2026.04.07 ぼうさいらぼ

「家族と防災の話をしたことがない」人が今すぐできる30分家族会議

食卓を囲む和やかな二世代家族の写真。中央に『「なんとなく大丈夫」が一番危ない。 家族で防災の話、しよう。』の文字。平時の備えとしての家族間コミュニケーションを促す記事サムネイル

「家族で防災の話をしたことがありますか?」

まぁなかなかしたことないですよね。私もそうでした。被災して思うのは、話はしておいた方がいいですよ。
私の祖母は、当時私が住んでいたところから自転車で10分くらいのところに住んでいたのですが、大きな地震で被災した後、連絡が取れなくなったんです。もう家族は大慌てで。結局、私が見に行くことになりました。祖母の家の玄関を開けても停電なので真っ暗。懐中電灯を頼りに寝室に行くと、そこには動かない祖母(と思われる布団の膨らみ)。声をかけても反応がない。あっ、これはマズイやつ……と意を決して布団をバッと取ったら、「あら、久しぶりねぇ」いや起きとるんかーーーーい!と吉本新喜劇ばりのツッコミをしたかったサトウですこんにちは。祖母は高齢なので致命傷になってまう!

その時は祖母も怪我がなかったので笑い話ですが、すぐに安否確認に行けない遠方だったら気が気じゃないですよね。万が一のときにこんな風に慌てないように、この記事では「家族との話し合い」の大切さについて解説します。

この記事でわかること
  • なぜ「なんとなくわかっている」が最も危険な状態なのか
  • 家族防災会議で決めるべき4つのこと
  • 「話しにくい」を解消する会議の始め方
  • 一人暮らしの方も「離れた家族」と今日できること
  • 30分で終わる会議の進め方(アジェンダつき)
こんな人におすすめ!
  • 家族と防災の話を一度もしたことがない方
  • 「なんとなく決まってるだろう」と思っている方
  • 帰省・GW・年末年始のタイミングを活用したい方

「なんとなくわかっている」が最も危険な理由

家族4人が同じ屋根の下で暮らしていても、「地震が来たらどうするか」について全員が同じ認識を持っているとは限りません。

たとえば——

  • お母さんは「とにかく家族全員が外で集合する」と思っている
  • お父さんは「まず家の中の安全を確認してから動く」と思っている
  • 子どもは「学校にいたら先生の指示に従う」と思っている
  • 一人暮らしのあなたは「家族に連絡しようとするが電話がつながらない」

それぞれが「なんとなく正しいこと」をしようとしていますが、全員バラバラです。電話がつながらないと、お互いの状況がわからないまま不安だけが膨らみます。最悪の場合、安否確認のために無理に移動して危険にさらされることもあります。

防災研究では「家族内のコミュニケーション不足」が、災害時の不適切な行動(危険な移動・情報不足による孤立など)の主要な原因の一つとして多くの研究で指摘されています(Tierney et al., 2001 など)。「話していないこと」のリスクは、「備えていないこと」のリスクと同じくらい大きいのです。

家族防災会議で決めるべき4つのこと

会議で全部を決めようとしなくていいです。最低限この4つを共有するだけで、「なんとなく」は「ちゃんと」に変わります。

1
決めること

「集合場所」を2か所決める

自宅近く(自宅が危険な場合の第一集合場所)と、少し離れた場所(自宅エリアが広範囲に被災した場合の第二集合場所)の2か所を決めておきましょう。最寄りの指定避難所が候補になりますが、「避難所の名前」だけでなく「そこまでの経路」を全員が知っていることが重要です。お住まいの地域によっては「地域の集合場所」を決めているところもあるので、自宅近くはそこに決め、家族みんなで確認しに行くのがおすすめです。
京都市の場合:京都市消防局「地震への備え」 https://www.city.kyoto.lg.jp/shobo/page/0000175661.html

2
決めること

「連絡手段と連絡ルール」を決める

大きな地震の後は電話回線が混雑してつながりにくくなります。「まず171(災害用伝言ダイヤル)に録音する」「LINEのテキストを送る(音声通話より届きやすい)」「つながらなくても〇時間は待つ」など、全員が同じ手順を共有しておきましょう。

あわせて読みたい
災害用伝言ダイヤル「171」の使い方を今すぐ練習すべき理由
3
決めること

「在宅避難か・避難所かの判断基準」を共有する

「地震が来たら避難所へ」が正解とは限りません。自宅が安全で備蓄があれば、在宅避難の方が体への負担が少ないケースもあります。「うちの家ならどう判断するか」の基準を、家族全員で共有しておきましょう。

