断水時に備蓄している9リットルの水、普通に使ったら何日もつか知っていますか?
実は「普通の感覚」で使えばわずか1日分。断水3日間を乗り切るには、飲料・調理・衛生・口腔ケア・トイレの5用途それぞれに優先順位をつけ、削れるものを削る必要があります。
その昔、「1リットルの涙」っていう映画ありましたよね。人間ってだいたい体重の2%の水分が失われると脱水症状になるみたいなんです。つまり、体重50kgの人が1リットルの涙を流したら「脱水症状で涙」状態になるんじゃなかろうかと考えていた血も涙もないサトウですこんにちは。いや作品は好きですよ!(必死
今回は体から溢れ出る悲しみの1リットルではなく、災害時に備蓄していた9リットルの水をどう使うか、という話です。実はこの数字は「最低ライン」であり、「余裕」ではありません。備蓄の水を使いすぎて本当の脱水症状に陥らないためにも、今日は災害時の水の使い方を具体的な数字で解説していきます。「9リットルあれば安心」と思っていたあなた、その水、本当に3日間もちますか?
- 「9リットル備蓄している」という方
- 備蓄した水で「何ができて何ができないか」を知りたい方
- 備蓄量を増やすべきか悩んでいる方
断水時に水が必要な「4つの用途」
断水が起きたとき、水が必要な場面はひとつではありません。大きく4つに分かれます。
用途1|飲料水
飲むための水。成人が1日に必要な飲料水は約1〜1.5リットルとされています(暑い季節や運動後はさらに必要です)。ここでは最低ラインとして1日1リットルで計算します。

用途2|調理用水
インスタントラーメン・レトルト食品・米を炊く…いずれも水が必要です。1食あたり200〜500ml程度、1日3食分で600〜1,500ml。カップ麺中心なら比較的少なくて済みますが、ゼロにはなりません。

用途3|衛生用水
手洗い・顔を拭くなど、感染症予防の観点からも断水中でも最低限の衛生は保ちたいところです。手を1回洗うのに節水を意識しても100〜200ml、1日複数回で300〜500ml程度を見ておく必要があります。

用途4|口腔ケア(歯磨き)
普段は毎日行う「歯磨き」ですが、災害時は水を消費するので後回しにされがちです。しかし後述するとおり、「歯磨きは絶対に行う」を心がけてください。歯磨きに必要な水は実は30ml程度(おちょこ1杯)で十分とされています。

用途5|トイレ用水(見落とされがち・最も量を消費)
これが最も見落とされやすく、かつ最も「量を食う」用途です。水洗トイレを1回流すのに必要な水は、一般的な製品で6〜8リットル(最新の節水型でも3.8〜4.8リットル)。下水管が無事であれば、バケツで水を流すことでトイレを使えます。しかし1回流すだけで飲料水の数日分が消えてしまいます。
参考:TOTO株式会社「トイレでどれくらい水を使うの?」

9リットルで3日間を乗り切れるか:使用量を計算してみる
上記の用途を合計すると、1人1日に必要な水の量はどうなるでしょうか。
「最低限」の場合
| 飲料水 | 1.0 L |
| 調理用水(カップ麺1食+簡易な食事) | 0.5 L |
| 衛生用水 | 0.3 L |
| 歯磨き(30ml×2回) | 0.06 L |
| トイレ用水(携帯トイレ使用のためゼロ) | 0 L |
| 合計 | 約1.9 L/日 |
この最低限で計算すると、3日間で約5.7リットル。9リットルなら3日間は乗り切れる計算になります。ただし「トイレは携帯トイレを使う」「調理は最小限」「節水を徹底する」という条件付きです。
「普通の生活」に近い場合
| 飲料水 | 1.5 L |
| 調理用水 | 1.0 L |
| 衛生用水 | 0.5 L |
| 歯磨き(コップ3杯×2回) | 1.2 L |
| トイレ用水(節水型を1日1回水で流す) | 4.0 L |
| 合計 | 約8.2 L/日 |
これが現実です。
何から削るか:優先順位の考え方
9リットルを3日間でやりくりするためには、「何に使って、何を我慢するか」を事前に決めておく必要があります。以下の優先順位表を参考にしてください。
参考:高知県歯科医師会「災害時口腔ケアの重要性について」 / サンスター株式会社「覚えてください 防災にオーラルケア」
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9リットルでは足りない場合の対策
計算してみると、9リットルが「最低ライン」であって「十分な量」ではないことがわかります。内閣府は現在「最低3日間、推奨1週間」の備蓄を呼びかけており、1週間分となると21リットル以上が必要です。
とはいえ、一人暮らしの部屋に21リットルの水を置くのは難しいですよね。そこで現実的な対応策を3つ挙げます。
対策1|「水以外の水分」も備蓄に加える
お茶・スポーツドリンク・缶コーヒーなど、飲料水の代わりになる飲み物を少し多めに常備しておくことで、飲料用の純水の消費を抑えられます。
対策2|調理不要・水不要の食品を増やす
備蓄食品を「水を使わずに食べられるもの」中心にすることで、調理用水をゼロに近づけられます。さらにローリングストックで工夫しておくと良いでしょう。
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対策3|給水所・給水体制を事前に把握しておく
備蓄が尽きた後の選択肢として、自治体の給水所・給水体制を事前に把握しておくことが重要です。お住まいの自治体のウェブサイトで調べてみてください。持参すべき容器(ポリタンクなど)も事前に準備しておきましょう。
参考:京都市「ご家庭でもできる災害への備え」
まとめ
- 断水時の水の用途は「飲料・調理・衛生・口腔ケア・トイレ」の5つ
- 普通の感覚で使うと、9リットルは1日程度しかもたない
- 3日間を乗り切るには「携帯トイレ使用」「節水調理」が前提条件
- 内閣府推奨は1週間分(21リットル以上)。現実的な不足を補う工夫が必要
- 「9リットルあるから大丈夫」ではなく「9リットルをどう使うか」を今日考える
「備蓄がある」ことと「備蓄を使いこなせる」ことは別の話です。今日、自分の備蓄の水を手に取って、「これで3日間どう過ごすか」を一度だけ具体的に考えてみてください。
「ちょっと防災」、今日から始めてみてください。
このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
実際の災害時は現場の状況に応じた柔軟な判断が求められます。記事に含まれる情報の活用は読者の皆様の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。また、記事の内容は大学の公式な見解や推奨を意味するものではありません。なお、記事に含みうる誤りに関する一切の責任は筆者に帰属します。
