2026.04.23 ぼうさいらぼ

震度4なのに高層階で家具が倒れた!「長周期地震動」とは何か

高層マンションの高層階で家具が倒れているイラスト。中央に大きく「震度4なのに高層階で家具が倒れた!」、下部に「長周期地震動とは何か」と記載された、防災士・研究者監修の記事サムネイル

地震の怖さ、「震度」だけで判断していませんか?
震度だけでは測れないもう一つの指標、「長周期地震動」も意識することが重要です。

わたし、お酒があまり強くないんですね。でもまったく飲めない訳ではないので、たまーに飲むんです。沖縄に行ったとき、どうしても泡盛を飲んでみたくて。若かった?世間知らずだった?私は「一合」の意味がわからずオーダー。「おちょこくらいかな?」と思って出てきたのはまぁまぁの量の瓶。えぇ、飲み切りましたよ。帰り道は世界がぐるぐるグルグルしていたサトウですこんにちは。たぶん自分でめっちゃ揺れながら歩いてたと思います。

このように、ゆっくり、でもグルグル目が回るような揺れ、「長周期地震動」について本日は解説します。

この記事でわかること
こんな人におすすめ!
  • 「長周期地震動」という言葉を初めて聞いた方
  • 高層マンション・高層ビルで生活・勤務している方
  • 先日の地震を受けて防災を見直したい方

2026年4月20日に起きた地震の概要

2026年4月20日、三陸沖でマグニチュード7.7の地震が発生しました。青森県で最大震度5強、岩手・宮城両県で震度5弱を観測し、岩手県太平洋沿岸では80cmの津波も観測されました。津波警報・注意報はその後解除されましたが、気象庁は「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表し、今後1週間程度、より大きな地震の発生可能性が平常時より相対的に高まっているとしています。ただし気象庁は同時に「後発地震が実際に発生する確率は高くはない」「特定の期間中に大規模地震が必ず発生するということをお知らせするものではない」とも明記しており、過度に恐れるのではなく、日頃からの備えを再確認することが呼びかけられています。

また、この地震では宮城県・秋田県内陸南部で「長周期地震動(階級3)」が観測されたことも特徴のひとつです。

長周期地震動とは何か

地震が発生すると、震源から様々な種類の揺れが広がります。このうち「周期が長い揺れ」、つまり、ゆっくりと大きく、長時間にわたって揺れ続けるものを「長周期地震動」と呼びます。

「周期」とは、揺れが1往復するのにかかる時間のことです。

短周期の揺れ

周期1〜2秒以下。小刻みで速い揺れ。木造住宅や低層建物に影響しやすい。私たちが「ガタガタ」と感じる揺れはおもにこちら。

長周期の揺れ

周期2〜20秒程度。ゆったりと大きい揺れ。高層ビル・高層マンションに影響しやすい。

長周期地震動が厄介なのは、「遠くまで伝わりやすい」という性質があるからです。震源から数百km離れた場所でも、大きなマグニチュードの地震では長周期地震動が届きます。

東日本大震災(M9.0)では、震源から遠く離れた大阪や東京の高層ビルで、地上の震度は3〜4程度だったにもかかわらず、高層階では家具が大きく移動したり、エレベーターが停止したりする被害が発生しました。「揺れが小さいのになぜ?」それが長周期地震動の特性です。

長周期地震動階級とは:震度との違い

「震度」は、地表付近での揺れの強さを示す指標です。主に木造住宅や低層建物への影響を基準に作られており、高層ビルの揺れを表現するのには適していません。

そこで気象庁は、高層ビル内での揺れの大きさを別途評価するための「長周期地震動階級」という指標を導入しました(2019年に本運用開始、2023年2月から緊急地震速報にも活用)。

階級は1〜4の4段階です。

階級 1

室内にいた多くの人が感じる。ものが揺れ動く。

階級 2

室内にいた人の大半が、行動に支障を感じる。棚のものが落ちる。

階級 3

立っていることが困難。固定していない家具が倒れることがある。間仕切り壁にひびが入ることも。

↑ 今回の地震で観測
階級 4

立っていられず、這わないと動けない。固定していないほとんどの家具が移動・転倒する。

今回の地震で観測された「階級3」は上から2番目、「非常に大きな揺れ」に相当します。

重要なのは、この階級は「地上の震度」とは別物だということです。今回、秋田県内陸南部では地上の震度が4以下だったにもかかわらず、長周期地震動の階級3が観測されました。地上で「大したことなかった」と感じた人でも、高層階では全く異なる揺れに見舞われていたのです。

