こんにちは!歯科衛生学科の辻野です。
「フグ」といえば…
みなさんは、「フグ」と聞くと、どんな種類の「フグ」を思い浮かべますか?
私の場合、最初に頭に浮かんだのが「トラフグ」です。(相変わらず食べ物ネタから離れられません)

図1 トラフグ
そして2番目に浮かんだのは、「ミナミハコフグ」の幼魚、私の「推し」です。

図2 ミナミハコフグ(幼魚)
トラフグなどの食用フグを思い浮かべた人も多いのではないでしょうか。
縄文時代の貝塚から、他の魚の骨に混ざって、フグの骨が出土します。このため、縄文人もフグを食べていたことが分かっています(植月 2021)。
水族館で会える、学べる
フグの仲間は、多くの水族館で会えます。その中でも、特にフグ目の飼育と展示に力を入れているのが、山口県にある市立しものせき水族館「海響館」です。そのウェブサイトで、フグの魅力を紹介しています。
この他にも、水族館のウェブサイトの「生き物図鑑」で、「フグ」や調べたい魚の名前で検索すると、写真や様々な情報を得ることができます。ぜひ、お試しください。
- 葛西臨水族園(東京都) 生き物図鑑
- 海遊館(大阪府) 海遊館の生きもの図鑑
- 鳥羽水族館(三重県) 生きもの図鑑
- 美ら海水族館(沖縄県) 美ら海生き物図鑑
フグ目(Tetraodontiformes)について
フグの仲間(フグ目)は、世界中の浅い海から深い海、近海から外洋まで、いろいろな環境に生息しています。中には、淡水にすんでいるフグがいます。フグ目は、魚のデータベースであるFishBase(http://www.fishbase.org/)に10科450種の魚が登録されています(2026年5月7日現在)
表1 フグ目の科と種数

フグ目の魚は、身体の構成要素を省略して単純化する傾向にあります。ウチワフグ以外は、肋骨が消失か、ほとんどありません。フグ科、ハコフグ科、イトマキフグ科、ハリセンボン科、マンボウ科は腹鰭がありません。マンボウは、尾鰭もありません。また、フグ科、ハリセンボン科・マンボウ科・ウチワフグ科の魚は歯が癒合して嘴のようになっています。
フグ科の学名はTetraodontidaeです。ギリシャ語で「tetra」は4、「odon」は歯を意味しまず。歯は、上あごに2枚、下あごに2枚の合計4枚です。歯は癒合してくちばし状になっていて、歯板と呼びます。余談ですが、tetraは化合物の名前にも使います。大学1年生の化学の授業のIUPAC命名法で習いました。
ハリセンボン科(Diodontidae)は学名どおり、歯は合計2枚です。上顎と下顎の歯が、それぞれ癒合して嘴状になっています。マンボウ科(Molidae)も同じように歯が2枚です。ウチワフグ科(Triodontidae)も学名どおりで、上顎の歯は2枚、下顎の歯が1枚です。
フグ目の科ごとの歯の特徴をまとめたのが次の図です。

