種まく人たち
若者が日本酒を楽しむことで日本の食文化を守れるように

Project

若者が日本酒を楽しむことで日本の食文化を守れるように

04 Well-Beingの実現へ
京都光華の想い

2026年3月15日、本学光耀館1階実習食堂で、学生の企画・主催による「日本酒試飲会」が開催されました。
学生や教職員に加えて地域の方々も多数来場され、2時間で約60人が試飲を楽しみました。
会場では、来場者が日本酒の香りや味わいを確かめながら感想を語り合ったり、
学生に質問したり、ボトルのラベルをじっくり眺めたりする姿が見られました。

提供された日本酒は、京都光華大学の名にちなむ純米吟醸「光HIKARI」と、大吟醸「華HANA」です。
学年や学科を超えた自由参加型のラーニングコミュニティ「学 Booo」内の学習グループ「酒づくりと人のつながり(担当教員:呉 鴻 准教授) 」メンバー18名が開発しました。2022年にスタートしたこの学習グループは、京都・伏見の酒蔵、招徳酒造株式会社との共創によって、若者にも好まれる日本酒を毎年開発しています。

また、メンバーが試行錯誤を重ねて考案した日本酒ベースのカクテルも提供されました。
これまでにない味わいを楽しみながら、来場者の会話が広がり、
会場は明るく賑やかな雰囲気に包まれていました。

Project members

プロジェクトメンバー

  • 呉 鴻 准教授

    キャリア形成学部 キャリア形成学科
    社会学部 社会共創学科 准教授

    プロフィール
  • 木村 紫晃

    招徳酒造株式会社 代表取締役
    招徳酒造 十四代目蔵元

    招德酒造株式会社
  • N.S. さん

    キャリア形成学部
    キャリア形成学科 4年生

    プロフィール
  • S.K. さん

    看護福祉リハビリテーション学部
    看護学科 4年生

    プロフィール

※掲載しているプロフィールは取材当時の情報です。

01

若者の声を酒づくりに活かして
「日本酒離れ」の状況を変えたい

近年、「若者の日本酒離れ」が指摘されています。そもそもお酒を飲まない若者、ビールやハイボールばかりで日本酒は飲まないという若者も増えているのではないでしょうか。実際に、日本酒の国内消費量は1973年(昭和48年)頃をピークに減少し続けています。

しかし、日本酒は日本の食文化そのものを支えてきた存在です。米と水を主原料とし、和食と相性が良く、刺身や発酵食品など日本の食文化と共に発展してきました。神社のお神酒や開店時のふるまい酒など、生活文化とも深く結びついています。

本学社会共創学科学科の呉 鴻 准教授は、専門分野である映像表現の仕事で京都・伏見の酒蔵、招徳酒造株式会社の酒づくりに密着した経験から、日本酒そのものだけでなく、日本酒と日本文化との関わりにも関心を持ち、若者の日本酒離れについて考えるようになりました。本学へ赴任後、学生に「日本酒を飲みますか?」と聞いてみた呉 准教授。「飲まない」「難しそう」「年配の人が飲むもの」という声があがる一方で「日本酒大好きです!」という学生もいました。「日本酒の魅力はまだまだ若者にも響く、そういう人の声を拾い上げて日本酒づくりに活かせば、この状況も変えられると思うようになりました」と話します。

2022年度、呉 准教授は、本学の自由参加型ラーニングコミュニティ「学 Booo」に、新しいプロジェクト「酒づくりと人のつながり」を立ち上げました。若者の日本酒離れの解消と、京都の伝統産業を守ることを目指すものです。呼びかけに応じて12名の学生がプロジェクトメンバーとして参加。招徳酒造株式会社へ協力を依頼し、京都府の「きょうと府内定着等推進事業」にも採択されて、産官学の連携によるプロジェクトがスタートしました。

02

純米吟醸「光HIKARI」と
大吟醸「華HANA」が完成

招徳酒造株式会社の代表取締役、木村紫晃氏は、日本酒が普段の生活や日本の食文化から遠い存在になりつつあることに危機感をおぼえていました。「日本酒を食事と共に味わうことや、調理に使うことを、日本の食文化として若い世代に伝えていきたい。だから、プロジェクトに参加しようと思いました」。しかし若い学生であるメンバーには日本酒についての基礎知識がありません。まずは招徳酒造の酒蔵を見学し、酒づくりの工程を知ることから始めました。学内でも木村社長の講義を受け、20歳以上のメンバーは何種類かの日本酒を試飲。「どう思う?」「これは辛いね」「こちらはすっきりしているかも」など、感想を話し合った結果、メンバーの心に浮かんだのは「私たちにも飲みやすい日本酒ができるといいな」ということでした。

そう伝えられた木村社長は、社員や杜氏と話し合い、同社の原酒を使って若者の好みに合いそうな味わいの日本酒をブレンドしてみました。「これはいけるのでは?」と手応えを感じたメンバーは、さらに意見を出し合います。「もっと甘い方がいい」「香りを強く」「もう少しあっさり」。意見が分かれることもあったといいます。木村社長は当時のことを「通常の商品開発と同じ工程です。でも、プロとは違い、若くて飲酒経験の少ない人の感じ方や言葉が我々のイメージと合っているのかが分からず、難しいと感じました」と振り返ります。

