夏になるとプールに行く機会が増えます。泳いでいるとき、ふと思ったことはないでしょうか。「もし今、地震が来たらどうなるんだろう。このまま水の中にいた方が安全なんじゃないか」と。結論から言うと、この考え方は半分正しく、半分間違っています。水中にいること自体は落下物のリスクを減らすという意味で一定の利点がありますが、問題はその後です。プールの中、プールから上がった後、あるいはプールから上がる過程に、それぞれ見落とされやすいリスクが潜んでいます。
わたしが旅行に行くとトラブルに巻き込まれるのは、ブログを読んでくださっている方の中ではお馴染みだと思いますが(?)、今回は国内での話です。夜、ホテルの部屋で休んでいたら非常ベルが鳴り出しました。もう慣れたもの、「どうせ誤報だ」と思っていたら、日本の消防の方は優秀ですね。あっという間にホテル前に消防車と救急車が大集結しました。一応窓から地面を見ましたよ、7階くらいだったかな。「うん、飛び降りて逃げるのは無理!」と思ったのと同時に「下の階から煙が出てないからセーフ!」と訳のわからない理論で自分を納得させたサトウですこんにちは。場合によっては燻製になっていたかもしれません。
サトウの例は結局誤報だったので動かなかったことが正解でしたが、もし本当に火災で、慌てて窓から逃げようとしていたら怪我どころでは済まなかったかもしれません。「その場の直感」だけで動くことの危うさは、プールでも同じです。今回はプールでの地震対応を、「水中」「プールサイド」「施設内」の3つのフェーズに分けて整理します。
- 夏にプールや水泳をよく利用する方
- 子どもをプールに連れて行く親御さん
- 「水の中なら揺れを感じにくいから安全?」と思ったことがある方
フェーズ1「水中」:落下物リスクは減るが、別の危険がある
地震が発生した瞬間、水の中にいた場合のリスクと対応を整理します。
水中にいることの「利点」と「リスク」
プールの水が地震で大きく波立つ現象は「スロッシング」と呼ばれます。容器の中の液体が地震動に共振して大きく揺れる現象で、貯水槽や石油タンクでも報告される代表的な地震被害のひとつです。実際に、群馬県教育委員会の学校向け災害対応マニュアルでも、水泳授業中の地震で「プールの水面が波立ち、ところどころで亀裂が入る」ことを想定した対応手順が定められています。学校では、水泳の授業中に地震が起きた場合、教員が児童生徒をすぐに水から上げて衣類・履物を持たせたうえで、揺れがおさまってから避難場所へ移動させる、という手順が定められています。
さらに厄介なのは、スロッシングは震源から近い大きな揺れのときだけに起こるとは限らない、という点です。気象庁の報告によれば、周期の長いゆっくりとした揺れ(長周期地震動)は減衰しにくく、震源から数百km離れた場所まで伝わることがあります。2011年の東日本大震災では、震源から遠く離れた東京や大阪の高層ビルでも長時間の大きな揺れが観測されました。「地元では震度が小さかったから大丈夫」と思っていても、プールの水面は思いのほか大きく波立つ可能性がある、ということは覚えておいて損はありません。
子どもは特に注意が必要
水深が深い場所にいた子どもは、波立ちの影響をより強く受けます。保護者がそばにいない状況では特に注意が必要です。「うちの子は大丈夫」ではなく、揺れを感じたら真っ先に子どもの位置を確認する習慣をつけておきましょう。
水中での対応
揺れを感じたら、無理に泳ごうとせず、体を水面に浮かせるように力を抜いて、プールの壁または縁に向かって移動します。息継ぎができる状態を保つことが最優先です。あわてて遠くまで泳ごうとすると、かえって体力を消耗し、波にのまれるリスクが高まります。
フェーズ2「プールサイド」:「急いで上がる」が一番危ない
地震が発生したとき、多くの人が「早くプールから上がらなければ」と思います。しかし、揺れている最中に慌ててプールから上がることは、かえって危険です。
実は、プールサイドの床材は本来、濡れても滑りにくい素材を選ぶことが求められています。文部科学省・国土交通省「プールの安全標準指針」では、プールサイドの舗装材について「水に濡れた状態でも滑りにくい素材とする必要がある」と定められています。とはいえ、これはあくまで平常時の事故防止を想定した基準です。地面が揺れている状態で裸足のまま急いで移動すれば、どれだけ滑りにくい素材であっても転倒のリスクはゼロにはなりません。
基本的な考え方は、プール以外の場所での地震対応と同じです。東京消防庁も、火の始末など揺れている最中にあわてて対応しようとすると転倒などのけがにつながるとして、まず身の安全を最優先し、次の行動は揺れが収まってからにするよう呼びかけています。プールでも同様に、揺れている間はできる限りプール内の壁際・縁に近い場所でしっかりつかまり、揺れが収まるのを待ちます。揺れが収まったことを確認してから、ゆっくりと安全にプールから上がりましょう。
フェーズ3「施設内」:スタッフの誘導に従い、パニックを避ける
プールから上がった後は、施設内での行動が重要です。
スタッフの誘導に従う
プール施設は、地震発生時の対応マニュアルを持っています。スタッフが避難誘導を行う場合は、その指示に従うことが最善です。自己判断で動くと、他の利用者と動線が重なって混雑・転倒事故が起きやすくなります。
更衣室への移動は揺れが完全に収まってから
更衣室はロッカーが並んでおり、最初の地震で既に倒れているか、余震で倒れてくるリスクがあります。更衣室への移動は、スタッフの指示を待つか、揺れが完全に収まったことを確認してから行いましょう。
裸足・水着での屋外避難に備える
大きな地震の場合、施設からの避難が必要になることがあります。水着・裸足での屋外移動はガラスや路面の破片による怪我のリスクがあります。防災ポーチやビーチサンダルなど、最低限の持ち物をロッカーにまとめておく習慣が役立ちます。
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プールに行く前に確認しておくこと
プールで地震に遭遇するリスクは低くはありません。特に7月〜8月は利用者が多く、地震が発生した場合の混雑・パニックのリスクも高まります。事前に確認しておくと役立つことを整理します。
どの方向に逃げれば出口があるかを、入場時に確認しておきましょう。地震の後、視界が悪くなったり照明が落ちたりしたときでも、方向さえわかれば動けます。
保護者が離れた場所にいると、地震発生時に子どもを見つけることが困難になります。特に混雑した屋外プールでは、子どもから目を離さないことが重要です。
スマホの充電状態を確認しておく、ロッカーのカギを体につけておくなど、地震後にすぐ動ける準備をしておきましょう。
まとめ
- 水中にいること自体は落下物リスクを一定程度減らすが、プールの水が波立つ「スロッシング」により溺れる・方向を見失うリスクがある
- 波立ちは震源が近い大きな地震だけで起こるとは限らない。長周期地震動は遠方まで伝わることがある
- 揺れている最中にプールサイドへ急いで上がることは、濡れた床での転倒・落下物のリスクがあり危険
- 基本は「揺れている間は水中の壁・縁につかまって待つ」→「揺れが収まってからゆっくり上がる」
- 施設のスタッフの誘導に従い、自己判断での行動は避ける
- 入場時に避難口・避難経路を確認しておく
「水の中の方が安全」という直感は半分正しく、半分間違いです。正確には「揺れている最中は水中の方が落下物を避けやすいが、急いで上がることの方が危険を増やすケースがある」ということになります。
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