コレステロール値低下、ガン予防に役立つと注目

まだまだ解明されていない部分も

豆は、人の健康寿命を伸ばす方向に役立つ食品だと思います。日本では古くから、豆腐、しょう油、みそなど、大豆の加工品を食べてきました。ですから、豆の研究も大豆を対象にしたものが中心に行われてきました。その中で、大豆には、身体の調子を整える作用のある物質が多くあることが分かっています。たとえば「大豆イソフラボン」という名前を聞いたことがあるでしょう。大豆に含まれるこの物質は、摂取することによって女性ホルモンと似た働きをすることから、乳がんや前立腺がんの予防に役立つと注目されています。脂質に含まれる「大豆レシチン」は、細胞膜を作るのに欠かせない物質で、不足は血管にコレステロールが沈着する原因にもなります。「大豆サポニン」は、細胞の酸化のスピードを緩ませる抗酸化作用が大きい物質で、うまく応用すれば人の老化を遅らせたり、免疫力が向上するのではないかと言われています。これらの成分を含んだものは、サプリメントなどとして商品化されています。

大豆には「植物ステロール」も多く含まれています。これは植物の細胞膜構成成分で、動物性のコレステロールと違い、ほとんど体内に吸収されません。しかも、コレステロールと一緒に摂ると、コレステロールの吸収が抑えられるという効果があります。その特性を生かして、植物ステロールを配合したマヨネーズが商品化されています。

大豆のたんぱく質そのものにも、血中のコレステロール値を下げたり、肥満を防止する効果があることがデータ上で明らかになっています。しかし、そのメカニズムの詳細はよく分かっていません。これだけ多くの研究がされてきても、大豆のたんぱく質について100パーセント解明しているとは言えません。何パーセント解明できているかも分からない状態です。大豆には未知の可能性が秘められているのです。

インゲン豆の、糖の吸収を抑える働きを研究

血圧の低下やリラックス効果にも期待

豆の中でも、私が主に研究しているのはインゲン豆です。研究するようになったきっかけをお話ししましょう。デンプンを分解する消化酵素の一つにα-アミラーゼがあります。私たちが食べたデンプンは、α-アミラーゼの働きでブドウ糖に変わり、活動のエネルギーとして消費されます。ところが活動量が少ないと、ブドウ糖が余ってしまいます。余ったブドウ糖はどうなるかというと、脂肪として蓄積され、肥満につながってしまうのです。そこでインゲン豆が出てきます。インゲン豆には、デンプンをブドウ糖に変えるα-アミラーゼの働きを阻害する物質(α-アミラーゼインヒビター)が含まれているということが分かっています。このことを文献で知った私は、その物質を利用して、人が食べたデンプンをブドウ糖に変える働きを抑え、肥満の予防や糖尿病の改善に役立てられないだろうかと考えたのです。

そこで、インゲン豆の一つ、虎豆に含まれるα-アミラーゼインヒビターの抽出方法や、どのような性質があるのか、調理するとどうなるのかなどについて詳細に調べました。その結果、熱を加えると作用が低減されることが分かりました。調理して食べるよりも、成分だけを抽出して薬のように使う方が良いということです。

研究の成果は論文や学会発表で全て公開しました。商品化は難しいのではと考えていたのですが、白インゲン豆のα-アミラーゼインヒビターは「糖の吸収を抑える」ことをうたう機能性表示食品で、すでに利用されているようです。

インゲン豆には、なぜか多くの種類があります。虎豆、花豆、大福豆、うずら豆…北海道のある地域だけで栽培されるインゲン豆もあり、種皮の色も白や赤などさまざまです。不思議ですね。豆は、こんなに小さくて、世界中で食べられているものなのに、まだまだ解明されていない部分が多いのが研究対象として魅力的だと感じています。豆のたんぱく質が胃や小腸で分解されてできるアミノ酸やペプチドの働きについても、研究が進んでいるところです。血圧を下げる、リラックスさせるなど、さまざまな働きがあるのではないかと期待されています。