それでも粘り強く試飲を重ねた結果、ベースとなる2種類の味わいが決まり、そこからさらにブラッシュアップして、12月に完成したのが、本学オリジナルの純米吟醸「光HIKARI」と大吟醸「華HANA」です。「光HIKARI」は、明るく、軽く、飲みやすく、すっきりしたイメージ。「華HANA」は華やかで香り高いイメージ。メンバーも、木村社長も、呉 准教授も、イメージを共有し、納得のいく日本酒が完成したのです。

3月には3号館地下の食堂「レストラン・リストランテ グラード」で初めての試飲会も開催。呉 准教授は「光」や「華」のイメージをプロジェクションマッピングで表現し、雰囲気を盛り上げました。地域の方も含め80人もの方が来場し、オリジナルの日本酒を試飲。今後さらに広く愛される日本酒に磨き上げていくため、ヒアリングやアンケートも実施しました。

1年目の活動を終え、呉 准教授は大きな手応えを感じていました。「私が何も言わなくても、メンバーが自分たちでしっかり役割分担してスケジュールを管理し、ミーティングを行い、イベントの準備をするなど、プロジェクトに積極的に関わってくれました。この活動は続けるべきだ、そう思いました」。

03

稲刈りに参加して
酒米生産の現場も体験

プロジェクト2年目の初め、メンバーは、招徳酒造の酒米を生産する契約農家の水田で稲刈りを体験しました。「学生の皆さんに、酒米生産の現場を少しでも感じてもらえれば」 という木村社長のご厚意によるものです。呉 准教授も同じ思いでした。「伝統産業として酒米を作り続ける農家さんがいて、酒蔵でのさまざまなプロセスを経て、はじめて美味しい日本酒になることを知ってほしいと思いました」。水田がある京都市右京区越畑地区は、棚田が広がる標高約450メートルの山村。稲刈りには外国人を含むボランティアも参加していました。「京都にもさまざまな顔があること、過疎化が進む地域で酒米生産を続けることの大変さも実感できたのではないかと思います」(呉 准教授)。

日本酒の改良も続けました。4年生が卒業し、メンバーも変わっていくので、これまでの経緯を伝えつつ、新メンバーの意見や試飲会での声も反映させながら、その年の日本酒を作り上げていきます。呉 准教授が監修するボトルやラベルのデザインも、メンバーの意見を取り入れながら、洗練されていきました。毎年3月に試飲会を開催することで、季節のイベントとして地域の方からの認知度も向上。学内で学生限定の試飲会も開催し、若者の率直な意見を聞く機会も設けるようにしました。

現在、プロジェクトのリーダーを務めるキャリア形成学部キャリア形成学科4年生のN.Sさんは、呉 准教授に依頼されて2回目の試飲会のお手伝いをしたことをきっかけにプロジェクトへ参加。「お酒に興味があったので、日本酒の活動に関われるならやってみようと思いました。20歳になって初めて飲んだお酒は「光HIKARI」と「華HANA」です」と笑います。看護福祉リハビリテーション学部看護学科4年生のS.K.さんは「課外活動をしたいと思っている時にこのプロジェクトを知りました。両親がお酒好きなので、日本酒づくりに関われるならぜひ参加したいと思いました。20歳になって自分が関わった日本酒を飲んでみるとすごく飲みやすく、多くの人に飲んでほしいと思っています」と話します。

つなぎ・つなげる KOKA KYOTO

2025年8月30日~31日、日本国際博覧会(大阪・関西万博)関西パビリオンの京都ブースで、「光HIKARI」と「華HANA」が来場者に提供されました。
本学は、8月25日~8月31日の期間、同ブースで、嚥下調整食和菓子など食のバリアフリー化の技術開発と普及促進に関する展示、アップサイクルにより開発した製品の展示を実施。同時に展示されていた「光HIKARI」「華HANA」は、最後の2日間に試飲会という形でふるまわれ、本学の産官学連携プロジェクトで誕生した日本酒を、国内外の多くの方に知っていただく機会となりました。
試飲には長蛇の列ができ、試飲カップで1日300杯を提供する盛況ぶり。学生スタッフとして参加していたN.Sさんは「試飲された方の半数ほどは、私たちの同年代の方だったのが印象的でした。提供している1種類を試飲された方が、もう1種類も飲みたいからと開けるのを待ってくださったり『どこで買えるんですか?』と聞かれたり、とても好評だったことが活動への励みになりました」と話します。海外の方も含め「美味しい」「飲みやすい」という声を多く聞けたことで、世界の中での日本酒の未来にも大きな手応えを感じられた経験になりました。

