2026.07.27 ぼうさいらぼ

「ハザードマップは自宅用」は間違い?:5分でできる旅行先・帰省先の災害リスク確認法

旅館の和室で、テーブルに肘をつき片手で顔を覆う女性の写真。中央に「ハザードマップは自宅用?」の大見出し、下部に「5分でできる旅行先・帰省先の災害リスク確認法」の小見出しが重ねられた記事サムネイル

旅行の準備で欠かせないもの、パスポート、充電器、着替え、カメラ。あなたのパッキングリストに、「旅行先のハザードマップ確認」は入っていますか?おそらく、ほとんどの方の答えは「入っていない」だと思います。でも、考えてみてください。旅行先で被災したとき、あなたは最も防災的に無力な状態にいます。そのような状況で大地震や豪雨に遭遇したら、あなたはどうしますか?

まだスマホがない時代、海外旅行に行くときは泊まるホテルの地図を印刷して持っていってた…のは最初だけで、途中から行きの空港で最寄りの駅だけ検索してメモって行くようになりまして。そうしていたら痛い目に遭いました。英語が通じない国、ちょっと贅沢して有名ホテルチェーンに泊まる計画。意気揚々と最寄りの地下鉄駅を出たらどこを探しても見当たらない!半泣きでタクシーに乗り、運転手の方に◯◯!◯◯!(ホテルチェーンの名前)を連呼するもまったく通じず。見かねた運転手の方が観光タクシーみたいにあたりをゆっくり流し始めたら、ビルの陰から現れたのはあのホテル…!「あれ!あれ!」と必死に指差してやっと到着できたサトウですこんにちは。翻訳こんにゃくがほしい。

このように旅では想定外のことが起こるものですが、サトウは準備を怠っていたため痛い目にあってしまいました。皆さんが同じ目に遭わないように(?)、今回は旅行前に確認したい「旅行先の災害リスク確認」を解説します。夏休みシーズン、旅行や帰省の前に一度だけ読んでください。

この記事でわかること
こんな人におすすめ!
  • 夏休みに旅行・帰省を予定している方
  • 「旅行先で被災したことを考えたことがなかった」という方
  • 防災対策は「自宅周辺だけ」と思っている方

旅行先での被災が「自宅より危険」な3つの理由

なぜ旅行先での被災が自宅より危険なのか。3つの理由があります。

1

土地勘がない

自宅周辺なら、どの道を行けば高台に出るか、近くに川があるかどうか、地盤が弱いエリアはどこかを、意識せずとも知っています。でも旅行先では、そのような感覚がゼロです。夜間に宿泊先で大雨警報が鳴ったとき、「どの方向に逃げればいいか」をその場で調べていては遅いのです。

2

避難場所がわからない

自宅の近くの指定緊急避難場所を知っている方は多いでしょう。でも旅行先のホテル近くの避難場所を知っている人、あるいは事前に確認する人は、ほぼいません。地震や水害が発生したとき、「避難場所はどこですか?」とフロントに聞けば教えてもらえるかもしれませんが、混乱の中でそれができるとは限りません。

観光地の宿泊施設が集積するエリアは、地形的に水辺や低地に立地するケースが少なくありません。函館市を対象とした研究では、津波浸水想定区域内に立地する宿泊施設のうち半数以上が垂直避難の難しい低層施設だったと報告されており、観光客の避難誘導体制づくりが課題とされています(永家ほか, 2015)。

3

地域のつながりがない

自宅周辺では、近所の方が声をかけてくれたり、地域の防災無線を通じて情報が届いたりします。旅行先では、そういった「人のネットワーク」が使えません。情報を自力で集め、自分で判断して行動しなければならない。これが旅行中に被災することの最大のハンディです。

災害リスク認知に関する研究では、「危険を知っている」ことよりも、「何をすればよいかが分かっている」という対処に関する認知のほうが、実際の備え行動につながりやすいことが指摘されています(柿本ほか, 2017)。つまり、旅行先の危険を漠然と意識するだけでなく、「ハザードマップを開く」という具体的な行動を1つ決めておくことが、いざというときの差になります。

旅行前5分でできる「ハザードマップ確認」の方法

難しいことはありません。スマホで5分あればできます。

1

ハザードマップポータルサイトを開く

国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」(https://disaportal.gsi.go.jp/)にアクセスします。

2

宿泊先の住所を入力する

予約確認メールに書かれているホテル・旅館の住所を入力し、地図を表示します。

3

確認するハザードマップを選ぶ

旅行先が海沿いなら「津波」と「洪水」、山沿いなら「土砂災害」と「洪水」を確認します。どちらでもない場合も「洪水」は必ず確認しておきましょう。

4

色と数字を読む

浸水想定区域には色がついていて、数字(例:0.5〜3.0m)が示されています。これが「この場所で何メートルの浸水が想定されるか」を示す想定浸水深です。下記は一例で、自治体によって凡例は異なることがあるので旅行先のハザードマップで必ず凡例を確認するようにしましょう。

色・区分 浸水深・目安
オレンジ 3〜5m未満:2階の屋根付近まで浸水
薄いオレンジ 0.5〜3m未満:2階の床付近まで浸水
黄色 0.5m未満:1階の床下付近まで浸水
5

