記事に含みうる誤りに関する一切の責任は筆者に帰属します。