04

学生自身のアイデアから生まれた
「日本酒カクテル」も好評

3月15日に開催された4回目の「日本酒試飲会」では、おつまみとして、地域の漬物店「京つけもの もり」の漬物6種、徳之島の「のんちゃんChi」の徳之島ドーナツ3種も提供されました。ドーナツは、リーダーのN.Sさんが参加した学外の交流会での出会いから、事業者によって提供いただいたもの。いずれもあっという間になくなり、日本酒との相性を試しては感想を述べ合う人の姿が多く見られました。

「日本酒カクテル」も人気のコーナーです。提供されたのは、日本酒を、乳酸菌飲料、レモン風味の炭酸飲料やジンジャーエール、グレープフルーツジュース、レモネードで割ったもの。メンバーのアイデアから始まり、たくさんの材料を試し続けて割材を絞り込んでいきました。「乳酸菌飲料と『華HANA』の組み合わせがいい」「グレープフルーツなら『光HIKARI』かな」。さまざまな意見は、すべて次に活かすための貴重な材料となります。

「日本酒試飲会」とは別に、学生対象の「日本酒deカクテル試飲会」も開催されました。メンバー自身が発案し、企画、開催にこぎつけたものです。「日本酒試飲会」では採用されなかった、みかんやぶどうなど他の割材も試飲してもらい、感想を聞きました。「私たちのアイデアが形になったことで大きな達成感がありました。自分の推しの飲み物に日本酒を合わせることで、これまでとは違う味わいを楽しめたら面白い、そんな気軽な感覚で、日本酒カクテルが広がっていけばいいなと思っています (Nさん)」。

「日本酒をカクテルにするなんて大丈夫?」と心配していた呉 准教授も、メンバーがチャレンジする姿を見て考えを改めたと言います。「京都の伝統は、新しいものへのチャレンジの歴史でもあるんですよね」。木村社長も「我々ではこんな発想は絶対に出てこないので、すごく面白いと感じています。新しい発想をいただけるのはありがたいですし、商品化にもつなげられたらと思います」と話しています。

Voice

試飲会参加者の感想

  • 『光HIKARI』と『華HANA』で味わいが違って楽しめました。日本酒を割る楽しみ方も初めて知り、勉強になりました。若い方が頑張ってくださることで日本酒文化の活性化につながることを期待しています(女性)
  • お酒は好きですが、日本酒を飲むことはありませんでした。でもこれは飲みやすく、特にカクテルにすると美味しいので、また飲みたいと思いました。私と同じ学生の皆さんが、このように良い活動をされていることにも感銘を受けました(女性・学生)
  • 純米吟醸と大吟醸ではっきりとした違いがあって、作り手の考えが分かりやすいと感じました。日本酒カクテルを通して、カクテルを飲み慣れている若い方にも日本酒の良さを知ってもらえるといいなと思います。メンバーの学生さんには、この活動をきっかけに、これからも身近な人に酒づくりの文化を伝え続けてもらいたいなと思います(男性)

05

プロジェクトで学び、経験したことが
自分のキャリアにもつながっていく

プロジェクトの今後について、呉 准教授は「私自身も考えを少し進化させたいと思います。具体的には農家さんとの関わりを緊密にしたいですし、試飲会で要望の多かった「光HIKARI」と「華HANA」の商品化に向けても、アクションを起こすことができればと考えています」と展望を述べました。酒類を販売することには資格取得のハードルもありますが、木村社長から「販売すれば、このお酒が広く飲まれますよね。会社としてできることもあると思いますので、一緒に方法を考えたいと思います」と前向きな発言がありました。

4年生のメンバーは、卒業するとプロジェクトから離れることになりますが、次の代に託すことになるこのプロジェクトに、今は大きなやりがいを感じています。「日本酒はそのまま飲むものだと思っていましたが、カクテルにすることで、これまでとは違う魅力を発見できました。新しい飲み方を提案できるのもこのプロジェクトの楽しいところですし、試飲会でお客様が喜んでくださっている姿を見ると、また頑張ろうと思えます(S.K.さん)」。「イベントを企画して告知ポスターを作ったり、ボトルのラベルのイメージを考えたりと、日本酒そのものに直接関わること以外にも学びが多く、一つひとつの経験が自分のキャリアにつながっていると感じられることが、とても楽しいです。(N.S.さん)」。

2026年度、本学の共学化にともない、新しく男子学生もプロジェクトメンバーとして加入しました。海外出身の学生からの問い合わせもあり、このプロジェクトもさらに広がりを見せることが期待されています。

N.S. さん

キャリア形成学部
キャリア形成学科 4年生

日本文化に関心があり、着付けサークルと写真部にも所属。課外活動を通してさまざまな学科の学生と関わりができるのが楽しいと感じている。お酒は強くないが、休みの前日にお菓子と日本酒を合わせて楽しむのが好き。酒蔵めぐりもするようになった。

S.K. さん

看護福祉リハビリテーション学部
看護学科 4年生

日本酒に興味があって本プロジェクトに参加。成人になった今は日本酒が大好きで、もっと多くの若い人に日本酒を楽しんでほしいと考えている。うさぎが大好きで、野生のうさぎとふれあえる広島県の「うさぎ島(大久野島)」も訪れている。卒業後は看護師として京都市内の総合病院に勤務予定。

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