2026.06.11 ぼうさいらぼ

マイタイムラインの作り方:水害・台風の避難行動を事前に決める4ステップ

京都市のマイタイムライン作成パンフレットとノートパソコンで作業する男性の写真。中央に「マイタイムライン」、下部に「4ステップで事前に決めておく『災害時の避難行動』」のテキストが重ねられた記事サムネイル

「災害のときにいつ・何をするか」これを事前に決めておくのが「マイ・タイムライン」です。名前は聞いたことがあっても、実際に作ったことがある人はとても少ないのが現状です。

「計画的に進める」。早めに避難しましょう、備えましょうと記事をたくさん書いている私がこどもの頃に最も苦手だったことですね(笑)。夏休みの宿題なんて3日前着手は当たり前。そんな私がちょっと困ったのは中学の理科の自由研究。意外と時間がかかることがわかり愕然とした私は、「一番早く終わる」ということに全集中。とある実験を思いつき、1日でレポートを作って提出するという人間がいま研究者をしているサトウですこんにちは。研究者<「無計画の呼吸(ダメぜったい!」

こどもの頃の夏休みの宿題は計画的でなくても最後の頑張りでなんとかなりますが、目の前に災害が迫っているときに「最後の頑張り」は存在しません。当然、災害に備えた行動計画が最も重要になります。この記事では、マイ・タイムラインとは何か、そして自分専用の逃げ方を具体的にどう設計するかを手順書形式で解説します。

この記事でわかること
こんな人におすすめ!
  • 「マイ・タイムライン」という言葉は知っているが、作ったことがない方
  • 大雨のたびに「どうしよう」と迷ってしまう方
  • 水害リスクのある地域に住んでいる方

マイ・タイムラインとは何か

「マイ・タイムライン」とは、台風の接近や大雨による河川水位の上昇に合わせて、「いつ・何をするか」を時系列で整理した、自分専用の避難行動計画です(国土交通省)。

地震は突然来ますが、台風や大雨による水害は「予測できる災害」です。台風は数日前から進路が予測され、大雨は気象情報から数時間前に把握できます。つまり、「事前に計画する余地がある」災害なのです。

にもかかわらず、多くの人が大雨のたびに「どうしよう、どこに逃げようか」と、緊急時に初めて考え始めます。緊急時の判断は精度が落ちます。焦っている、情報が錯綜している、家族と連絡が取れないという状況では、正しい判断は難しいのです。

マイ・タイムラインは「緊急時に考えなくていいようにする」ための設計図です。災害行動心理学の観点からも、事前に具体的な行動計画を持つことで、緊急時の判断ミスや行動の遅れを大幅に減らせることが示されています(Lindell & Perry, 2012)。

なぜ「みんなで使う」タイムラインではなく「マイ」なのか

自治体が発令する警戒レベルは全員に向けたものですが、そこからの行動は人によって異なります。

家族がいる場合
  • 足の不自由な家族がいれば準備に時間がかかる
  • 子どもの送迎が必要な時間帯がある
  • 家族の集合・連絡手段を確認する必要がある
 一人暮らしの場合
  • 自分の判断だけで動く必要がある
  • 安否確認を事前に取り決めておく必要がある
  • 逃げ遅れても気づいてもらえないリスクがある

車を持っているかどうか、近くに高台があるかどうか、ハザードマップで浸水リスクが高いエリアかどうか。これらはすべて「自分の状況」によって変わります。だから「マイ」なのです。自分の状況に合わせた、自分専用の行動計画が必要です。

