「危ない、建物の中に逃げろ!」映画やドラマで何度も見てきたこのシーンですが、現実の災害でこの判断が正解になるのは、どんな状況でしょうか。
実は、同じ「建物の中に逃げ込む」という行動が、災害の種類によって○にも×にもなります。地震では×になることがあり、雷では○になることが多く、水害では条件によって○にも×にもなり得ます。今回は地震・雷・水害の3つに絞って、「建物の中へ逃げ込む」判断の正解・不正解を整理します。
- 災害ごとの正しい行動がよくわからない方
- 「とっさのとき体が動くか」が不安な方
- 防災の基礎をひととおり押さえたい方
地震のとき:「外へ飛び出す」は×、「建物の中に逃げ込む」も状況次第で×
まず整理しておきたいのは、地震のとき「外へ飛び出す」という行動が、原則として×だということです。
揺れている最中に外へ出ようとすると、倒れてくる家具、落下する照明器具、割れた窓ガラスなどに当たるリスクが高くなります。阪神・淡路大震災では、住宅・建築物の倒壊に巻き込まれての窒息死・圧死が犠牲者の約8割を占めたと報告されています。その多くは、揺れが収まった後に屋外で被災したのではなく、家の中で被災しています。だからこそ「揺れている間は頭を守り、揺れが収まるまで待つ」が基本行動です。
(出典)内閣府「阪神・淡路大震災の経験と対応(平成17年版防災白書)」https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h17/bousai2005/html/honmon/hm120702.htm
では、「建物の中に逃げ込む」はどうでしょうか。
屋外にいて地震が発生した場合、近くに旧耐震基準(1981年=昭和56年以前)の建物があり、その下を通ろうとしていたり、ガラス窓のある壁際に近づこうとしているなら、その建物に逃げ込むのは×です。中央防災会議の南海トラフ巨大地震の被害想定でも、建築年代が古い木造建物ほど、強い揺れによる全壊率が高くなる関係が示されています。震度6弱以上の強い揺れでは、旧耐震基準の木造建物が倒壊するおそれがあるため、屋外にいるなら建物から離れた広い場所で頭を守り、揺れが収まるのを待つほうが安全です。
- 揺れている最中に屋外へ飛び出す → ×
- 屋外で、旧耐震の建物に駆け込む → ×(建物から離れた場所で身を守る)
- 丈夫な建物の中にいる → そのまま頭を守る → ○
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雷のとき:「木の下は安全」は大間違い、建物への逃げ込みは○
「木の下で雨宿りをする」は、雷に遭遇したときの行動として最も危険なもののひとつです。
雷は高い物に落ちやすい性質があります。木は周囲より高いため雷が落ちやすく、さらに「側撃雷」といって、木に落ちた雷が近くにいる人間に飛び移ることがあります。落雷による死傷事故は、この側撃雷によるものがほとんどを占めるとされ、「木の下は雨が当たりにくいから安全」という発想は、雷に関してはまったくの逆です。
(出典)藤田医科大学「落雷に対する注意」https://www.fujita-hu.ac.jp/students/risk-management/thunderbolt.html
気象庁は、雷から身を守るための行動を次のように整理しています。
雷が近づいたときの行動早見表
| 判定 | 避難先・行動 |
|---|---|
| ○ | 鉄筋コンクリート造・鉄骨造の建物の中/自動車・バス・列車の内部(オープンカーは不可)。これが最も安全な行動です。 |
| △ | 木造建築の内部。基本的に安全ですが、電気器具・天井・壁から1m以上離れると、より安全です。 |
| × | 木の下、電柱・鉄塔の近く、金属製フェンスの近く。落雷・側撃雷のリスクが高い場所です。 |
| × | 屋外プール・水辺の近く。水は電気を通しやすく、近くへの落雷で感電するリスクがあります。 |
(出典)気象庁「雷から身を守るには」https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/thunder4-3.html
