地震が来た。停電になった。「冷蔵庫の中の食べ物、大丈夫かな」そう思って冷蔵庫を開けようとしたあなた、ちょっと待ってください。その「確認のために開ける」という行動が、食品を守るうえで逆効果になることがあります。停電時の冷蔵庫・冷凍庫には、知っておくべき「保冷の仕組み」があります。
ところで皆さん、トーストってどうやって焼いてますか?サトウ宅はトースターがないので魚焼きグリルで焼いてます笑。やったことがある方はわかると思うんですが、焼き加減が非常に分かりにくいんですよね。なので気になって何回もグリルを開け、早かったなぁと思ってトーストを戻し(この時点で温度が下がっている)、また開けてを繰り返し…「ピンポーン」あっ誰か来たはいはいはい…戻ってきたときは真っ黒な物体が生成されているサトウですこんにちは。香ばしいと言えばそうかもモグモグ(よい子は真似してはいけません!)
真っ黒トーストと違って、今日の主役は「下がる」ではなく「上がる」ほうの温度です。停電時、特に夏場は、正しい知識を持っているかどうかが食中毒リスクを大きく左右します。今回は、災害関連の記事では意外と扱われることが少ない「冷蔵庫」に焦点を当てて解説します。
- 「停電になったらとりあえず冷蔵庫を開けて確認する」という方
- 食品の備蓄をしている方
- 冷凍食品をまとめ買いして保存している方
停電時の冷蔵庫・冷凍庫:温度はどのくらい保てるのか
まず基本的な事実から確認しましょう。停電になっても、冷蔵庫・冷凍庫の中にあるものはすぐに「温まる」わけではありません。内部の温度が保たれている間は、食品の安全が維持されます。
アメリカのFDA(食品医薬品局)・CDC(疾病予防管理センター)は、停電時の家庭用冷蔵庫・冷凍庫について、扉を閉じたままであれば次の時間は食品の安全が保たれるとしています。
冷凍室が長持ちするのは、食品同士が保冷材の役割を果たすためです。食品がすき間なく詰まっているほど、庫内全体が冷たさを保ちやすくなります。夏場の日本、特に停電でエアコンも止まっている状況では室温が急激に上昇するため、冷蔵室の「4時間」はさらに短くなる可能性がある点にも注意してください。
これらの時間を最大限に活かす条件は「扉を開けない」ことです。扉を開けるたびに冷気が逃げ、内部温度が上昇します。目安として、扉を10秒ほど開けたままにするだけで庫内温度は約3〜5℃上昇するとされています。「確認のため」に何度も開けることが、食品の傷みを早める最大の原因になります。
夏場の停電が特に危険な理由
夏の停電は、冬の停電と比較にならないほど食品の安全リスクが高まります。理由は2つあります。
FDAは、生鮮食品や調理済み食品が常温(室温)にさらされた状態で2時間以上経過した場合は廃棄するよう推奨しています。室温が32℃を超える場合は、この時間はさらに1時間に短縮されます。夏場の停電では、この「危険な2時間(または1時間)」が想像以上に早く訪れます。
停電時に食品をどう扱うか:優先順位と判断基準
停電が発生したときの食品管理の手順を整理します。
【ステップ1】まず「開けない」
停電直後はできる限り冷蔵庫・冷凍庫を開けません。復旧の見込みが数時間以内であれば、開けずに待つのが最善です。
【ステップ2】4時間以内に復旧しない場合は優先順位をつける
4時間以上停電が続くと判断したら、冷蔵庫内の食品を以下の優先順位で使い始めます。
| 優先度 | 対象の食品 |
|---|---|
| 高 早く使うべき |
生の肉・魚・海鮮類/加熱済みだが保存している惣菜・残りもの/開封済みの乳製品(牛乳・ヨーグルトなど) |
| 中 | 豆腐・こんにゃく/卵(割れていないもの)/チーズ(開封済み) |
| 低 比較的保つ |
野菜・果物(ただし切ったものは優先度高)/調味料類(マヨネーズを除く) |
【ステップ3】「においが変、色が変、感触が変」は食べない
食品の安全を判断するシンプルな基準は「見た目・におい・感触」です。少しでも異変を感じたら食べないことが原則です。「もったいない」という気持ちが食中毒につながることがあります。特に夏場の食中毒は症状が重くなりやすく、避難生活の体力をさらに奪います。
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冷凍庫の備蓄:停電が長引くリスクを知っておく