あわせて読みたい
「危険警報」って何?2026年5月から変わった防災気象情報を解説します

STEP 1:自分の家のリスクを確認する

📍 まず自分のリスクを知る

まず、ハザードマップで自宅の浸水リスクを確認します。確認すべき情報は以下の2点です。

あわせて読みたい
ハザードマップの「読み方」で、知識が行動に変わる:色の意味から使い方まで、実践的に解説します
1

洪水(外水氾濫)の想定浸水深

色の濃さが浸水の深さを示しています。0.5m未満(膝下)なのか、3m以上(2階が水没する可能性)なのかによって、逃げるタイミングと逃げ先が変わります。

浸水深 状況の目安 行動の考え方
0.5m未満 膝下程度の浸水 早めの水平避難を検討
0.5〜1m 腰〜胸程度の浸水 水平避難を優先
3m以上 2階相当が水没 必ず水平避難(早期に)
2

内水氾濫リスク

川が近くなくても浸水する「内水氾濫」のリスクも確認してください。自治体の「雨水出水浸水想定区域図」で確認できます。

あわせて読みたい
内水氾濫とは何か?川がなくても浸水する理由と、自宅のリスクの調べ方【ハザードマップ活用】
「家屋倒壊等氾濫想定区域」に自宅が含まれる場合は、垂直避難(上の階に逃げる)ではなく、必ず水平避難(別の場所に逃げる)が必要です。ハザードマップで必ず確認してください。

STEP 2:逃げ先と経路を決める

📍 どこに・どうやって逃げるかを決める

次に、どこへ逃げるかを決めます。水害のときの逃げ先は「水害対応の指定緊急避難場所」です。地震の避難場所と同じとは限りませんので、必ず水害に対応した場所を確認してください。

あわせて読みたい
水害のとき安易に「指定避難所」へ逃げてはいけない?正しく逃げる避難場所の選び方

ハザードマップポータルサイトで自宅周辺の指定緊急避難場所を調べ、「水害(洪水)」に対応していることを確認します。

逃げ先が決まったら、そこまでの経路を確認します。浸水が進んだ道路は通れなくなります。自宅から逃げ先までの複数の経路を事前に把握しておきましょう。できれば実際に歩いて確認してみることをおすすめします。

あわせて読みたい
【新生活の防災】新しい通学路・通勤路、防災目線で歩いたことありますか?

STEP 3:警戒レベル別の行動を設計する

マイ・タイムラインの核心部分

警戒レベルの上昇に合わせて、「このタイミングでこれをする」を具体的に書き出します。以下は一例です。自分の状況に合わせて変更してください。

台風接近 2日前
  • 最新の台風情報を確認する(気象庁サイト)
  • ハザードマップで自宅周辺のリスクを再確認する
  • モバイルバッテリーを充電する
  • 非常持ち出し袋の場所を確認する
台風接近 1日前・警戒レベル1〜2
  • 窓・雨戸を閉める
  • 外の植木鉢や飛びそうなものを室内へ
  • 食料・水の備蓄を確認する
  • 家族・知人と連絡を取り合う
警戒レベル3(高齢者等避難)
  • 避難を開始するタイミング(特にリスクの高い地域の方)
  • 〇〇(逃げ先の名称)へ、〇〇経路で移動する
  • ペット・常備薬・重要書類を忘れずに
  • 災害時の避難に不安がある方は、遅くともこのレベルで避難完了できるようにしましょう。「個別避難計画」の作成を行っておくと安心です。
    (参考)京都市「京都市における個別避難計画作成推進事業の取組について
警戒レベル4(避難指示)
  • 全員が避難を完了させるタイミング
  • まだ避難していない場合は直ちに行動する
ポイントは「迷わず動ける」レベルの具体性で書くことです。
「そろそろ逃げようか」→ ×
「レベル3が出たら〇〇へ逃げる」→ ◯
あわせて読みたい
「避難勧告」は廃止されたのを知っていますか?:新しい5段階の警戒レベルを正しく理解する

マイ・タイムラインは専用のシートに書き込んで作成するのもいいですし、オンラインやアプリで作成することもできます。自身や家族のライフスタイルに合わせた方法で作成するようにしましょう。