図3 フグ目の科ごとの歯の特徴
ふたたび脱線しますが、今度は分類の話です。脊椎動物の中に「四肢動物」というグループがあり、学名では「Tetrapoda」です。「poda」の意味は肢です。四肢動物には、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類を含みます。当然のことながら、我々「ヒト」も四肢動物です。
話をフグに戻して、10科あるフグ目の中から、フグ科とハコフグ科を紹介しましょう。
フグ科(Tetraodontidae)
フグ科には、トラフグ、サバフグ、クサフグといった多くの食用フグが含まれます。
トラフグ(Takifugu rubripes)
トラフグは、フグ科(Tetraodontidae)の魚です。美味しいのですが、部位によっては猛毒のテトロドトキシンを含みます。
トラフグは、冬に美味しくなる白身魚です。どうでもいい話ですが、刺身は「てっさ」より「ぶつ切り」、鍋は「てっちり」より最後の「雑炊」が好きです(笑)。でも、毎回全部を美味しくいただいております。
トラフグは、猛毒の卵巣を持つメスよりも、無毒の精巣(白子)を持つオスの価値が高い魚です。このため養殖では、オスだけが生まれる技術が開発されています(読売新聞 2026)。
テトロドトキシン
テトロドトキシンは、フグの種類によって含まれている部位が異なる神経毒です。加熱調理をしても無毒化されないため、フグの調理には都道府県ごとに定めている資格が必要です。こういった資格が整備される前の私の祖父母の世代では、個人で料理して食べることもあったようです。
フグ毒を研究して「テトロドトキシン」と命名したのは日本人で、1909年のことです(酒井 1995)。
ところで、「GUN FISH/ガンフィッシュ」という映画が公開されます。食べる「フグ」の話です。公式サイトのトップページの下の方に予告編があるので、興味があればご覧ください。
テトロドトキシンは、フグの体内での生成するのではなく、食物連鎖の過程で体内に蓄積します。このため、フグ以外にも、テトロドトキシンを持っている生物がいます。魚以外では、ヒョウモンダコやアカハライモリなどです。
クサフグ(Takifugu alboplumbeus)
クサフグは、浅瀬で集団産卵する魚です。この様子は、次に挙げる鹿児島県立博物館以外からも多数の動画がYouTubeで公開されています。
- 動画(YouTube):鹿児島県立博物館「クサフグの産卵」
アマミホシゾラフグ(Torquigener albomaculosus)
アマミホシゾラフグは、2014年に新種として登録され、2015年に世界の新種Top10に選ばれ、2016年に絵本が出ました(絵本)。オスが海底の砂地にミステリーサークルのような産卵床を作り、メスを誘って産卵を促します。
ハコフグ科(Ostraciidae)
ハコフグ科の特徴は、固い甲羅のような体です。全身が、鱗から変化して骨のように固くなった骨板で覆われています。皮膚から毒のパフトキシンを分泌します。歯は、上顎に10本、下顎に8本の合計18本です。
私が学生の頃は、ハコフグ(Ostracion immaculatus)は食べることができると言われていたのですが、1990年代以降に食中毒が発生しています。原因は、パトリキシン様毒と考えられています(谷山 2009)。
ミナミハコフグ(Ostracion cubicum)
私の「推し」フグは、「ミナミハコフグ」の幼魚です。

ミナミハコフグ(幼魚)
黄色の体に黒の水玉模様がラブリーで、まるで黄色いサイコロです。鱗が硬い甲羅状に変化しているため、身体を曲げて泳ぐことができません。そのため鰭を一生懸命に動かして、懸命に泳ぎます。
身体が黄色いのは幼魚の時までで、成長すると地味な色に変わります(ちょっと残念)。ミナミハコフグの学名は、Ostracion cubicumです。リンネが1758年に命名しました。学名を正式に書くと次のようになります。
Ostracion cubicum Linnaeus, 1758
「日本産魚類全種の学名」(中坊・平嶋 2015)によると、属名のOstracion(ハコフグ属)は、貝や貝殻を意味するようです。また、種小名のcubicumは、立方体という意味です。
フグの歯
「図3 フグ目の科ごとの歯の特徴」を中心にしてインフォグラフィックを作成したのが次の図です。

