2019.12.04
第4回宗教講座を開講いたしました
2019年11月29日(金)、第4回宗教講座に、辻村 優英先生(神戸大学 経済経営研究所 ジュニアリサーチ フェロー)をお迎えし、ご講演いただきました。
ご講演では「現代社会に仏教は必要か? ーダライ・ラマ14世の思想における科学・共苦・経済ー」と題し、仏教は私たちの生活に必要なのか?必要だとしたら、仏教は我々に何をもたらしてくれるのか?についてご自身の経験や現在研究されている内容を交えながらお話しくださいました。
辻村先生は、ご自身が幼少期に触れられた仏教的世界観と、学生時代を通じて触れられた科学的世界観の矛盾に気づき、「現代社会に仏教は必要なのか?」と疑問を抱かれたということです。
お話しの中では、まず始めにダライ・ラマ14世の紹介をしてくださり、さらにチベット仏教の成り立ち、またその思想についてご説明くださいました。そして、チベット仏教(のみならず、チベット仏教が引き継いだインド仏教)における「正しい認識手段」とされるものが、現代科学を成り立たせる「正しい認識手段」と親和性が高いことを示されました。
後半には仏教の大きな目的の一つである「慈悲」についてお話しくださいました。「慈」とは、有情たちが楽とその原因を持つように欲すること、「悲」は、有情たちが苦とその因の一切から離脱するように欲することを意味しますが、それらは、他者の苦しみを我が苦しみとし、他者が苦しむのは見るに耐え難いことであり、それらを「共苦」という言葉であらわすことができるとご説明されました。
そして、その「共苦」や「利他」は何のため?という切り口で、ダライ・ラマの思想を踏まえながら、自己利益は他者利益の追求の中にあるということをご説明くださり、最後にまとめとして、私たちが苦しみを望まないのであれば、その苦しみについてどのように対処すべきかについて、自利他利円満ということを仏教は示しており、それは現代社会において必要であると締めくくられました。
目まぐるしい変化の中で日々生活する私たちが見失いがちな、自己利益のためだけでない「人と人との関わり」を見つめ直す機会となったのではないでしょうか。
辻村先生、貴重なお話をありがとうございました。
宗教部員