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教員コラム

「エイリアンミー」  

さて、前回は長男十兵衛(愛称ジュウ)のお話(←前回のお話はこちらをクリック)でしたが、今回は、長女ミミ(愛称ミー)のお話です。

 ジュウに別れを告げる時に、お父さんがジュウに「保護犬をジュウの代わりに幸せにするから」と、約束をしたのです。私は、ジュウ以外の子と暮らすなんて考えられませんでしたけれど、お父さんに何度も言われて、インターネットで民間の犬の保護団体を見つけ、譲渡会に行くことにしました。本当は、公立の施設が近くにあるのですが、飼い主の年齢制限があって引っかかってしまうのです。


 冬の寒い日でした。施設は田んぼに囲まれたところにありました。途中にはその施設に「出ていけ」という看板が立っていました。汚水を処理しないで川に流しているらしく、農家さんが怒ってしまったのです。確かに、施設の近くに行くとひどいにおいがしていました。


 その日は多くの人たちが来ていました。そして譲渡会が始まると、私たちは施設の中の犬たちを見て回りました。雨ざらしで鎖につながれ、糞尿まみれで震えている犬たちを見ることは辛いことでした。ほとんどの人たちは子犬のブースだけを見ていました。子犬はゲージに入れられ、建物の中に展示されていました。そこで生まれたのか、生まれた子を引き取ったのか分かりませんが、生後1年に満たない子たちでした。もちろん雑種犬です。


 私たちは、雨ざらしになっている犬を見て回りました。そこでミーに会ったのです。ひどく汚れて、やつれていました。近くへ寄っても吠えもせず、じっと見上げているだけの子でした。おそらくイングリッシュセターだと思われました。猟師さんが狩りに連れていく犬です。銃で撃たれた獲物のところに走っていく犬です。たまに、走って行ったまま山で迷って帰ってこない子がいるようで、ミーもそんな子だったのかなと思いました。


 そこから引き取るには、避妊手術代や手続き料を何万円も払うのですが、私たちはミー(そこではミーネと呼ばれていました)を引き取ることにして、手続きを済ませました。5~6歳のようでした。連れて帰る前にシャンプーをしてくれるというので、長い時間待っていたのですが、汚いままで連れてこられました。少しぐらい洗っても取れない汚れだったのです。


 家に帰って、温かいお粥を作ってあげました。それを食べて、ミーは我が家の長女になりました。トイレットトレーニングがされていないので、あちこちにおしっこをします。雑巾とファブリーズを持って、私たちが走り回る日が続きました。それまで散歩にも連れて行ってもらっていなかったのでしょう。少ししか歩けませんでした。


 ジュウとの約束通り、私たちはミーをかわいがり、獣医さんに連れて行って、健康診断やワクチン接種をしてもらいました。すると先生が「この子は心臓が悪い。心拍がひどく遅くて少ない。いつ死んでもおかしくない。この汚れはおしっこ焼けだな」と言い、「だまされたんだよ、返しておいで」と言われました。でも、その施設を見た私たちには、ミーをそこへ返すなんてできませんでした。お風呂で洗って、散歩に連れていき、大事にしました。


 ところがです!ミーは、お父さんには絶対逆らわないのに、私がミーの頭をなでに行くと、歯をむき出してうなるのです。その姿はまさしくエイリアンでした。こうしてミーは「エイリアンミー」という忌み名をつけられることになりました。だからと言って、私にかみつくわけではなく、食べ物をねだりに来たり、毎晩、私のベッドに上って来て眠るのでした。ジュウもそうでしたけれど、お父さんのベッドではなく、なぜか私のベッドなのです。


 猟犬だったからかもしれません。一度、川へ散歩に行った時、そこにいる水鳥(? 魚?)に襲い掛かり、口の周りを血まみれにして帰ってきたことがありました。


 そうして1年がたち、ミーはすっかり元気になり、汚れていた身体は真っ白になりました(耳だけ黒です)。シンデレラのように変身したのです。でも、シャンプーも一緒に眠るのも私なのに、なぜかずっとエイリアンミーでした。


 ミーも賢くなってお留守番が出来るようになりました。ある日、私たちは親戚の法事があり、朝から出かけていました。夕方に帰ってくると、ミーがウッドデッキで寝ているようでした。でも、すぐおかしいと気づきました。ゆすっても起きないのです。ミーはとても穏やかな顔で亡くなっていました。突然死でした。


 後日、獣医さんに余った薬を返しに行くと、獣医さんの奥さんが「かわいそうに」と泣いてくれました。やっときれいな身体になって、走れるようになって、もっともっと幸せな生活が待っているというのに。。。


 ミーも虹の橋のたもとに行きました。ジュウと仲よく遊んでいるでしょうか。


 私たちは、また泣き暮らす日々に戻ってしまいました。。。

 To be continued.



言語聴覚専攻教員
松田 芳恵

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京都光華女子大学 健康科学部 医療福祉学科 言語聴覚専攻 (koka.ac.jp)

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