「冷凍食品を大量に備蓄している」という方に知っておいてほしいことがあります。大規模地震での停電は、数時間で復旧するとは限りません。
| 災害 | 停電の実態 |
|---|---|
| 東日本大震災 (2011年) |
東北電力管内では、発生から3日で約8割、8日で約9割強の停電が解消しました。一方、被害の大きかった一部地域では復旧までさらに長い時間を要しています。 |
| 令和6年 能登半島地震 (2024年) |
石川県内では1月中に停電の大部分が解消しましたが、道路損壊などの被害が甚大だった輪島市・珠洲市の一部地域では、復旧までに約1か月を要しました。 |
冷凍備蓄食品は、長期停電が発生した瞬間に「ただの溶けていく食品」になりかねません。これは冷凍備蓄を否定しているのではありません。「冷凍備蓄だけに頼らない」ことが重要です。農林水産省も、災害発生からライフライン復旧まで1週間以上を要するケースが多いとして、常温で保存できる食品を最低3日分〜1週間分備蓄することを推奨しています。常温保存できるローリングストックと組み合わせることで、停電時でも食料を確保できます。
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今日からできる準備
停電時の冷蔵庫問題に備えるためにできることをまとめます。
- 【準備1】保冷剤をストックしておく
保冷剤を冷凍庫内に入れておくと、停電時に冷凍室の保冷時間を延ばせます。停電後に冷蔵室へ移動させれば、冷蔵食品の保持時間を延ばす効果もあります - 【準備2】常温保存できる食品の備蓄を優先する
缶詰、乾麺、レトルト食品など、停電に関係なく食べられる食品を備蓄の主力にします。ローリングストックの考え方を活用してください - 【準備3】停電時の対応を家族で確認しておく
「停電になったら冷蔵庫を開けない」「4時間以上続くなら食品を確認する」というルールを家族で共有しておきます。特に子どもが「確認しに行く」行動を取ることがあるので、事前に伝えておくことが重要です
まとめ
- 停電後の冷蔵室は約4時間、冷凍室は約24〜48時間(食品の量による)、扉を開けなければ安全を維持できる
- 「確認のために開ける」は冷気を逃がし、食品の傷みを早める:むやみに開けない
- 夏場の停電は室温上昇+細菌繁殖の速さで、食中毒リスクが特に高い
- 「においが変・色が変・感触が変」のものは食べない。もったいないより安全を優先する
- 冷凍備蓄だけに頼らず、常温保存できるローリングストックを主力にする
「冷蔵庫を開けてはいけない」この言葉は少し強めの表現ですが、「開けるなら理由を持って最小限に」という考え方は、食品を守り、食中毒から体を守るうえで重要です。
「ちょっと防災」、今日から始めてみてください。
このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
実際の災害時は現場の状況に応じた柔軟な判断が求められます。記事に含まれる情報の活用は読者の皆様の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。また、記事の内容は大学の公式な見解や推奨を意味するものではありません。なお、記事に含みうる誤りに関する一切の責任は筆者に帰属します。
- U.S. Food and Drug Administration (FDA)「Food and Water Safety During Power Outages and Floods」
- U.S. CDC(疾病予防管理センター)「Keep Food Safe After a Disaster or Emergency」
- 農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド(1)食品の家庭備蓄のすすめ」
- 政府広報オンライン「食中毒予防の原則と6つのポイント」
- パナソニック株式会社「冷蔵庫の停電前の準備と停電時・停電復旧後の対処方法」
- 内閣府中央防災会議「東日本大震災を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」参考資料(東北電力管内の停電復旧状況)
- 経済産業省「令和6年能登半島地震の電力・ガスにおける復旧対応等について」
- 内閣府「令和6年能登半島地震による被害状況等について」