究め人のサイドストーリー

食品工場の見学に行くのが好きです。食品が作られる過程を見るのも楽しいですが、そこにしかない限定メニューを食べるのも楽しみなんです。先日は浜松まで行き「うなぎパイ」の工場を見学。「うなぎパイ」がトッピングされたパフェも食べました。京都や大阪の工場には学生を連れていくこともよくあります。食に関してはフットワークが軽いですね。厚揚げが好きなので、美味しい厚揚げがあると聞けば、遠方までわざわざ食べに行ったりしています。今のお気に入りは大学のすぐ近くある「久在屋」、先日食べた福井の「谷口屋」。タイプが違いますが、どちらも美味しいです。

管理栄養士の活躍の場は広がっている

栄養や味覚を科学的にとらえる実験も

「食品学」の授業を担当しています。それぞれの食品にはどのような性質の成分がどれだけ入っているのか、どのような調理をすれば食べられるのかを学ぶ科目です。

実験もあります。食品のたんぱく質の量を測る実験では、たんぱく質に含まれる窒素を定量することによってたんぱく質量を計算します。日本食品成分表の数値を出す時にも用いられている方法です。たんぱく質をアミノ酸、さらに元素にまで分解するためには、食品を硫酸下で約3日間も熱し続けなければなりません。私たちが食べた食品中のたんぱく質が、消化酵素の働きによってわずか数時間でアミノ酸になるのはすごいことだということもよく分かります。味覚成分に関する実験もあり、食品中の砂糖の量を調べたり、お茶の渋みの原因であるカテキンの量を調べたりしています。食品の成分が持つさまざまな機能を科学的にとらえることの面白さを知ってほしいと考えています。

今、管理栄養士の活躍の場はさまざまな分野に広がっています。学生には、資格を目指すだけではなく、資格をどのような仕事や働き方につなげていくかを考えながら学んでほしいと思います。病院、特別養護老人ホーム、保育園などはもちろん、食品メーカーでの商品開発や、スーパーに総菜を卸す会社でメニュー開発に携わる管理栄養士もいます。宅配弁当の会社の中には専属の管理栄養士が顧客の栄養相談を受けているところもあります。幅広い視野をもって関連する授業をとったり、課外活動をするのも良いでしょう。

管理栄養士にはコミュニケーション能力は不可欠です。それを理解してか、健康栄養学科にはクラブ活動やボランティア活動に積極的に取り組む学生が多いですよ。2020年度からは「Koka Healthyプロジェクト」もスタートします。企業や地域社会と連携し、もっと幅広いアプローチで健康について考える実践型プロジェクトです。学生のチームで計画、実施、成果の評価を行う中で、授業だけでは得られない力を身につけてほしいと考えています。

私は、今年度から研究担当の副学長として、来年度から始まる基幹研究「健康創造キャンパス」の実現に関わっています。京都光華女子大学のキャンパスを健康情報発信の拠点にする構想です。たとえばキャンパス内に地域の認知症の方やご家族の集う場をつくり、看護・栄養に関する講座や運動指導を行うのも良いのではないでしょうか。今後の進展にご期待ください。

高校生へのメッセージ

よく学び、よく遊べ

オンとオフの切り替えができることこそが大人の矜持です。管理栄養士の勉強は大変ですが、同じ目標に向けて仲間とともに学ぶ大学での4年間で、それを少しでも身につけてほしいと思います。「よく学び、よく遊べ」という言葉を贈りたいですね。

吉川 秀樹 副学長・教授

健康科学部 健康栄養学科 管理栄養士専攻

1984年、京都府立大学大学院農学研究科終了。博士(農学)。2003年より京都光華女子大学で教育と研究に携わる。専門分野は食品中の機能性成分。

この分野が学べる学部・学科

健康科学部 健康栄養学科 管理栄養士専攻

給食施設や病院での臨地実習により、確かな知識と実践的な技術を身につけます。食と栄養の専門職として社会で活躍できるよう、国家試験合格を目指します。

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