2026.03.10 ぼうさいらぼ

「3.11」東日本大震災が変えた防災の考え方4つ−15年前の教訓を、あなたの今日の行動に変える

3月11日は東日本大震災が発生した日です。2011年に発生し、2026年で15年が経過しました。

東日本大震災は「防災の考え方」を大きく変えました。3.11によって「それだけでは足りない」「そもそも間違っていた」と更新されたものが多くあります。

この記事では、防災の考え方を変えた3.11の教訓を4つだけ整理します。大事なのは知識ではなく、この記事を読んであなたがどう行動するかです。

この記事でわかること
こんな人におすすめ!
  • 3.11を「過去の出来事」として眺めていた方
  • 「なんとなく備えているつもり」の方
  • 防災の「知識」を「行動」に変えたいすべての方

教訓1:「津波てんでんこ」で逃げる

「てんでんこ」とは岩手県三陸地方に古くから伝わる言葉で、「各自」「それぞれに」という意味です。そして「津波てんでんこ」という言葉は「津波が来たら、親でも子でも、人のことはかまわずに、各自でバラバラに急いで逃げろ」という意味です。家族の安否を確認しに行く時間が被害を広げる。家族を探して引き返した人がそのまま飲み込まれた事例が3.11でも多数記録されています。

岩手県釜石市では「釜石の奇跡」と呼ばれる事例があります。鵜住居地区にいた小中学生約570人の全員が津波から生き残ったのは、「率先避難者になれ」「自分の命は自分で守れ」という教育を繰り返し受けてきたからでした(片田, 2012)。家族を待たず、先生の指示を待たず、自分の判断で高台へ逃げた。その行動が命を救いました。
ただし、「津波てんでんこ」自体には重層的な意味を含む、非常に重い言葉です。これについては次の記事で紹介したいと思います。

今日からできる行動
家族と「津波が来たら待たずに逃げる・逃がす」という共通認識を作っておきましょう。集合場所と、万が一会えなかった場合の連絡手段(災害用伝言ダイヤル171など)も決めておくこと。
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教訓2:「大丈夫」という感覚が命を奪う:正常性バイアス

3.11の死亡・行方不明者が2万人近くに上った背景には、「津波警報が出ているのに逃げなかった」人も少なからずいたという事実があります。なぜ逃げなかったのか。「この程度では大したことにならないだろう」「前回の警報のときも何もなかった」という心理が働いたのです。

これを「正常性バイアス」と言います。人間は自分にとって都合の悪い情報(危険のサイン)を「たいしたことはない」と過小評価することで、精神的な安定を保とうとします。日常生活ではこのバイアスは心理的コストを下げる合理的な機能ですが、いざ本当の災害が来たとき、逃げ遅れる原因になります。

「釜石の奇跡」との対比
釜石の子どもたちが生き残れた理由の一つは、「津波が来るかもしれない」ではなく「津波は必ず来る。だから今すぐ逃げる」という思考に切り替えられていたからです。「空振りでもいい、逃げることは恥ずかしくない」という教育を繰り返し受けていたことが、正常性バイアスを上書きしていました。
今日からできる行動
「警報が出たら迷わず動く」という行動ルールを事前に決めておくこと。「考える前に体が動く」状態を作るのが対策です。避難場所・避難経路を今のうちに確認しておきましょう。

教訓3:「避難所に行けば助かる」→「避難所は安全でも快適でもない」

「大きな地震が来たら避難所へ」。それはある意味正しい考え方です。しかし東日本大震災では、避難所の収容能力をはるかに超える人数が殺到し、避難所に入れない人が続出しました。加えて3.11では、避難所での「関連死」という問題が深刻でした。復興庁の調査では東日本大震災の震災関連死は3,808人(2024年12月時点)にのぼります。直接的な津波被害を生き延びた後、避難生活がきっかけで亡くなった方々です。避難所での生活が原因となる場合は過密・衛生環境の悪化・プライバシーのなさ・慣れない環境によるストレスなど多岐にわたります。

避難所に行くべき状況

自宅が倒壊・半壊・浸水している、または余震による倒壊リスクが高い場合

在宅避難が選択肢になる状況

自宅が安全で、1週間以上の備蓄があり、ライフライン復旧まで自宅で安全に過ごせる場合

「避難所に行けば全部解決する」という考えは改める必要があります。逆に言えば、家が安全で備蓄があれば、在宅避難の方が体への負担が少ないケースもあります。

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今日からできる行動
自宅の耐震性・備蓄状況を確認し、「自分は在宅避難できるか」を考えてみましょう。在宅避難には1週間以上分の食料・水・トイレの備えが必要です。

教訓4:「3日分の備蓄があれば十分」→「1週間分を推奨」

「非常食は3日分」と思っていた方も多いと思います。実際に東日本大震災が起こるまで、防災基本計画では家庭での備蓄の目安を「3日分」とされていました。しかし3.11では、大規模広域災害では支援物資が3日では届かないという現実を知らされました。

東日本大震災では、被災地への道路寸断・物流麻痺により、支援物資が行き渡るまでに1週間以上かかった地域が多数ありました。現在の防災基本計画においては、家庭での備蓄目安を「最低3日間、推奨1週間」に改訂しています。

南海トラフ地震ではさらに長期化の可能性
南海トラフ地震の被害想定では、静岡〜九州の広範囲が同時に被災するため、外部からの支援が届くまでに東日本大震災よりさらに時間がかかる可能性が指摘されています。専門家の中には「2週間分」を推奨する声もあります。

一人暮らしの大学生や新社会人が1週間分の備蓄を一度にそろえようとすると、費用もスペースも大変です。そこでおすすめなのが「ローリングストック」。普段の食材を少し多めに買い、使いながら補充する方法です。

今日からできる行動
今日の買い物で「いつものものを2個多く」買うところから始めましょう。
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今回の4つの教訓まとめ

今回のポイントまとめ
  1. 津波は「てんでんこ」で逃げる。一人ひとりが逃げることが大勢を救う
  2. 「大丈夫だろう」という感覚(正常性バイアス)を自覚し、行動ルールを事前に決める
  3. 避難所は必ずしも安全・快適ではない。在宅避難の選択肢を持つ
  4. 備蓄は「3日」ではなく「1週間以上」が推奨

東日本大震災は、いくつもの「想定外」が起こった災害でした。防災では「想定外に備える」ことも非常に重要です。

震災の教訓をもとに「ちょっと防災」、今日から始めてみてください。

Author

サトウ先生|博士(工学) / 防災士
京都光華女子大学 社会学部 社会共創学科
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このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
実際の災害時は現場の状況に応じた柔軟な判断が求められます。記事に含まれる情報の活用は読者の皆様の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。また、記事の内容は大学の公式な見解や推奨を意味するものではありません。なお、記事に含みうる誤りに関する一切の責任は筆者に帰属します。

参考・出典
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