最寄りの避難場所を確認する

同サイトで「指定緊急避難場所」の表示を選ぶと、最寄りの避難場所が地図上に表示されます。宿泊先からの方向と距離を大まかに把握しておきましょう。

ワンポイントアドバイス!
確認した内容をスクリーンショットで保存しておくと、現地で電波が悪い場所やオフラインの状況でも確認できます。
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ホテル・旅館でのチェックイン時に確認すること

ハザードマップの確認に加えて、チェックイン時に確認しておくと役立つことがあります。

非常口・避難経路の確認

部屋に入ったら、まず非常口の場所を確認します。多くのホテルでは廊下に避難経路図が掲示されています。煙や停電で視界が悪くなったとき、「何ドア分歩いて右に曲がれば非常口があるか」という感覚を持っておくことが重要です。

フロントへの一言確認

「地震や水害が発生した場合、どこに避難すればいいですか?」と一言聞いておくことは、決して恥ずかしいことではありません。特に山間部や海沿いの旅館では、スタッフが地域の避難情報を持っていることがあります。

部屋のベッドの位置にも注意しましょう。窓際のベッドは、地震の際にガラスが割れて破片が飛散するリスクがあります。可能であれば、窓から離れた位置で就寝することを意識してみてください。

ホテル・旅館内で被災した場合は「在宅避難」の考え方を活用する

旅行先のハザードマップで確認すると、周辺の緊急避難場所や指定避難所が把握できます。例えば、嵐山へ観光に行った際、渡月橋で被災した場合は、事前に調べた知識がとても役立ちます。

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ホテル・旅館にいるときに被災した場合は、どう行動したらいいでしょうか。答えは、「ホテル・旅館のスタッフの方の指示に従ってください」です。地震の場合は、いったんホテル前の広いスペース等(避難場所)への避難を求められるかもしれません。ただし、その後は建物に問題がなければ、そのまま部屋へ戻って待機が認められることもあります(すべてのホテル・旅館で対応している訳ではありません)。

以前の記事でも紹介したように、建物や環境などの条件を満たせば、在宅避難は避難の最も有力な選択肢となり得ます。旅行先でもこの考え方を活用し、そのまま自分の判断で最寄りの指定避難所へ向かうのではなく、選べるなら「在室避難」を選んだ方が良いでしょう。

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旅行中に役立つ防災の持ち物

旅行中の防災グッズは、「持ち歩けるコンパクトさ」が最優先です。本ブログで紹介した「防災ポーチ」の考え方が、旅行中に最も活きます。特に旅行中に役立つものを絞ると以下の通りです。

モバイルバッテリー(フル充電して出発):停電時でもスマホを使い続けられる。旅行中は充電できる機会が少ないため、大容量のものが有効
現金(千円札を複数枚+小銭):停電でATM・キャッシュレス決済が使えなくなることがある。旅行先での被災はこのリスクが高い
常備薬・処方薬:被災時に薬局が開いているとは限らない。旅行日数より多めに持参する
緊急連絡先カード:スマホが壊れた・電池切れのときでも、家族に連絡が取れるよう手書きのカードを財布に入れておく
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帰省先で被災した場合の注意点

夏休みの帰省も、防災の観点で見ると「旅行と同じ状況」です。実家に帰省しても、何年も住んでいないと土地勘が薄れています。特に以下の点に注意してください。

  • 実家のハザードマップを帰省前に確認する(地元のご家族も知らないケースが多い)
  • 実家の建物が旧耐震基準(1981年〈昭和56年〉5月以前に建築確認を受けた建物)の場合、大きな地震での行動に注意する
  • 地元の避難場所が、幼少期に知っていた場所から変わっていることがある(自治体による見直しがあった場合)

帰省は「久しぶりに家族に会える場所」ですが、同時に「自分の防災知識をアップデートする機会」でもあります。家族と一緒にハザードマップを確認することを、今年の帰省の話題のひとつにしてみてください。

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まとめ

今回のポイント
  • 旅行先での被災は「土地勘がない・避難場所がわからない・地域のつながりがない」という三重のハンディがある
  • 旅行前5分でできるハザードマップ確認を習慣にする(国土交通省ハザードマップポータルサイト)
  • チェックイン時に非常口・避難経路を確認し、フロントに避難先を聞いておく
  • 旅行中の防災は「コンパクトな持ち物」が鍵:モバイルバッテリー・現金・常備薬・緊急連絡先カード
  • 帰省も「旅行と同じ」と認識し、実家のハザードマップを事前確認する

「旅行先のハザードマップ確認」をパッキングリストに加えることは、荷物は増えません。スマホで5分、今夜の宿を調べるついでに確認するだけです。

「ちょっと防災」、今日から始めてみてください。

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サトウ先生|博士(工学) / 防災士
京都光華大学 社会学部 社会共創学科
「専門知識を、わかりやすく身近に。」これまで数々の自然災害を目の当たりにしてきた実体験をもとに、防災に関する大学での講義や地域での講演を行う。南国出身のため雪にはとっても不慣れで、京都での最大の災難は大雪のときに滑ったことだと思っている。摩擦係数の計算は得意だが、雪道の滑りやすさは計算外だった。だが、その失敗さえも防災の教訓に変えてしまうのが私のスタイルだ。実に面白い。
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このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
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参考・出典
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