なぜ「震度4なのに高層階で家具が倒れる」のか

これを理解するためのキーワードは「共振」です。

建物にはそれぞれ「固有周期」があります。簡単に言えば、「最も揺れやすい揺れの周期」です。高層ビルの固有周期はおよそ数秒〜10秒程度で、ちょうど長周期地震動の周期帯と重なります。

地震の揺れの周期と建物の固有周期が一致すると、建物は大きく揺れ続けます。これが「共振」です。ブランコを例にすると、タイミングよく押し続けると小さな力でも大きく揺れていきますよね。あれと同じ現象が、高層ビルで起きているのです。

さらに、長周期地震動は「揺れが長時間続く」という特徴があります。短周期の揺れはすぐ収まりますが、長周期地震動は数分間にわたって高層ビルを揺らし続けることがあります。この「長さ」が、家具の移動・転倒や、人体への影響(船酔いに似た感覚など)につながります。

「自分には関係ない」と思っていませんか

「うちは低層の建物だから関係ない」と思った方。少し待ってください。

高層マンション・タワーマンション住まいの方はもちろんですが、以下の方々も他人事ではありません。

通学・通勤先が高層ビルにある方

大学のキャンパスや職場のビルが高層・超高層の場合、そこで地震に遭遇する可能性があります。「自分の家は低層だから」ではなく、「自分がいる場所のすべて」を意識してください。

エレベーターを使う機会がある方

長周期地震動が発生した場合、エレベーターが自動停止し、閉じ込めが発生するリスクがあります。高層階でのエレベーター使用中に揺れを感じたら、最寄りの階で降りることを迷わず実行してください。

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高層階・マンション住まいの方が今日確認すべきこと

確認1|家具の固定状況

長周期地震動では、家具が「倒れる」だけでなく「大きく移動する」ことがあります。固定されていない家具・家電は、通常の地震対策以上に危険です。背の高い家具・冷蔵庫・テレビ台は必ず壁に固定してください。

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確認2|建物の防災マニュアルを確認する

多くの高層マンション・タワーマンションには、地震時の行動マニュアルが存在します。「エレベーターが止まったときはどうするか」「避難経路はどこか」……これを今のうちに確認しておきましょう。管理組合・管理会社のウェブサイト、またはエントランスの掲示板を確認してください。

確認3|スマホの長周期地震動に関する速報設定を確認する

2023年2月以降、長周期地震動の階級3以上が予想される場合にも緊急地震速報(警報)が発表されるようになっています。スマホの緊急速報設定がオンになっているか、今一度確認してください。

まとめ

今回のポイント
  • 長周期地震動とは、ゆっくり大きく長時間揺れる地震動で、高層ビルに影響しやすい
  • 「長周期地震動階級」は震度とは別の指標。地上の震度が小さくても、高層階では大きな揺れが生じることがある
  • 今回の地震では宮城・秋田で「地上の震度4以下・長周期地震動階級3」が観測された
  • 共振によって高層ビルは長時間揺れ続けることがある
  • 高層階の家具固定・建物マニュアルの確認・緊急速報設定の確認を今日中に

先日の地震は、幸い大きな人的被害は報告されていませんが、「次」への備えを促すサインでもあります。気象庁は今後1週間程度、大きな地震の発生可能性が平常時より相対的に高まっていると発表しています(発生が確実というわけではありませんが、備えを再確認する機会です)。今日の「ちょっと確認」が、明日の自分を助けます。

「ちょっと防災」、今日から始めてみてください。

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Author

サトウ先生|博士(工学) / 防災士
京都光華大学 社会学部 社会共創学科
「専門知識を、わかりやすく身近に。」これまで数々の自然災害を目の当たりにしてきた実体験をもとに、防災に関する大学での講義や地域での講演を行っている。南国出身のため雪にはとっても不慣れで、京都での最大の災難は大雪のときに滑ったことだと思っている。摩擦係数の計算は得意だが、雪道の滑りやすさは計算外だった。だが、その失敗さえも防災の教訓に変えてしまうのが私のスタイルだ。実に面白い。
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このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
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参考・出典
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