2026.05.20 ぼうさいらぼ

ハザードマップの「読み方」で、知識が行動に変わる:色の意味から使い方まで、実践的に解説します

ハザードマップを確認する人の手元の写真。右上に「防災士/研究者が解説」のバッジ、中央に「ハザードマップの読み方で、知識が行動に変わる」のテキストが重ねられた記事サムネイル

「ハザードマップを確認しましょう」このブログでも何度かそう書いてきました。でも、皆さんは実際に行動に移せていますか?
「行けたらいくわ」。これ、関西だと「行かない」の意味が強いんですよね。でも、どうやら調べてみたら、関東ではまだ「なんとかして行こうと思っている」というニュアンスも含まれるようなんです。南国出身のわたしも、どちらかというと関東寄りですかね…と思っていたんですがえっなになに?今日のミーティング?行けたら行くわ(行きたくない)。どうやら今は関西に染まりつつあるサトウですこんにちは。本当に行きたくないときに便利かも!

この話をハザードマップに置き換えると、「確認できたら、しとくわ」なんでしょうけど、それだといざというときに困るのは皆さんご自身です。今日は「〜〜したら」というやんわり断る文句ではなく、しっかり読んで行動に繋げる機会にしましょう。

この記事でわかること
こんな人におすすめ!
  • ハザードマップを開いたことはあるが、よくわからなかった方
  • 「確認した気になっていた」方
  • ハザードマップの情報を、具体的な行動に変えたい方

まず整理:ハザードマップには「種類」がある

ハザードマップと一口に言っても、対象とする災害によって種類が異なります。同じ地域でも、洪水用・土砂災害用・津波用・地震用と別々のマップが存在します。

主な種類

  • 水害ハザードマップ:河川の氾濫による浸水を想定。色ごとに「想定浸水深」が示される
  • 土砂災害ハザードマップ:土砂崩れ・土石流・地すべりの危険区域を示す
  • 津波ハザードマップ:津波が到達した場合の浸水域・高さを示す(沿岸部の自治体が作成)
  • 地震ハザードマップ:地盤の揺れやすさ・液状化リスクを示す

同じ色に見えても、洪水マップの「赤」と土砂災害マップの「赤」は意味が違います。どのマップを見ているかを必ず確認してください。

国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、これらを重ねて見ることができます。
ハザードマップポータルサイト

水害ハザードマップの読み方:色=想定浸水深

水害ハザードマップで最初に目に入るのが「色の違い」です。この色は「洪水が発生したとき、その場所が何メートル浸水するか」(想定浸水深)を示しています。

一般的な色分けの目安(国土交通省「水害ハザードマップ作成の手引き」に基づく)

浸水深の区分 目安となる浸水の状況
20m 〜 5階以上が水没する規模の浸水。
10m 〜 20m未満 3〜4階建て相当の建物が水没する高さ。広域的な浸水被害が想定される
5m 〜 10m未満 2階が完全に水没する。早期の水平避難(浸水しない場所への移動)が必須
3m 〜 5m未満 2階の床上程度〜天井付近が浸水。垂直避難(屋内上階)が危険になる範囲
0.5m 〜 3m未満 膝上〜2階床下程度の浸水。1階が浸水し始める範囲を含む
〜 0.5m未満 膝下程度の浸水。歩行は可能だが、転倒・流されるリスクがある

出典:国土交通省水管理・国土保全局河川環境課水防企画室(2023).「水害ハザードマップ作成の手引き」(PDF)

※自治体によって色の取り扱いは多少異なります。正確にはお住まいの自治体のハザードマップをご確認ください。

京都光華大学周辺の水害ハザードマップ。画像出典:京都市防災ポータルサイト

本学周辺の水害ハザードマップ。本学は「0.5m〜3m未満」の浸水が想定されています(画像出典:京都市防災ポータルサイト)

この数字を「自分の家」に当てはめると、行動が変わります

たとえば自宅が「想定浸水深1.0〜2.0m」のエリアにある場合:1階が浸水し、2階には上がれますが、長時間の浸水が続く可能性があります。「2階に上がれば大丈夫」ではなく、「早めに避難する」が正解になることもあります。

「想定浸水深3.0m以上」なら:一般的に、日本の家屋の2階床面高は3m程度になっていることが多く、2階が水没する可能性があります。在宅での垂直避難は危険です。早期に水平方向に避難する(浸水しない場所に移動する)必要があります。

