圓光寺、行ってきました。洛北の紅葉の名所として有名なお寺です。5月なのに…!
京都には風光明媚な観光スポットがたくさんありますが、その周辺の災害リスクを意識されたことはありますか?あのお寺や、この神社は災害のとき本当に安全なの?このシリーズでは、ハザードマップを片手にそれらの名所を探訪し、リスクについて解説していきます。映えある第1回は圓光寺です。繰り返しますが5月なのに…!
京都をはじめとする観光スポットをハザードマップ片手に巡り、普段は見えにくい災害リスクを解説するシリーズです。「知ってから行く」ことで、いざというときの行動が変わります。
- 一乗寺エリアへの観光を予定している方
- 「ハザードマップって自分の家以外にも使えるの?」と思っている方
- 京都の山沿い観光地のリスクが気になる方
圓光寺ってどんなお寺?
瑞巌山 圓光寺は、1601年(慶長6年)、徳川家康が学問所として開いた洛北の名刹です。
境内には、白砂と石組みが印象的な枯山水庭園「奔龍庭」と、苔と栖龍池が静かに調和する「十牛之庭」のふたつの庭が広がります。

圓光寺 奔龍庭

圓光寺 十牛之庭
紅葉の名所としても名高く、秋には境内の楓が色づき、多くの観光客が訪れます。境内奥の東照宮からは、京都の街並みを一望できます。拝観時間は9:00〜17:00(年中無休)、拝観料は大人800円(2026年5月時点)。同じ一乗寺エリアの詩仙堂・曼殊院とあわせて訪れる方も多いスポットです。
一乗寺エリアの地形を知る
まず、このエリアの地形を頭に入れておきましょう。
叡山電鉄・一乗寺駅から東へ歩くと、道は緩やかな上り坂になっていきます。圓光寺・詩仙堂・曼殊院など、この一帯の名刹はいずれも「山のふもと」に位置しています。西側には京都の盆地が広がり、東側には如意ヶ嶽・比叡山へと続く山地が迫っています。
観光で歩くと「風情ある坂道」に見えますが、防災目線では「山に向かって歩いている」ということになります。
比叡山・如意ヶ嶽を含む東山一帯は、京都盆地の東縁に連なる急峻な山地です。「盆地の縁に山地が接する」この地形では、大雨の際に斜面の土砂が一気に流れ出やすい構造になっています。見た目の「風情ある坂」は、地形的には「急峻な斜面のふもと」です。
ハザードマップで見てみた
京都市土砂災害ハザードマップで、圓光寺周辺を確認しました。圓光寺周辺は左京区「修学院学区」のハザードマップでご確認いただけます。

圓光寺周辺の土砂災害ハザードマップ(画像出典:京都市防災ポータルサイト)
圓光寺周辺およびその裏手(東側・山側)には、土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域が指定されています。
マップの見方
| 色・区分 | 意味 |
|---|---|
| 🟡 黄色ゾーン 土砂災害警戒区域 |
土砂災害が発生した場合に、住民に危害が生じるおそれがある区域。 |
| 🟠 オレンジゾーン 土砂災害特別警戒区域 |
建物に損壊が生じ、より著しい危害が生じるおそれがある区域。「2階に上がれば大丈夫」ではなく、建物ごと被害を受けるおそれがあります。 |
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圓光寺の裏手(東側)には山が見えます
このエリアで起こりうる土砂災害の種類
急斜面が直接迫っているこの地形では、主に「崖崩れ(急傾斜地の崩壊)」と「土石流」のリスクが想定されます。
- 崖崩れ(急傾斜地の崩壊):紫の点線で囲まれたエリア
- 土石流:緑の点線で囲まれたエリア
- 流速:時速20〜40km程度。走って逃げることはほぼ不可能
- 発生してから逃げることはできない
- 特徴:発生が突然で前兆を捉えにくい
- 警報が出てから逃げても間に合わないケースがある
黄色またはオレンジのゾーンに含まれていないから安全、ということではありません。区域外でも土砂災害が発生する可能性は十分に考えられます。「黄色のゾーンから抜けたから安心」ではなく、そのときの状況で判断し、土砂災害の場合はなるべく早めに、なるべく遠くに逃げるようにしてください。
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圓光寺で感じたこと
実際に境内を歩いてみると、「危ない場所」という感覚はほとんどありません。手入れされた竹林、静かな庭園。観光地として大変魅力的な空間です。

でも、山はある。斜面はある。
東照宮の高台から西を向けば京都の街が見渡せ、東を向けば山が迫っています。晴れた日の穏やかな景色の中では、大雨のときに山から何が起きるかは想像しにくい。
晴れた観光日に、「もし大雨が来たら、どちらに逃げるか」を一度だけ考えてみること。
圓光寺であれば、答えは明快です:「西へ」。山から離れる方向、盆地側へ。出口はどこか、西へ抜ける道はどこかを、境内を歩きながら確認しておく。それだけで、いざというときの初動が変わります。
ただし、一乗寺駅付近まで西に向かうと、今度は「水害の危険」が伴います。ハザードマップでは、一乗寺駅付近では「0.5〜3m未満」の浸水が想定されています。

圓光寺周辺の土砂災害ハザードマップ(画像出典:京都市防災ポータルサイト)
「観光地だから安全」でも、「整備されているから大丈夫」でもない。地形のリスクは、景観の美しさとは無関係に存在します。
訪れるときに意識したいこと
もちろん、普段の観光でリスクを必要以上に意識する必要はありません。このシリーズの目的は「行くな」ではなく、「知ったうえで行く」「いざというときに動ける」ことです。
- 大雨・台風接近の予報がある日は、山沿いの観光を控えることを検討する
- 訪問前に「土砂災害警戒情報」が発令されていないか確認する
(気象庁サイト・NHKニュース・スマホの防災アプリで確認できます) - 訪問中に急な大雨が来たら、山・斜面から離れる方向に移動する
このエリアでは「西へ」が基本です - 「小雨だからまだ大丈夫」と思わない
土砂災害は雨のピーク前後に多く発生します。雨が強まり始めたら、その時点で動き始めてください - 土砂災害警戒情報や避難情報が発令されたら、すぐに安全な建物に入るか、低地側に避難する
- スマホの緊急速報設定がオンになっているか、今日確認しておく
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まとめ:知識があれば、景色の見え方が変わる
- 圓光寺の裏手(東側)には、土砂災害警戒区域・特別警戒区域が指定されている
- このエリアで想定されるリスクは主に「崖崩れ」と「土石流」。いずれも「発生してから逃げる」では間に合わない
- 「西へ下る」が基本の避難方向。晴れた観光日に一度、逃げる方向を確認しておこう
- 大雨時は「強くなり始めたら動く」。警戒情報が出てからでは遅い
「防災目線で観光する」というのは、観光の楽しさを削ることではありません。知識がひとつ加わることで、同じ景色がより豊かに見えてきます。
ぜひ一度、防災目線で圓光寺周辺を歩いてみてください。
このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
実際の災害時は現場の状況に応じた柔軟な判断が求められます。記事に含まれる情報の活用は読者の皆様の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。また、記事の内容は大学の公式な見解や推奨を意味するものではありません。なお、記事に含みうる誤りに関する一切の責任は筆者に帰属します。