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自宅を避難所にしよう!在宅避難が正解になるケースと、その判断基準
4
決めること

「家にいない家族がいる場合」のシナリオを想定する

平日の昼間に大地震が来た場合、家族はどこにいるでしょうか。学校・職場・外出先——バラバラにいる状態で被災することの方が多いはずです。「子どもは学校の引き渡しルールを確認しておく」「夫婦のどちらかが帰宅困難になった場合どうするか」など、家族がばらばらになった状態のシナリオを一度考えておくと実践的です。

「話しにくい」を解消する始め方

「防災の話を切り出すのが気恥ずかしい」という方は多いです。特に若い世代が親や祖父母に「防災について話し合おう」と言い出すのは、ちょっとしたハードルがありますよね。そういうときのとっかかりとして、以下がおすすめです。

  • 「この記事を見てて、うちどこに避難するんだろうって気になった」
  • 「3.11の特集テレビでやってたね、うちって集合場所決めてる?」
  • 「防災訓練があって、家でも確認しようと思って」
  • 「サトウ先生のぼうらいらぼの記事を見たから」←おすすめ!

「自分が心配だから聞きたい」というスタンスで切り出すと、相手も構えにくいです。「防災しなきゃ」という義務感より、「一緒に確認したい」という感覚で始めましょう。

一人暮らしの方も「今日できること」がある

家族と離れて一人暮らしをしている方は、「家族会議なんてできない」と思うかもしれません。でも、離れた家族が住んでいる地域で大きな災害が起こったらどうしますか?冒頭のサトウの祖母のケースのように、あなたは気が気じゃなくなるはずです。「離れた家族との防災の確認」はとても大切ですし、今日でもできます。

LINEやビデオ通話で30分。次の帰省を待たなくていいです。「ちょっと確認したいことがあって」と一言送るだけで始められます。帰省のタイミング(GW・お盆・年末年始)を「家族防災会議のタイミング」として毎年活用するのもいい習慣です。

30分で終わる家族会議アジェンダ

以下を印刷またはスマホで見ながら進めると、脱線せず30分でまとまります。

時間 内容
0〜5分 今住んでいる地域のハザードマップを確認する
→ 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」https://disaportal.gsi.go.jp/
5〜15分 集合場所を2か所決める
→ 第一集合場所(自宅近く)、第二集合場所(少し離れた場所)
→ 全員でGoogle Mapsを開いて場所を確認する
15〜25分 連絡手段・連絡ルールを決める
→ 171の使い方を全員で確認する(体験利用日に練習できます)
→ 「つながらなくても〇時間待つ」ルールを決める
25〜30分 家の備蓄・防災グッズを一緒に確認する
→ 水・食料は何日分あるか、防災リュックはどこにあるか
→ 「今日から何か一つ足す」を全員で決めて終わる

まとめ

今回のポイント
  • 「なんとなく大丈夫」は、家族全員がバラバラに動く原因になる
  • 会議で決めるべき4つ:集合場所・連絡手段・在宅か避難所かの判断基準・バラバラシナリオ
  • 切り出し方は「心配だから確認したい」スタンスが一番スムーズ
  • 一人暮らしの方も、LINEやビデオ通話で今日できる
  • 30分アジェンダを使えば、その日のうちに全部決まる

防災は「自分一人でやるもの」ではありません。家族と共有してはじめて機能します。今週末、30分だけ時間を取ってみてください。

「ちょっと防災」、今日から始めてみてください。

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Author

サトウ先生|博士(工学) / 防災士
京都光華大学 社会学部 社会共創学科
「専門知識を、わかりやすく身近に。」これまで数々の自然災害を目の当たりにしてきた実体験をもとに、防災に関する大学での講義や地域での講演を行っている。南国出身のため雪にはとっても不慣れで、京都での最大の災難は大雪のときに滑ったことだと思っている。摩擦係数の計算は得意だが、雪道の滑りやすさは計算外だった。だが、その失敗さえも防災の教訓に変えてしまうのが私のスタイルだ。実に面白い。
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このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
実際の災害時は現場の状況に応じた柔軟な判断が求められます。記事に含まれる情報の活用は読者の皆様の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。また、記事の内容は大学の公式な見解や推奨を意味するものではありません。なお、記事に含みうる誤りに関する一切の責任は筆者に帰属します。

参考・出典
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