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「家屋倒壊等氾濫想定区域」:見落としがちな重要情報

洪水ハザードマップには、浸水深の色分けとは別に「家屋倒壊等氾濫想定区域」が記載されているものがあります。

これは「堤防が決壊した場合に、激しい氾濫流や河岸侵食により家屋が倒壊・流失する危険がある区域」を示しています。

この区域内にある場合は注意が必要です

  • 想定浸水深が低くても、建物が流される可能性があります
  • 垂直避難(屋内で上階に移動する)は有効でなく、必ず早期に水平避難(浸水しない場所に移動する)が必要です
  • 自分の家がこの区域に含まれるかどうかを確認しておくことが重要です

土砂災害ハザードマップの読み方:区域の「種類」を確認する

土砂災害ハザードマップでは、色の濃淡より「区域の種類」が重要です。

土砂災害警戒区域(イエローゾーン)

土砂災害が発生した場合に、住民の生命または身体に危害が生じるおそれがある区域。警戒が必要です。

土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)

土砂災害が発生した場合に、建物が損壊し住民に著しい危害が生じるおそれがある区域。より危険度が高く、建築制限等の規制対象となります。

レッドゾーンの方がより危険度が高く、早期避難が求められます。「レッドゾーンに自宅がある」場合、大雨・台風の警報が出た時点で早めの避難を検討してください。

地震ハザードマップの読み方:揺れやすさ・液状化リスクを確認する

地震ハザードマップでは、主に2つの情報を確認します。

揺れやすさマップ

地盤の固さによって、同じ地震でも揺れの大きさが異なります。地盤が柔らかいほど(昔の川・田んぼ・埋め立て地など)揺れが大きくなります。色が濃いほど(赤系に近いほど)揺れやすいエリアです。

液状化リスクマップ

地震の揺れで地盤が液体のように軟弱化する「液状化」が起きやすいエリアを示します。液状化が起きると、アスファルトが割れ・マンホールが浮き上がり・建物が傾くことがあります。

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京都光華大学周辺の地震ハザードマップ。画像出典:京都市防災ポータルサイト

本学周辺の地震ハザードマップ。本学は「最大震度6弱」が想定されています(画像出典:京都市防災ポータルサイト)

ハザードマップが「外れる」こともある:正しい使い方の心構え

ここで大切なことをお伝えします。ハザードマップは「必ず当たる予言書」ではありません。

ハザードマップは「過去の記録と現在の科学的知見に基づいた想定」であり、実際の災害がその通りになるとは限りません。東日本大震災では、多くの地点でハザードマップの想定を超える津波が到達しました。

ハザードマップの正しい使い方は2つあります

①「載っているところは確実に危険」と理解する

ハザードマップに浸水・土砂・液状化リスクが示されているエリアは、実際にリスクがあります。「マップに載っているのに大丈夫だろう」という油断は禁物です。

②「載っていないから安全」とは思わない

マップの想定を超える災害が来る可能性があります。「マップに載っていない=安全の保証」ではなく、「マップに載っていない=現時点での想定ではリスクが低い」と理解してください。

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今日、ハザードマップを開いて確認する3つのポイント

確認1:自宅の「色」と「数字」を見る

洪水ハザードマップで、自宅がどの色のゾーンに入っているか。想定浸水深は何メートルか。「0.5m未満」と「3m以上」では、取るべき行動がまったく違います。

確認2:「家屋倒壊等氾濫想定区域」に入っているか

入っている場合は、早期の水平避難が必須です。

確認3:最寄りの「水害対応の指定緊急避難場所」はどこか

自宅が浸水リスクのあるエリアにある場合、避難先を具体的に把握しておきましょう。地震用と水害用では異なる場合があります。
ハザードマップポータルサイト

まとめ

今回のポイント
  • ハザードマップは災害の種類ごとに異なる。洪水・土砂・地震それぞれを確認する
  • 洪水マップの「色」=想定浸水深。数字を自分の家の構造に当てはめて行動を考える
  • 「家屋倒壊等氾濫想定区域」に入っている場合は、垂直避難は不可。早期の水平避難が必須
  • 土砂災害マップは「レッドゾーン(特別警戒区域)」かどうかが重要
  • ハザードマップは「最低ライン」。載っていないから安全、とは思わない

「確認した」で終わらず、「この数字が示す状況で自分はどう動くか」まで考えることが、ハザードマップを本当に使いこなすことです。

「ちょっと防災」、今日から始めてみてください。

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Author

サトウ先生|博士(工学) / 防災士
京都光華大学 社会学部 社会共創学科
「専門知識を、わかりやすく身近に。」これまで数々の自然災害を目の当たりにしてきた実体験をもとに、防災に関する大学での講義や地域での講演を行っている。南国出身のため雪にはとっても不慣れで、京都での最大の災難は大雪のときに滑ったことだと思っている。摩擦係数の計算は得意だが、雪道の滑りやすさは計算外だった。だが、その失敗さえも防災の教訓に変えてしまうのが私のスタイルだ。実に面白い。
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このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
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参考・出典
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