学長メッセージ

学長挨拶

建学の精神と優しさ

 最近の内外の世相に目を向けるとき、私たちは今歴史の変革期―それも悪い方向に向かって―に遭遇しているように思えてなりません。自己中心主義が蔓延し分断と亀裂の世界に陥っているのではないでしょうか。

 そんな世の中は、優しさを欠いた世界であるとも言えましょう。優しさを欠くということは、動植物を含めての他なるものへの思いやり、配慮、寄り添う気持ちを失っていることの証しといえましょう。金子みすゞさんの次の詩を味わってみましょう。

「上の雪/さむかろな。/つめたい月がさしてゐて。
下の雪/重かろな。/何百人ものせてゐて。中の雪/さみしかろな。/空も地面じべたもみえないで。」

 大方の私たちは、積もった雪を見て上の雪と下の雪というふうに二層に分析することはできるでしょう。しかし、間に挟まれた「中の雪」のことまで心がいくでしょうか。いわんや中の雪に対し「さみしかろな 空も地面もみえないで」という情感を抱くであろうか。恥ずかしいことだが私にはできなかった。ここに金子みすゞさんの優しさに心打たれるのです。

 優しさは、仏教の慈悲の内容です。慈悲は、英語では Compassionと訳されます。Compassionとはcom(共に)+passion(苦悩)と分解されますから、苦を共にするという意味です。他者の苦悩をわが事として受けとめ、他者の喜びをわが事として分かち合うことです。自己の利益追求のみに走りがちな私たちにとっては対極的な精神性です。

 実は、この慈悲の心こそ、本学の建学の精神・校訓であります。現代社会にあってこの慈悲の心を建学の精神に仰ぐことを誇りとし、それを身につける学生さんを育成することで社会へ貢献する所存であります。

※出典:「積つた雪」『金子みすゞ全集』(JULA出版局)より

京都光華女子大学 京都光華女子大学短期大学部 学長  一郷 正道
京都光華女子大学
京都光華女子大学短期大学部
学長 一郷 正道