京都市マイ・タイムラインの記入例。左側が水害・土砂災害用、右側が地震用。

京都市マイ・タイムラインの記入例。左側が水害・土砂災害用、右側が地震用。(画像出典:京都市防災ウェブサイト「マイ・タイムライン」)

STEP 4:家族・周囲と共有する

計画を「共有」して初めて機能する

マイ・タイムラインは自分だけが持っていても意味が半減します。家族全員が同じ情報を持っていること、そして「うちはレベル3で動く」という共通認識があることが重要です。

一人暮らしの方は、離れた家族や信頼できる友人に「自分のタイムライン」を共有しておきましょう。「レベル3が出たら避難する。連絡が取れなければ〇〇にいる」と伝えておくことで、安否確認も楽になります。

あわせて読みたい
「家族と防災の話をしたことがない」人が今すぐできる30分家族会議

コラム:マイ・タイムラインは地震用も存在する

マイ・タイムラインをご存知の方も「水害を想定して作るものでしょ?」と認識されている方が多いです。確かにマイ・タイムラインは「進行型災害」と呼ばれている大雨や台風対策としてもっとも効果的なものですが、「突発型災害」と呼ばれる地震にも有効です。

京都市が作成しているマイ・タイムラインには「水害・土砂災害用」に加え「地震用」のマイ・タイムラインが存在します。ここでは「日頃からの備え」「地震発生」「発災から3分/30分/3時間/3日」に分けて行動が整理できるようになっています。実は、この「3」という数字は災害の世界では重要な数なのですが、それはまた別記事で紹介します。

📌 地震用マイ・タイムラインの時間軸
日頃からの備え 家具固定・備蓄・避難場所の確認
地震発生 身の安全を確保する
発災から3分 火の確認・初動行動
発災から30分 周囲の状況確認・家族と合流
発災から3時間 安否確認・避難の判断
発災から3日 避難生活・支援情報の収集

まとめ

  • マイ・タイムラインとは「いつ・何をするか」を事前に決めた自分専用の避難行動計画
  • 水害は「予測できる災害」。事前に計画できるのが地震との大きな違い
  • STEP1:ハザードマップでリスク確認 → STEP2:逃げ先・経路を決める → STEP3:レベル別行動を設計 → STEP4:家族・周囲と共有
  • 「レベル〇〇が出たら〇〇へ逃げる」という具体的な記述が命を守る
  • 水害用のマイ・タイムラインだけでなく、地震用のマイ・タイムラインも作成しておく

「ちょっと防災」、今日から始めてみてください。

この記事を読んだ方におすすめ

なぜ水害で人は逃げようと判断しないのか

2026.06.05

なぜ水害で人は逃げようと判断しないのか:正常性バイアス・同調バイアスが命取りになる理由

正常性バイアスとは何か

2026.03.19

正常性バイアスとは何か:災害での避難時に「まだ大丈夫」が命取りになる理由

台風が来てからの準備では遅い:上陸72時間前から始める行動タイムライン

2026.06.02

台風が来てからの準備では遅い:上陸72時間前から始める行動タイムライン

断水シミュレーション

2026.05.07

【断水シミュレーション】9リットルの水は何日もつ?:災害時の使い方と節水の優先順位

ローリングストックの始めかた

2026.02.24

コスパ最強の備蓄!ローリングストックの始めかた-めんどくさがりでも続く3つのルールと厳選リスト

Instagram @kokacocreation

@kokacocreation

本ブログの趣旨と免責事項

このブログは、学生や地域の皆様が防災の基本を体系的に学べる「オンライン防災教本」を目指して、本学教員である筆者の研究・教育成果に基づき作成しています。
実際の災害時は現場の状況に応じた柔軟な判断が求められます。記事に含まれる情報の活用は読者の皆様の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。また、記事の内容は大学の公式な見解や推奨を意味するものではありません。なお、記事に含みうる誤りに関する一切の責任は筆者に帰属します。

参考・出典
一覧に戻る