2019.12.16

私の研究 ―子どもの遊びと自己表現―

大学生の頃、近くの保育園の子どもたちが園庭や公園で遊んでいるのを眺めるのが大好きでした。小さな子どもが、世界に存在している様々なものに生き生きした好奇心を向け、時には手の届かないものや目に見えないものまでたぐり寄せようとして一所懸命になる姿はとても魅力的です。それは大人になるにつれて見失ってしまうような生の原点であり、自分と世界との関わりの根源であると思います。

子ども時代を十分生きられず、自己感覚とズレる形で社会適応の良い状態が続いてしまうと、存在の根っこが十分張れず、不安定なまま大人になってしまいます。根っこをちゃんと張るためには、一時期、自分なりの遊びや手応えのある活動に没頭して、じっくりと自分と世界との関わりを体験することが大切です。その体験がゆっくり身についてくると、自分自身および自分と世界とのつながりを表現できる力になっていきます。

私はこれまで臨床心理士として、子どもを主な対象とする描画法や遊戯療法、さらにスクールカウンセリング、保護者への子育て支援や教師へのコンサルテーションなど、幅広い分野にわたって支援に携わってきました。特に東日本大震災の際、福島県で派遣スクールカウンセラーとして活動したことは大きな転機になりました。その後心のケアだけではなく、逆境にしなやかに立ち直る力(レジリエンス)を培う予防的アプローチを広めることを目的とした「京都光華心のキャラバン隊」としても活動しています。

私の研究の拡がりと深まりはまだまだ不十分ですが、様々なことにチャレンジできるのは、先人たちの臨床の知恵とクライエントの立ち直りのエネルギー、同僚や仲間のあたたかい協力や励ましの賜物と、とても感謝しています。        

徳田仁子(2019年12月16日