図4 フグ目(Tetraodontiformes)の歯
過去の記事
私が教員ブログで書いた記事へのリンクを挙げておきます。興味がある方はぜひご覧ください。
- 魚を情報デザインする(1)「タラの食べ方」
- 魚を情報デザインする(2)「魚の卵の使い方」
- 魚を情報デザインする(3)「お寿司のネタと生物学」
- 魚を情報デザインする(4)「サーモンってどんな魚?」
- 魚を情報デザインする(5)「お寿司の組立図」
- 魚を情報デザインする(6)「イクラの生物学」
- 魚を情報デザインする(7)「サーモンはメスの方が大切」
- 魚を情報デザインする(8)「魚卵でお正月!」
- 魚を情報デザインする(9)「サケ目からアユがいなくなった」
- 魚を情報デザインする(10)「お寿司の分類」
- 魚を情報デザインする(11)「お寿司の分類(形×ネタの生きもの)」
参考資料
- 江口絵里(文)・大方洋二(写真)・友永たろ(絵). (2016). アマミホシゾラフグ 海のミステリーサークルのなぞ. ほるぷ出版.
- FishBase. https://www.fishbase.org/. (閲覧日: 2026年5月7日)
- Flaum, B., Blumer, M. J., Dean, M. N., & Ekstrom, L. J. (2024). Functional morphology of the pharyngeal teeth of the ocean sunfish, Mola mola. Anatomical Record (Hoboken, N.J.: 2007), ar.25531. https://doi.org/10.1002/ar.25531.
- Gomes-Pereira, J. N., Pham, C. K., Miodonski, J., Santos, M. A. R., Dionísio, G., Catarino, D., Nyegaard, M., Sawai, E., Carreira, G. P., & Afonso, P. (2023). The heaviest bony fish in the world: A 2744-kg giant sunfish Mola alexandrini (Ranzani, 1839) from the North Atlantic. Journal of Fish Biology, 102(1), 290–293.
- 後藤仁敏. (2024). 図説 歯からみた生物の進化. 朝倉書店.
- 映画『GUN FISH/ガンフィッシュ』公式サイト. https://gunfish.keyholderpictures.com/. (閲覧日: 2026年8月26日) .
- イラスト https://www.ac-illust.com/. (閲覧日: 2026年8月21日).
- いらすとや. https://www.irasutoya.com/. (閲覧日: 2026年5月27日).
- JMC. CT生物図鑑. https://ctseibutsu.jp/. (閲覧日: 2026年7月17日) .
- 鹿児島県立博物館. (2020年 5月 27). クサフグの産卵. https://www.youtube.com/watch?v=2ZeAPdebmIM. (閲覧日: 2026年8月25日).
- 木村清志(編). (2010). 新魚類解剖図鑑. 緑書房.
- 厚生労働省. 安全なフグを提供しましょう. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000094363.html. (閲覧日: 2026年7月15日) .
- 松浦啓一・宮正樹. (1999). 魚の自然史: 水中の進化学. 北海道大学図書刊行会.
- Matsuura, K. (2015). Taxonomy and systematics of tetraodontiform fishes: a review focusing primarily on progress in the period from 1980 to 2014. Ichthyological Research, 62(1), 72–113.
- 中坊徹次・平嶋義宏. (2015). 日本産魚類全種の学名–語源と解説. 東海大学出版会.
- 農林水産省. ふぐの子のぬか漬け(ふぐのこのぬかづけ)|にっぽん伝統食図鑑. https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/traditional-foods/menu/hugunoko_no_nukazuke.html. (閲覧日: 2026年8月24日).
- 農林水産省. ふぐの子の粕漬け 新潟県. https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/fuguno_ko_no_kasuzuke_niigata.html. (閲覧日: 2026年8月24日)
- 酒井浄. (1995). フグ毒百年. Medchem News, 5(1), 10–12.
- 市立しものせき水族館「海響館」. https://www.kaikyokan.com/. (閲覧日: 2026年8月25日)
- 市立しものせき水族館「海響館」. (2022年8月). アマミホシゾラフグの産卵と繁殖. https://www.youtube.com/watch?v=ZkCIEd0l7ms. (閲覧日: 2026年8月26日)
- 厚生労働省健康・生活衛生局食品監視安全課 水産安全係.自然毒のリスクプロファイル:魚類:パリトキシン様毒 詳細版. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/poison/animal_det_03.html. (閲覧日: 2026年7月28日).
- 田原良純. (1909). 河豚毒素研究報告. Yakugaku Zasshi [Journal of the Pharmaceutical Society of Japan], 1909(328), 587–625.
- Taniyama S., Sagara T., Nishio S., Kuroki R., Asakawa M., Noguchi T., Yamasaki S., Takatani T., & Arakawa O. (2009). ハコフグ類の喫食による食中毒の実態と同魚類の毒性調査. Shokuhin eiseigaku zasshi. Journal of the Food Hygienic Society of Japan, 50(5), 270–277.
- 植月学. (2021). 縄文時代の湾奥貝塚より出土するフグ科魚類の研究. 古代, 147, 7–32.
- 海の仲間たち®. https://uminonakamatachi.com/. (閲覧日: 2026年7月9日).
- 山野上祐介. (2015). フグ目魚類の多様性と系統,そして分類(第12回日本動物分類学会奨励賞受賞記念論文). タクサ:日本動物分類学会誌, 39, 1–16.
- 読売新聞. (2026). トラフグ「全雄化」で技術賞. 読売新聞, 2026年3月25日. 朝刊. 25.
