2020.02.07

私の研究 ~ カウンセラーの実践指導 ~

私の研究テーマの一つに、「臨床心理士養成における実践指導」があります。これは、私が大学院時代に、優れた先生や先輩たちから、必死になって学びとった経験がベースになっています。当時、臨床心理学の実践を専門的に学べる大学院は、全国に数が少なく、一生懸命勉強して何とか入学することができました。

 

 大学院に入ると、すぐに実践的な勉強が始まりました。まずは先輩たちの実践報告を聴かせてもらうのですが、心理療法の世界は目に見えません。血液検査の結果のように数値化できませんから、その心理療法が良い方向に向かっているのか、悪い方向にむかっているのかですら、簡単には判断できないのです。初心者の私には、先輩と来談者との間に何が起こっているのか、自分の理解力だけでは全くわからず、何とか理解しようと、もがく日々が長く続きました。当時の教科書には載っていないような難しい相談なのに、先輩たちが誠心誠意関わっているうちに、なぜだか来談者がよい方向に変わっていかれる。そこに、先生が的確な助言を与えておられて、その先生のお話を聴いて、初めて私にもその実践の中で何が起こっていたのかが少し理解できるようになる。この学びを何年も繰り返しながら、自分自身も教育現場や医療現場での実践を経験する中で、ようやく独力でも、心理療法の中で何が起こっているのかを理解できるようになりました。

 

この優秀な先輩たち(ときに同輩や後輩たち)と先生方から学んだ心理臨床の基礎(どの学派にも共通して重要なことだけれど、マニュアル化できないもの)を、大学院生や学生さんに身につけてもらうには、どのように伝えればよいのか。その指導方法の質的向上を探求しています。

 

                                                                             鳴岩伸生(2020年2月7日)