2020.11.02

看護学科「仏教看護論Ⅱ」で、宗教関係者の方とともに医療現場に宗教者がいることの意味を考えました

10月19日(月)、看護学科4年生の必修科目である「仏教看護論Ⅱ」にて臨床僧侶の長倉伯博先生を講師としてお招きし、学外から僧侶をはじめとする宗教関係者とともにグループワークを実施しました。

本科目は自らの看護実践を仏教の視点から整理することを主眼としています。3年次に学生自身が経験した病院での臨地実習を単に振り返るのではなく、仏教の視点を持って見直すことで、人間の生老病死の実際についてより深く学び、将来、看護職として様々な価値観を持った人々を支援する力を養います。

今回の授業では、終末期のがん患者さんやALSの患者さんの事例についてグループワークを行い、看護師となる学生たちは宗教者との対話を通して、医療現場に宗教者がいることの意味を考えました。

授業に参加した学生たちはどのようなことを学び、感じたのかインタビューを行いました。

1.今回の「仏教看護論Ⅱ」の授業ではどのようなことを学びましたか? 

■N.Mさん
今回の授業では、ALSの患者さんの事例についてディスカッションを行いました。
この患者さんは、「このまま症状が進行していって自分の意思が伝えることができなくなるのなら生きていても意味がない、死にたい」と発言していて、それに対し看護師としてどう応答するかと言う事例でした。
私は、患者さんの「死にたい」という言葉をそのまま受け取っていたのですが、グループメンバーの意見や他のグループの発表を聞いて患者さんの言葉に隠された本当の思いを汲み取ることが大切であると学びました。
「死にたい」のではなく、「死にたいほど辛い」のかも知れないと、様々な視点から患者さんを捉えることが必要であると学びました。

■K.Nさん
同じ事例に関して、グループメンバーと意見交換をしたことで、自分では考えつかなかった意見を知ることができ、他者の様々な意見・見解を知ることができました。
また、同じ看護学科の学生以外に、僧侶の方や他学部の学生、他大学の大学院生など様々な立場の方々とお話しすることができ、各々の立場から見た患者像を知ることができました。
今回の授業は、自分自身が非常に狭い視野で物事を考えているということを知るきっかけとなりました。

■O.Sさん
「死」に対する医療者と宗教者の受け止め方の違いを知りました。
また、仏教ならではの「感謝」の気持ちは、素晴らしい心配りであることを学びました。
看護をするときには、精神的ケアも含まれ、想像できないような場面に出会うこともありますが、今回の事例から私自身がまず、感謝すること、傾聴していくことの大切さ、その後に関わりからどんなケアを提案できるかなど、看護の基本を改めて学ぶことができました。

2.学んだことは今後、仕事や社会に出た時にどのように生かせそうですか? 

■N.Mさん
言葉として発されていることが全てではないと言うことを学んだため、実際に臨床の現場に出て患者さんからの訴えがあった時には、患者さんの表情や周りの環境など様々な視点を持って患者さんの言葉を捉え、看護を行いたいと思います。

■K.Nさん
看護をするとき、患者様に目を向けてしまいがちですが、患者様を取り巻く環境や患者様の精神面や身体面を常に支えていらっしゃるご家族や医療者にも目を向けるべきだと再認識ました。
これから看護師として働くときには、広い視野を持って患者様だけでなく、ご家族の看護にもあたりたいと思います。
また、看護師の仕事は、「生死」というものから離れられない仕事であるため、自分自身の「死生観」を持ち、患者様が身体面だけでなく精神面などで苦痛を訴えられた時には、患者様と共に考え、向き合っていきたいと思います。

■O.Sさん
事例は家族構成も設定されていたので、患者様とご家族の関係性についても考えることができました。
私が看護師になって、今回の事例のような場面に立ち会った時には、患者様とそのご家族にも寄り添えるような看護を意識したいと思います。

3.「仏教看護論Ⅱ」に対する感想を教えてください。 

■N.Mさん
自分と同じ看護学生と言う立場の人だけでなく、仏教に関わっておられるお坊さんや学生さんなど様々な立場や年齢の方と1つの議題に向き合って話し合うことで、学生間では出なかった意見や考えを知ることができてとても勉強になりました。

■K.Nさん
短い時間ではありましたたが、様々な立場の方々と意見交換ができ非常に有意義な時間になりました。
他大学の方や宗教者の方々との意見交換に初めは緊張しましたが、私の話をしっかりと聞いてくださったので、緊張しながらも自分の意見を述べることができました。
他者の話を傾聴することは、看護師になっても必要不可欠なことであるため、それを私自身が今回の授業で実感することができ、傾聴の大切さを学ぶことができました。

■O.Sさん
看護だけを学ぶのではなく、仏教の「生老病死」という考え方を学ぶことはとても勉強になります。
授業で宗教者の方が「死」が決して悪いことではないと話してくださったとき、私は納得と同時に、悪いことではないのになぜ「死」について考えないようにしてしまうのだろうと疑問を抱きました。
医療者が「死」について話すときは、マイナスな意味に捉えられがちですが、そのようなイメージも含めてもっと仏教について今後も学んでいきたいと思います。