2026.07.10 ぼうさいらぼ

地震・雷・水害…とっさに建物の中へ逃げ込む判断は○か×か

リュックを背負った女性がビルを背景に佇む写真に、赤い丸(○)と×印のグラフィックが重なっている。中央に「建物の中に逃げ込む!? 災害のとき、この判断は○か×か」のテキストが重ねられた記事サムネイル

「危ない、建物の中に逃げろ!」映画やドラマで何度も見てきたこのシーンですが、現実の災害でこの判断が正解になるのは、どんな状況でしょうか。

実は、同じ「建物の中に逃げ込む」という行動が、災害の種類によって○にも×にもなります。地震では×になることがあり、雷では○になることが多く、水害では条件によって○にも×にもなり得ます。今回は地震・雷・水害の3つに絞って、「建物の中へ逃げ込む」判断の正解・不正解を整理します。

この記事でわかること
こんな人におすすめ!
  • 災害ごとの正しい行動がよくわからない方
  • 「とっさのとき体が動くか」が不安な方
  • 防災の基礎をひととおり押さえたい方

地震のとき:「外へ飛び出す」は×、「建物の中に逃げ込む」も状況次第で×

まず整理しておきたいのは、地震のとき「外へ飛び出す」という行動が、原則として×だということです。

揺れている最中に外へ出ようとすると、倒れてくる家具、落下する照明器具、割れた窓ガラスなどに当たるリスクが高くなります。阪神・淡路大震災では、住宅・建築物の倒壊に巻き込まれての窒息死・圧死が犠牲者の約8割を占めたと報告されています。その多くは、揺れが収まった後に屋外で被災したのではなく、家の中で被災しています。だからこそ「揺れている間は頭を守り、揺れが収まるまで待つ」が基本行動です。

(出典)内閣府「阪神・淡路大震災の経験と対応(平成17年版防災白書)」https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h17/bousai2005/html/honmon/hm120702.htm

では、「建物の中に逃げ込む」はどうでしょうか。

屋外にいて地震が発生した場合、近くに旧耐震基準(1981年=昭和56年以前)の建物があり、その下を通ろうとしていたり、ガラス窓のある壁際に近づこうとしているなら、その建物に逃げ込むのは×です。中央防災会議の南海トラフ巨大地震の被害想定でも、建築年代が古い木造建物ほど、強い揺れによる全壊率が高くなる関係が示されています。震度6弱以上の強い揺れでは、旧耐震基準の木造建物が倒壊するおそれがあるため、屋外にいるなら建物から離れた広い場所で頭を守り、揺れが収まるのを待つほうが安全です。

× 屋外で旧耐震の建物へ

1981年(昭和56年)以前の木造建物の下やガラス窓の壁際に近づくのは危険。建物から離れた広い場所で頭を守るのが正解です。

○ 丈夫な建物の中にいる

すでに新耐震基準(1981年以降)の丈夫な建物内にいるなら、揺れの最中に外へ出る方がリスクが高い。そのまま頭を守るのが正解です。

地震のときのまとめ
  • 揺れている最中に屋外へ飛び出す → ×
  • 屋外で、旧耐震の建物に駆け込む → ×(建物から離れた場所で身を守る)
  • 丈夫な建物の中にいる → そのまま頭を守る → ○
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雷のとき:「木の下は安全」は大間違い、建物への逃げ込みは○

「木の下で雨宿りをする」は、雷に遭遇したときの行動として最も危険なもののひとつです。

雷は高い物に落ちやすい性質があります。木は周囲より高いため雷が落ちやすく、さらに「側撃雷」といって、木に落ちた雷が近くにいる人間に飛び移ることがあります。落雷による死傷事故は、この側撃雷によるものがほとんどを占めるとされ、「木の下は雨が当たりにくいから安全」という発想は、雷に関してはまったくの逆です。

(出典)藤田医科大学「落雷に対する注意」https://www.fujita-hu.ac.jp/students/risk-management/thunderbolt.html

気象庁は、雷から身を守るための行動を次のように整理しています。

雷が近づいたときの行動早見表

判定 避難先・行動
鉄筋コンクリート造・鉄骨造の建物の中/自動車・バス・列車の内部(オープンカーは不可)。これが最も安全な行動です。
木造建築の内部。基本的に安全ですが、電気器具・天井・壁から1m以上離れると、より安全です。
× 木の下、電柱・鉄塔の近く、金属製フェンスの近く。落雷・側撃雷のリスクが高い場所です。
× 屋外プール・水辺の近く。水は電気を通しやすく、近くへの落雷で感電するリスクがあります。

(出典)気象庁「雷から身を守るには」https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/thunder4-3.html