近くに安全な空間がない場合は、電柱・煙突・鉄塔・建築物などの高い物体のてっぺんを45度以上の角度で見上げる範囲で、その物体から4m以上離れた場所(保護範囲)に退避し、姿勢を低くして持ち物を体より高く突き出さないようにします。「雷が鳴り始めたらプールから上がる」という指示を施設で受けた経験がある方も多いと思いますが、あれはまさにこの理由からです。
水害のとき:「垂直避難」は○にも×にもなる
水害のとき、「上の階に逃げる(垂直避難)」という行動があります。これは○でしょうか×でしょうか。答えは「条件による」です。
すでに外が浸水しており、屋外へ出て避難所へ向かうことがかえって危険な状況では、自宅・建物の上階へ移動することが命を守る選択肢になります。内閣府の避難情報に関するガイドラインでも、一定の条件下で「屋内安全確保」を選択肢のひとつとして位置づけています。この場合、建物に逃げ込む(上階に移動する)のは○です。
(出典)内閣府「避難情報に関するガイドラインの改定(令和8年3月)」https://www.bousai.go.jp/oukyu/hinanjouhou/r3_hinanjouhou_guideline/index.html
- 「家屋倒壊等氾濫想定区域」に自宅がある場合:堤防が決壊したときの激流で建物ごと流されるリスクがあるため、水平避難が必要
- 木造の古い建物で、浸水深が深く想定される場合:建物が浮き上がったり、構造が弱く崩壊するリスクがある
→ ハザードマップで「家屋倒壊等氾濫想定区域」に自宅が含まれている場合は、水害時に上階へ逃げることではなく、早めの水平避難(避難所や安全な場所への移動)が正解です
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3つの災害を並べると「逃げ込む先」が正解を決める
ここまでの内容を整理すると、「建物の中に逃げ込む」という行動の正解・不正解は、「どの災害か」だけでなく「その建物がどんな建物か」「今どんな状況か」によって変わることがわかります。
| 災害 | 行動 | 判定 |
|---|---|---|
| 地震 | 揺れの最中に屋外へ飛び出す | × |
| 屋外から旧耐震の建物に逃げ込む | × | |
| 丈夫な建物の中にとどまる | ○ | |
| 雷 | 木の下・水辺・フェンス近く | × |
| 鉄筋コンクリートの建物に逃げ込む | ○ | |
| 水害 | 早い段階で屋外を水平避難 | ○ |
| すでに外が危ない状況で上階に垂直避難 | ○(条件あり) | |
| 家屋倒壊等氾濫想定区域で上階に残る | × |
「とっさに建物の中へ」という行動が正解になるのは、主に雷と(条件付きで)水害です。地震では、状況によっては屋外の方が安全なケースもあります。
今日からできること
この「場合分け」を全部暗記する必要はありません。まず、以下の2つを確認してください。
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まとめ
- 地震:揺れの最中に外へ飛び出すのは×。屋外にいる場合は、建物から離れた広い場所で身を守る
- 雷:「木の下」は×。鉄筋コンクリートの建物に逃げ込むのが○
- 水害:早めの水平避難が基本。すでに外が危険な状況では垂直避難(上階移動)が○になることもあるが、「家屋倒壊等氾濫想定区域」では垂直避難も×
- 「建物の中へ逃げ込む」が正解かどうかは、災害の種類・建物の状況・タイミングによって変わる
「とっさのときに体が動く」状態を作るには、「なぜそうするのか」まで理解しておくことが重要です。今日この記事を読んだことで、一つ判断軸が増えたはずです。
「ちょっと防災」、今日から始めてみてください。
このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
実際の災害時は現場の状況に応じた柔軟な判断が求められます。記事に含まれる情報の活用は読者の皆様の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。また、記事の内容は大学の公式な見解や推奨を意味するものではありません。なお、記事に含みうる誤りに関する一切の責任は筆者に帰属します。
