ひとり暮らしの方、被災した後「ひとりぼっち」になるリスクを想定していますか?
わたしもひとり暮らしなのですが、最近思うことがあるんです。
「家にいるとき倒れたら、誰も助けに来れないんじゃ?」
住んでいるマンション、わたしには分不相応にセキュリティが高ぅございまして。オートロックはもちろん、エレベーターに乗る時もキーをかざす必要があって、自分の階以外には行けない。つまり、おそらく部屋のドアの前にたどり着くのも困難なんですね。「最近、あの先生のお姿見ぇへんけど、どこぞ豪勢なご旅行にでも行ってはるんと違いますやろか?」と京都人マウントを取らず、いざというときはどうにか助けに来てほしいサトウですこんにちは。あっ、もう少し大学で顔見せろって意味ですか!
幸い(?)私はまだ生きてるのでこれは笑い話の皮肉で済みますが、災害時に「誰も助けに来ない」は最悪の状況です。今回はひとり暮らしに潜む災害時のリスクと、それを改善する「つながりづくり」の大切さについて解説します。
- 一人暮らしをしている、またはこれから始める方
- 「自分は自分でなんとかできる」と思っている方
- 地域や近所とのつながりが薄いと感じている方
ひとり暮らしが災害時に直面するリスク
東日本大震災の震災関連死は3,810人(復興庁, 2025年12月時点)。直接的な津波や建物崩壊ではなく、「避難生活等がきっかけで亡くなった方々」の数です。
この関連死の内訳を見ると、高齢者が大多数を占めていますが、見落としてはいけない要因があります。「ひとりで亡くなった方」です。
大きな災害時には、発災から数日〜数週間後に自宅や車中で亡くなっているのが発見されるケースもあります。孤立した地域に一人で住んでいたため、倒れても誰も気づかなかった。これは高齢者だけの問題ではありません。ひとり暮らしで、日常的に「今日会った人が自分の安否を確認してくれる人」がいない状態は、年齢に関係なくリスクを高めます。
これは、いわゆる「孤独死」という言葉でその問題をご存知の方も多いと思います。「孤独死」という言葉の定義は、実はかなりの議論があるのですが(呉, 2023)、ここでは新井(2010)などが紹介し、一般的に使用されている「ひとり暮らしをしていて、誰にも看取られずに自宅で亡くなること」としましょう。
災害時において、発災直後もそうなのですが、孤独死のリスクが最も高くなるのは「避難所から仮設住宅へ移った後」なんです。避難所は集団生活ですから人の目がある。一方、仮設住宅は住宅ですので閉じられた空間になる。当然、ひとり暮らしの方は人の目が届かなくなるので何かあっても気づかなくなる。この時に大切になるのはやはり「人の目」、つまり人とのつながりです。
平常時から社会的な孤立状態にある人ほど、災害時の死亡リスクが高いことが複数の研究で示されています。つながりの薄さは、平常時の問題であるだけでなく、災害時の「命綱の太さ」に直結しているのです。
「自分でなんとかできる」の落とし穴
ひとり暮らしの方と話すと、「自分のことは自分でなんとかできる」という意識が強い方が多い印象があります。それ自体は素晴らしい自立心です。ただ、防災の文脈では、その意識が「助けを求める準備」を怠らせるリスクになることがあります。
株式会社エイブルホールディングスが行った調査(2026)では、ひとり暮らしの若者世代(20代〜30代)の約半数が「隣人の顔も名前も知らない」と回答しました(n=808)。近所の人と会話したことがない、隣に誰が住んでいるかわからない——この状態で大きな災害が起きたとき、「助けてください」と言える相手が物理的にいないことになります。
(画像出典:ひとり暮らし研究所(株式会社エイブルホールディングス)(2026).「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」より筆者作成)
「自助」(自分で自分を守る)は防災の基本です。でも、「共助」(互いに助け合う)なしで、大規模災害を乗り越えた個人はほぼいません。自助と共助は競合するものではなく、両輪です。
防災が「つながり」をつくるきっかけになる
「地域のつながりを作りましょう」と言われても、正直ハードルが高いですよね。「いきなり隣の人にあいさつするのも変だし……」という気持ち、よくわかります。
ここで面白い視点があります。防災は「つながりをつくる理由」になりやすいのです。
「防災点検をするので、近所で何かあればお知らせください」「避難場所ってどこか知っていますか?」など。防災を話題にすることは、初対面の相手との会話に自然な理由を与えてくれます。プライベートな話題でも世間話でもなく、「お互いに関係する実用的な話」だからです。