近くに安全な空間がない場合は、電柱・煙突・鉄塔・建築物などの高い物体のてっぺんを45度以上の角度で見上げる範囲で、その物体から4m以上離れた場所(保護範囲)に退避し、姿勢を低くして持ち物を体より高く突き出さないようにします。「雷が鳴り始めたらプールから上がる」という指示を施設で受けた経験がある方も多いと思いますが、あれはまさにこの理由からです。

水害のとき:「垂直避難」は○にも×にもなる

水害のとき、「上の階に逃げる(垂直避難)」という行動があります。これは○でしょうか×でしょうか。答えは「条件による」です。

○になる条件

すでに外が浸水しており、屋外へ出て避難所へ向かうことがかえって危険な状況では、自宅・建物の上階へ移動することが命を守る選択肢になります。内閣府の避難情報に関するガイドラインでも、一定の条件下で「屋内安全確保」を選択肢のひとつとして位置づけています。この場合、建物に逃げ込む(上階に移動する)のは○です。

(出典)内閣府「避難情報に関するガイドラインの改定(令和8年3月)」https://www.bousai.go.jp/oukyu/hinanjouhou/r3_hinanjouhou_guideline/index.html

×になる条件(垂直避難が危険なケース)
  • 「家屋倒壊等氾濫想定区域」に自宅がある場合:堤防が決壊したときの激流で建物ごと流されるリスクがあるため、水平避難が必要
  • 木造の古い建物で、浸水深が深く想定される場合:建物が浮き上がったり、構造が弱く崩壊するリスクがある

→ ハザードマップで「家屋倒壊等氾濫想定区域」に自宅が含まれている場合は、水害時に上階へ逃げることではなく、早めの水平避難(避難所や安全な場所への移動)が正解です

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3つの災害を並べると「逃げ込む先」が正解を決める

ここまでの内容を整理すると、「建物の中に逃げ込む」という行動の正解・不正解は、「どの災害か」だけでなく「その建物がどんな建物か」「今どんな状況か」によって変わることがわかります。

災害 行動 判定
地震 揺れの最中に屋外へ飛び出す ×
屋外から旧耐震の建物に逃げ込む ×
丈夫な建物の中にとどまる
木の下・水辺・フェンス近く ×
鉄筋コンクリートの建物に逃げ込む
水害 早い段階で屋外を水平避難
すでに外が危ない状況で上階に垂直避難 ○(条件あり)
家屋倒壊等氾濫想定区域で上階に残る ×

「とっさに建物の中へ」という行動が正解になるのは、主に雷と(条件付きで)水害です。地震では、状況によっては屋外の方が安全なケースもあります。

今日からできること

この「場合分け」を全部暗記する必要はありません。まず、以下の2つを確認してください。

1. 自宅の耐震基準を確認する

1981年(昭和56年)以降に建てられた建物は新耐震基準を満たしています。賃貸の場合は管理会社に確認を。建築年が古い場合は、特に地震時の行動計画を見直してください。

2. ハザードマップで区域を確認する

国土交通省のハザードマップポータルサイトで「家屋倒壊等氾濫想定区域」を確認できます。この区域に自宅が含まれる場合、水害時の垂直避難は危険です。早めの水平避難を計画してください。

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まとめ

今回のポイント
  • 地震:揺れの最中に外へ飛び出すのは×。屋外にいる場合は、建物から離れた広い場所で身を守る
  • 雷:「木の下」は×。鉄筋コンクリートの建物に逃げ込むのが○
  • 水害:早めの水平避難が基本。すでに外が危険な状況では垂直避難(上階移動)が○になることもあるが、「家屋倒壊等氾濫想定区域」では垂直避難も×
  • 「建物の中へ逃げ込む」が正解かどうかは、災害の種類・建物の状況・タイミングによって変わる

「とっさのときに体が動く」状態を作るには、「なぜそうするのか」まで理解しておくことが重要です。今日この記事を読んだことで、一つ判断軸が増えたはずです。

「ちょっと防災」、今日から始めてみてください。

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Author

サトウ先生|博士(工学) / 防災士
京都光華大学 社会学部 社会共創学科
「専門知識を、わかりやすく身近に。」これまで数々の自然災害を目の当たりにしてきた実体験をもとに、防災に関する大学での講義や地域での講演を行っている。南国出身のため雪にはとっても不慣れで、京都での最大の災難は大雪のときに滑ったことだと思っている。摩擦係数の計算は得意だが、雪道の滑りやすさは計算外だった。だが、その失敗さえも防災の教訓に変えてしまうのが私のスタイルだ。実に面白い。
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このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
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参考・出典
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