実際に、地域の地縁活動や防災活動への参加が、地域のソーシャルキャピタル(社会的つながり・信頼)を高めることを示した研究は数多くあります(Aldrich, 2012; 川脇, 2014 など)。防災の準備をすること自体が、つながりを生む行動になりえるのです。
今日から始める「つながりの備え」3つ
つながりを「備え」として意識的に作るための、具体的な3つのアクションです。
「大きな地震が来たら、LINEで一言送る」「返信がなければ171に録音する」。このルールを1〜2人の人と共有するだけで、あなたの「発見の遅れ」リスクは大幅に下がります。相手はどこに住んでいても構いません。物理的な距離より、「誰かが気にかけてくれている」という状態をつくることが重要です。
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「友達を作れ」という話ではありません。「いざとなれば声をかけられる人が近くに一人いる」という状態です。同じ建物の住人・よく行くコンビニの店員・大学のクラスメート。「顔を知っている」「名前を知っている」だけで、有事の際のハードルは大きく下がります。まずは「あいさつをする人を一人作る」ところから始めましょう。
コンビニへ行くことが多い方は、そのコンビニが「災害時支援ステーション」に登録しているかも確認したいですね。
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「面倒くさい」「時間がない」という気持ちはわかります。でも、一度顔を出すことで「この人は顔を知っている」という状態になれます。訓練のやり方を覚えることより、「あのとき来ていた人」として覚えてもらうことの方が、はるかに価値があります。次に地域の自治会から防災訓練の案内が来たら、一度だけ試してみてください。
まとめ
- ひとり暮らしの災害リスクは「モノの不足」だけでなく「つながりの不足」から来る
- 社会的孤立は、平常時だけでなく災害時の死亡リスクにも直結する
- 「自助」は大切だが、「共助」との両輪なしに大規模災害を乗り越えるのは難しい
- 防災は「つながりをつくる理由」になりやすい。まず話題にすることから始める
- 今日できること:安否確認ルールを1人と決める、近くに顔を知っている人を1人つくる
備蓄があること、リュックがあること、それは大切です。でもそれと同じくらい、「あなたが被災したことを気にかけてくれる人がいる」ということが、命を守る備えになります。春から新生活を始めた大学生や社会人の皆様も、地域の人に無関心ではなく、一つでも良いのでつながりを作ってみてくださいね。
「ちょっと防災」、今日から始めてみてください。
このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
実際の災害時は現場の状況に応じた柔軟な判断が求められます。記事に含まれる情報の活用は読者の皆様の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。また、記事の内容は大学の公式な見解や推奨を意味するものではありません。なお、記事に含みうる誤りに関する一切の責任は筆者に帰属します。
- 復興庁(2026).「東日本大震災における震災関連死の死者数(令和7年12月31日現在調査結果)」https://www.reconstruction.go.jp/files/user/topics/main-cat2/sub-cat2-6/20260213_kanrenshi.pdf
- 呉獨立(2023).「「孤独死・孤立死」という「問題」:「問題」としての複合性、そして、その「定義」における難しさ」. 「孤独死・孤立死」の実態把握に関するワーキンググループ(第2回)配布資料, 資料2.
- 新井康友(2010).「泉北ニュータウンにおける孤独死・孤立の実態」. 賃金と社会保障, Vol.1517, pp.15‐22.
- Aldrich, D. P. (2012). Building Resilience: Social Capital in Post-Disaster Recovery. University of Chicago Press.
- 川脇康生(2014).「地域のソーシャル・キャピタルは災害時の共助を促進するか―東日本大震災被災地調査に基づく実証分析―」, ノンプロフィット・レビュー, Vol.14, No.1+2, pp.1-13.
- ひとり暮らし研究所(株式会社エイブルホールディングス)(2026).「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」https://hitogura.jp/report/connection2026/(2026年4月4日閲覧)
